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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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  『エイミー』



原題 『Amy Girl』
(1989)
バリ・ウッド:著
倉本護:訳
扶桑社文庫


〔ストーリー〕
 酒乱で暴力的な父マイクルから逃れて、母エヴィと暮らしていた美少女エイミー。ある日、エイヴォン化粧品の販売員が家にやってきたことから、悲観的になっていた母は希望を見いだすようになる。エイミーは母の変化を喜び、幸せになれると思った矢先…その晩、マイクルがやってきて、母を殴りはじめた!!とっさに母はエイミーをクローゼットのなかに隠し、外側から鍵をかける。つぎの瞬間、正気を失ったマイクルの一殴が母の顔を陥没させた…!!


 たまには女流作家の傑作を。
お気に入りの作家のひとりです。デビューした年がキングとおなじなんですよねー。作風も似ているかといえば、似ていますかも。ウッドはESP能力をもつヒロイン・ホラーを書きつづけている、心理描写の長けたホラー作家です。

 この作家も、じつはお医者さん。お医者さんが書いた医療ホラーっていうと、F・ポールウィルソンの『タッチ(触手)』がまず有名でしょうか。ホラー以外はよくわからないのですが、ウッドも医療に関する小説を多く書いている様子です。で、デビュー作となった『殺したくないのに』は、純粋なホラーなのですが、医学的見地から超能力が発生する点で、注目すべきところ。このデビューをきっかけに、リリカルなヒロインホラー・シリーズが誕生するのです。

 エイミーは8歳の女の子。父も母も美形同士、当然エイミーも美人ちゃんに生まれるわけですが、世のなかそんなに甘くない。父のマイクルは酒乱で暴力的、いつも母エヴィを殴っていました。そんな父から逃げだして、母とふたりで暮らしはじめるエイミーですが… 歯を叩き折られて入れ歯になってしまったエヴィは、ぬけがらも同然、なにもやる気になれない。エイミーも落ちこんじゃう。

 そんなある日、エイヴォン化粧品のきれいなお姉さんがやってきます。お姉さんはエヴィを見て、「あなたはもっときれいになれるはず」 と、励まします。「わたしといっしょに働いてみない?」 おなじ女性として、エイミー母子に同情しちゃったのですね。これが、エヴィの心を動かすことになります。

 すっかり前むきになったエヴィ、エイミーの生活にも希望の光がさすかと見えて… その晩、酔ったマイクルが家に押しかけてきます。危険を察したエヴィは、エイミーをクローゼットのなかに入れて鍵をかけてしまいます。「ここに隠れてなさい!」 そして、クローゼットの鍵穴からのぞくエイミーの目の前に、おそろしい光景が。マイクルがエヴィを殴り殺してしまうのです!!

 この瞬間、奇妙なできごとが起こります。顔を陥没させたエヴィが、よろよろとエイミーにむかって歩いてこようとするではありませんか… が、エヴィはすでに死んでます。エヴィを動かしたのは、じつはエイミーの潜在能力で、彼女には他人を思いどおりに動かすことのできる超能力があったのです~、という、ショッキングな導入部です。

 デビュー作『殺したくないのに』 も、これとおなじ能力をもつ30代の女性が主人公。本作が10代の少女。つづく『人形の目』では20代(こちらはサイコメトリック能力ですが)、あと、『地下室の亡霊』では40代と、さまざまな年代のESP能力をもつヒロイン・ホラーがあります。

 他人を思いのままに動かすことができる能力 = つまり、ある種の吸血鬼なんですが、この能力をもつそれぞれのヒロイン像がじつに魅力的で、悪魔的。もとい吸血鬼なんだから、(比喩的な意味でね)、きれいであたりまえなんですけどね。
『殺したくない~』 のヒロインが、胎内にいたときのレントゲンによる放射線の影響だったのにくらべて、こちらは遺伝。なので、頭がおかしい(と周囲から認定されている)叔父さんも、じつは能力者。ほかにも、おなじ能力をもつ少年の末路とか、超能力者の悲劇が描かれています。

