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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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     Gothic



    (1986)イギリス
    出演…ガブリエル・バーン、ジュリアン・サンズ、
         ナターシャ・リチャードソン、ティモシー・
         スポール、ミリアム・シル
    監督…ケン・ラッセル
    ★★☆


〔ストーリー〕
 1816年6月のスイス。レマン湖のほとりの別荘、〈ディオダディの館〉 に滞在するバイロン卿を訪ねた、詩人のシェリー、彼の愛人のメアリ、メアリの従妹で当時バイロン卿と親密な仲にあったクレア。バイロン卿の主治医ポリドリ博士も交えて、5人は怪奇小説を読みあげるゲームに夢中になり、ついには自分たちで 「幽霊を創造しよう」 といいだす。ホラー史に燦然と輝く二大スーパーモンスター、「吸血鬼」 と 「フランケンシュタイン」 が生みだされた歴史的な夜、ほんとうは彼らになにが起こったのか…?



 “一度見たら忘れられないポスター”というと、わたしは必ずこの作品を思い浮かべてしまいます。ケン・ラッセルの「ゴシック」です。


 スイス人画家ヨハン・ハインリヒ・ヒュースリーの代表作、『夢魔』 を忠実に再現したと思われるこのポスター、レンタル店でもホラーに分類されていることが多いので、おそらくほとんどの人がB級な作品と勘違いしているのでは?
  じつは、歴史的にもとっても貴重な夜を、ラッセルらしい悪魔的な、かぎりなく背徳的でうつくしい映像で描いた正統派ゴーストストーリーなのです。

 ホラー界の三大モンスターというと、ヴァンパイアフランケンシュタイン、そしてですよね! この作品は、そのうちのふたつがおなじ夜に触発されて生みだされたという、まぎれもない事実を交えながら、そこにもしかしたら、「人知を超えた外的な力」 が働いたのかもしれない…? という、作家たちの複雑な内面に迫った意欲作品でもあります。

 6月のレマン湖というと、霧がたちこめていて、どこかこの世のものならぬ雰囲気があるようなんです。そこに当時スキャンダルまみれでオカルト趣味のあったバイロン卿が、友人たちを招いてパーティーをひらこうとします。セレブ、パーティー、なにやら退廃的ですよね~ そして、不穏な予感!!

 若き詩人のシェリーを演じるのは、ジュリアン・サンズ。そしてシェリーの愛人で、やはり若くて才能のあるメアリを演じるのは、なんとおなじくラッセルの傑作 「The Devils」「肉体の悪魔」1971)で怪演を見せた、バネッサ・レッドグローブの実の娘のナターシャ・リチャードソン。
 「フランケンシュタイン」 誕生の秘話にはいろいろな逸話がありますが、メアリは女だてらに博識の持主です。父親はアナーキズムの先駆者と呼ばれるウィリアム・ゴドウィン、知識人らと親交も深く、やがてシェリーと知りあうようになります。(…当時シェリーには妻がいたのですが、彼女はのちに入水自殺をしてしまいます。それが “メアリの罪” となって、その後さまざまな 「死のイメージ」 が彼女につきまとうようになるのです)。

 ブラム・ストーカーの 『吸血鬼ドラキュラ』、メアリ・シェリーの 『フランケンシュタイン』。(…前者はもちろんバイロン卿・その他の作家たちの 「吸血鬼小説」 を元に書かれたもの、後者は 「SFの祖」 と呼ばれるようになります)、どちらも20世紀のホラーの方向性を決めたといっても過言ではない、二大傑作が世に生みだされるきっかけとなった夜に、ほんとうはなにが起こったのか?
 (…また一説には、このときバイロン卿がポリドリ博士の短編 『早すぎた埋葬』 をパクったために、ふたりの仲はこじれてしまったという話です)。

 楽器を奏でるオートマタ(自動人形)やホルマリン浸けのグロテスクな標本、人体解剖模型など、映画マニアには垂涎のキッチェな小道具が盛りだくさん! 鮮やかな光景とゴシックさに目移りしてしまいます。さて、彼らの狂気と官能の夜がいきつくさきにはなにが…??









 ボートを楽しむ3人。
 今夜、悪夢が待ちうけて
 いようとは…?






 当時悪い噂が絶えなかった、
 ゴスっ子ド変態のバイロン卿
 (ガブリエル・バーン)。










 ゴシック建築に甲冑は
 欠かせないですよね!








 左から、クレア(ミリアム・
 シル)、シェリー(ジュリアン・
 サンズ)、メアリ(ナターシャ・
 リチャードソン)。




こちらが、ヨハン・ハインリヒ・ヒュースリー作の『夢魔』(1781)
ポスターのナターシャは人形のようにうつくしいですね~







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風邪はだいじょうぶですか?
これにホラーを期待して見た私がいけなかったんですね~(^_^;)高尚過ぎて(?)、正直面白くはありませんでした。でもあの何かが起こりそうな不穏なカンジはちょっと怖かった。
きっとななみさんみたいに多方面にわたって基礎知識があってこそ楽しめる映画なんじゃないかと。初めて見るなら、このレビュー読んでから見た方が面白くなるんじゃないかと思います。

ユキまま 2008/11/17(Mon)10:43:21 編集
うちにはまだ蚊がいますよ
>ユキままさん
ユキままさんもこのジャケに騙されちゃったクチなんですね~。じつはわたしも、手にとってみるまではラッセル作品だとは気づかず、何年も素通りしていました(笑)。
たしかに、即物的なホラーを期待すると、「アレッ?」となる内容ですね。わたしも正直、わかりやすいホラーのほうが大好きなんですけど、たまにはこんなのもいいかな~なんて思いまして…
それから、おかげさまですっかり回復いたしました。やさしいお心遣い、どうもありがとうございます♪
ななみ 2008/11/17(Mon)23:42:30 編集
ラッセル
ケン・ラッセルは本作や『肉体の悪魔』『白蛇伝説』『サロメ』など残虐な映画がいくつかありますね。
私もラッセルの文芸的なところが合わないなと思ったことがあります。ラッセルの中では『アルタード・ステーツ』がダントツで好きですね。
クロケット 2008/11/21(Fri)01:37:44 編集
ラッセル
>クロケットさん
わたしも「アルタード・ステーツ」がダントツで好きです! あの作品、おもしろいですよね。
ラッセルは文芸的すぎて、これはいいもんなんだから、いいもんなんだから…!と、無理して観ることがあります(笑)。でも、ほとんど理解できていないかもしれません…
ななみ 2008/11/22(Sat)18:06:34 編集
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 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

〈好きかも♪〉
 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
 かます、説明書、道案内、カマドウマ、狭いところ、壁がすんごい目の前とか、渋滞、数字の暗記、人ごみを横切る、魚の三枚おろし…
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