 すぐれている点は、やはり心理描写。キング好きな人には、まずハズレなしだと思います。『殺したくない~』を押す人のほうが多いですけど、リリカルな少女ホラーとして、わたしはこちらを押したい。あと、以前レビューを書いたマーティン・シェンクの『小さな暗い場所』とも雰囲気が似ていますね。

 みなし子となってしまったエイミー、第一発見者のひとり、殺人課の刑事にひきとられることになります。これはもちろん、エイミーが美少女だったうえ、なにかとくべつな魅力(能力)があったからなのですが… 刑事一家は妻も、おない歳の娘もあたたかく迎えてくれました。ただひとり、ティーンエイジャーの長男パウィーをのぞいては。

 この後、屈折した少年パウィーの、エイミーにたいする壮絶な嫌がらせといじめが見もの。とくに、エイミーが「今度は(またひどいことしたら)…今度は…」と、ベッドでひとり身体を揺するシーンには、鳥肌モノ。物語は、エイミーがパウィーの度重なるいじめに耐えかね、徐々にバランスを失って緊張をはらんだ結末へむかうことになります。

 濃密な心理描写はキングにしか書けないのかと思ってたら、そんなことありませんでした、ちゃんとほかにも書ける人がいます! コネティカットの田舎の描写が涙が出ちゃうくらいきれいで、その後の悪夢のような展開の対比がまたすごい。残酷。バリ・ウッド、いい作家さんなのにな~、ホラーファン以外にはあまり知られていないというのが、とても残念です。とくにこの作品は、いっき読みに最適ですのに。

 あと、ジャック・ギースランドと共著の『双生児』なんてのもあります。こちらは、バーグ先生の「Dead Ringers」「戦慄の絆」1988)の原作といったらわかりやすいでしょうか。どれも古本屋で探してみる価値ありなのです!






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  『悪を呼ぶ少年』



原題『The Other』
(1972)
トマス・トライオン:著
深町眞理子:訳
角川文庫


〔ストーリー〕
 ニューイングランドの田舎町で、リンゴ農園を営むペリー家の主人が事故死する。以来、妻は心をとざしてしまい、双子の兄弟ホランドとナイルズの面倒を見るのは、祖母のアイダだった。弟のナイルズは無邪気で明るく、周囲をなごませていて、兄のホランドは謎めいて、どこか冷酷… そして、この双子のいくところには必ず、不幸な事故や事件が起きるようになるのだが…??


 あまりに傑作すぎて、ほとんどの方は読んでらっしゃると思います。
でも、トライオンときたら、これはどうしてもはずせなかったんです~~

 さて、日本でもたいへん評価の高いトライオンのデビュー作。
彼はもともと役者さんでして、(ケッチャムとおなじだ!)、本を書かせてみたら、こっちのほうがすんごかったという例の方。すごいですよねー、デビュー作でこのレベルっ!! でも、海外だと、これくらいの才能の人はけっこうゴロゴロいるんですよー、そのへんの詳細は、また今度…

 本作は映画化もされまして、〇〇モノの元祖として、本国でもすこぶる高評価でした。それに気をよくしたトライオン、2作目には『悪魔の収穫祭』という、これまた有名すぎるホラー傑作を生みだすのですが… 残念なことに、ホラーはこの2本のみ。あとはふつうの小説を書いて、(一応、ダークファンタジーものの『The Night of the Moonbowもありますが)、急逝されてしまいます。それだけに、この2作はとても人気が高いのです。

 物語の説明をしますと…
ニューイングランドの田舎町、リンゴ農園を営むペリー家。この一家はちょっとした不幸と崩壊に危機に見舞われていて、父が地下室の階段で事故死、母が精神を病むという深刻なことになっていました。農園はどうするのか? これまでどおりの生活をつづけられるのか?

 しかし、子供たちにはなんの罪もありません。

 双子の兄弟、ホランドとナイルズは、大人たちのむずかしい事情にはわれ関せず、天真爛漫に振る舞っています。この兄弟、見た目はそっくりでも性格は正反対。
弟のナイルズはやさしく、協調性のある明るい子供。たいする兄のホランドは冷酷で、どこか謎めいていて、問題行動ばかり起こしていました。

 ある日、従兄弟の飼っている猫を気に入らないといって、井戸で絞め殺してしまうホランド。
この事件をきっかけに、悪夢のようなできごとがペリー家の周囲で… というより、双子たちのまわりで起こるようになってしまうのです… その真相とは…???

 じーつーはー、
原題でほぼネタバレしているのですがね!!

 本作と『悪魔の収穫祭』とで、どちらが好きかで意見がわかれることが多いです。おもに、邦人作家の方なんかは、『悪魔~』のほうが好きだとおっしゃる方が多い。

 でも、わたしはだんぜん、こっちのほうが好き!
かなり暗い、残酷な内容なわりには、少年時代のキラキラした躍動感、情緒あふれる文章で、ニューイングランドの風景描写もすばらしい。ノスタルジックな雰囲気は、ブラッドベリが〇〇を書いたようだ!! と、話題になりました。子供たちがあっちこっちに駆けまわるシーンとか、映画を観てるよりも目に見えてきちゃう感じなんです。いいですよねー、少年ホラーは、やっぱり傑作が多いです!!

 なお、本作に激しく共感した綾辻行人氏は、これをベースに『黄昏の囁き』というミステリを書くのです… (新本格好きにはオススメ!)






   『湖底の家』




原題『Under The Lake』
(1987)
スチュアート・ウッズ:著
矢野浩三郎:訳
文春文庫


〔ストーリー〕
 かつてピューリッツァ賞を受賞した敏腕記者・ハウエルは、いまでは新聞社を辞めて作家修業の身。しかし、私生活はうまくいかず、腰痛に悩まされ、義兄から有名人のゴーストライターの仕事をわけてもらう始末。すっかり落ちこみ、自暴自棄になりながらも、仕事をするために湖畔の町にやってくると…
 そこで不可解な現象を目撃し、かつてダム建設に反対していた、アイリッシュ家族の行方不明事件を知るのであった…


 警察小説といえば、ウッズ!! ウッズといえば、警察小説~!!

 そーなんですよー、あの大傑作、『警察署長』 のスチュアート・ウッズが、なんとゴシック・ホラーも書いていたのです!! ホラーなんですけど、ここはウッズ、かなり構成の巧みなゴースト・ストーリーとなっています。この方の硬派な文章、とても好きなんです。

 余談ですが、本作の主人公ハウエルは、『警察署長』 にも登場しています。そのころのハウエル、若くて恰好よかったんですけどねー。
この作品では、すっかり疲れきった中年のおっちゃんとなっちゃってます~
そこがまた、ときの流れを感じさせて哀愁たっぷりなんですけどね。

 えーと、物語は、落ちぶれちゃったかつての敏腕記者・ハウエルの出直し計画からはじまります。ハウエルはたいして好きでもない義兄から、頭をさげて仕事をもらうのですが… その仕事もまた、チキンの王者が政界に乗りだすための自伝を書いてほしいという、非常にアホらしいもの。

 ハウエル、ほんとはこんな仕事はしたくないのです!! が、すべては金のため!!
プライドを犠牲にしてでも、どうにかしてこの仕事をものにするのでーす!!!

 静かな場所で仕事をするためにと、湖畔の別荘まで用意してもらうハウエル。ああ、なにもかも面倒見てもらっちゃって、ほんと面目ないです。オープニングから、この悲壮感がいい味出してるんですよねー。別荘についた瞬間、「ああ、もしかしてオレって、こっから一生帰れないんじゃないかなあ…」 という予感とか、この後の波乱の展開を想像させて、とにかくわくわく

 事実、とってもこわーいことが待っているのです!!

 ホラーなんですけど、人間ドラマとミステリ要素が強い内容です。この小説のこわさの根源は、幽霊そのものではなくて、ダム計画にからんだ、とあるアイリッシュ系一家の失踪事件にあります。

 数十年前、とある家族がダム建設に最後まで反対していた。そしてその一家、なんとダムの底に姿を消してしまう… それははたして、事故だったのか、それとも事件だったのか??
 うーん、謎めいていて、とっても不気味!!
町の住人にもたくさん秘密がありまして、ハウエルには非協力的。彼の疑念を呼んでしまいます。そしてこれがまた、二重にも、三重にも複雑に絡んできちゃうのです。

 ハウエルの前に何度もあらわれる、美少女の幽霊はいったい何者なのか?
 謎の言葉、「オコイニーン」の正体とは??
 アイリッシュ系一家はだれに殺されたのか??

 あんまりくわしくは書けないのですが、これをミステリ好きの方だけに読ませておくにはもったいないと思いまして(!!)、今回レビューしてみました。テイスト的には、エルロイを可能なかぎり品よくした感じ(笑)、っていったら、わかりやすいでしょうか。

 ウッズはとても優れた作品を書く小説家でして、最近の小説、『デッド・アイズ』『LAタイムズ』『囚人捜査官』なんかも無条件におもしろいのです。
 まだ一度も読んでいない方がいましたら、これを機会にぜひぜひ挑戦してみてください!!






   『サイコメトリック・
                  キラー』



原題『Thinning the Predators』
(1996)
ダイナ・グラシウナス/ジム・スターリン:著
小林理子:訳
ハヤカワ文庫NV


〔ストーリー〕
 FBI捜査官のレヴェットが追うのは、謎の連続殺人鬼、デイヴィット・ヴァンデマーク。彼は7年前に妻子を殺害され、その犯人を執念でつきとめて殺害した男。以来彼は、連続殺人鬼・凶悪犯のみをターゲットとする、シリアル・キラーになっていたのだ!! 彼には人知を超えた、得体の知れない能力があるのか? 復讐の天使になったつもりか? レヴェットがヴァンデマークを追うころ、おなじように彼の事件に注目する女性記者がいた。そして、アメリカの犯罪史上もっともおそろしい凶悪犯が誕生するときがくる…!!!


 ずーーっと小説レビューをサボってましたのです、すいません~
これからちょくちょく、気に入ったものを書いていこうかと思います。
コレはとくにお気に入りでして、三回くらいは読みなおしちゃったかもです。

 ストーリーを簡単に説明しますと、一介の捜査官レヴェット、彼が追うナゾの連続殺人犯デイヴィット・ヴァンデマークとの鬼ごっこ!(← でもこれ、前半のみ)

 ヴァンデマークは連続殺人犯を殺害する、連続殺人犯なのです。この設定、いままでありそうでなかったですよね。そういえばむかし、霊能者が霊能者に殺されて、霊能者で犯人をつきとめる!! という、霊能者だらけの『霊能者狩り』という作品がありました。こちらは、連続殺人鬼だらけのお話です。よって、快楽殺人や異常犯罪者の不気味さも味わえちゃうという、ひと粒で何度も気持ち悪いホラーであります。

 レヴェットはヴァンデマークの殺害法則を見つけ、まだ検挙されていない(発覚していない)連続殺人鬼が潜んでいそうな場所に網をはります。たとえば、国境近くで若者が行方不明になっているとか、地方で女性ばかりが行方不明になっている、子供が消息を絶っている… けれど、まだ一連の事件として認知されていないから、騒がれていない。そんなデータ、とにかくデータを集めて、これだ!と、思って乗りこんでみると… あーららー、ひと足お先にやられちゃってました。

 それに、ヴァンデマークはやたら紳士的でして、元弁護士さんだし、頭いいし、わざわざ急所をはずしてレヴェットを撃ったり、「もう追ってきちゃだめだよ!」 なんて、かわいらしい警告を発したり。なので、レヴェットは余計むきになってヴァンデマークを追ってしまうのですね。もうこれ、完全に恋愛感情ですよね。

 この一連の不可解な殺人事件に目をつけたのが、美人ジャーナリストのヴィーダ。彼女はレヴェットとコンタクトをはかり、ヴィーダまでしだいにヴァンデマークの虜になっていきます。ヴァンデマークは自分が正しいことをしていると思っているのでしょうか? なぜ、連続殺人犯の居場所がわかるのでしょうか? そして、7年前にヴァンデマークの身に起きた、悲しい事件を知ることになるのです…

 この作品を読んで思ったことは、これぞ映画世代にふさわしい作品ということ。映画が進化することによって、小説だって新しい手法を模索しなくちゃいけない。スピード感、多角性、ヴィジュアル、フラッシュバックやフラッシュフォワード、カットイン、フェイドアウト、スローモーション、クローズアップといった、あらゆる映画の手法を使用しなくちゃいけない。それで、これはまさしく風間賢二さんも書いてらっしゃるとおりに、アメリカ的な、もっといっちゃうと、ハリウッド的な作品なのです。

 よくキングが、『キャリー』はページからがしたたってる小説だ、なんていってましたけど、こちらもがぽたぽた垂れてきそうなお話。冒頭、ひとり歩きの若者ばかり狙うカニバリズムは、ほんとうに気持ち悪いし、じっさいにその匂いまで嗅げちゃいそうなほど。

 ヴァンデマークが敵なしなのは、タイトルでもネタばれしちゃってますが、サイコメトラー(物に触れたり、人物と接触したりしてさまざまな情報を得る能力者)なのですね。
 彼は7年前にエレベーター事故に遭い、昏睡状態に陥っているころに妻子を殺害されてしまいます。半死の目に遭って、ようやく意識が回復したときには悲惨な現実を知り…

 そして、これぞハリウッド的なのは、手法のみならず、ジャンル・ミックスとして確実に売れる内容だということ! これはエンターテイメントの鉄則です。よって、展開はスピーディーで派手、ハイテンション、ロマンスや友情まで出てきちゃうといった、かなり、ある意味お気楽(!!)な作品。

 でも、すごく楽しいですよね。内容がギッシリ詰まった作品だと思います。

 ヴァンデマーク、レヴェット、ヴィーダの3人はやがて、運命に導かれるように、ひとつの場所に集結していき… そして、最後の最後に、とおんでもない殺人鬼が登場します。こ、これはかなり手強いし、異常すぎる!! ヴァンデマーク、危うし!! この史上最悪な異常者をやっつけることができるのか??

 ね、読んでるだけでも、そうとうおもしろそうでしょ
映画化したら、ぜったいヒットすると思うのに~。未読の方は、ぜひともご覧になってみてください!!









     『廃墟ホテル』



    原題 『Creepers』
    (2005)
    デヴィット・マレル:著
    山本光伸:訳
    ランダムハウス講談社文庫


〔ストーリー〕
 地方都市アズベリーパークのかつての栄華の名残となった、〈パラゴン・ホテル〉。それはピラミッドのような建物で、ホテル・オーナーの大富豪カーライルには数々の謎があった。地方探検者を自認する 「クリーパー」 と呼ばれる違法侵入者たち… 大学教授のコンクリン、元教え子のビニー、リック、コーラたちに取材するために、取り壊し寸前の 〈パラゴン・ホテル〉 に同行することになった記者のバレンジャー。だが、そこには、忌まわしい過去と現在が秘められていた…!!


 あまりのおもしろさに、徹夜本になること必至!!
 マレルの最新ホラーでーす。

 デヴィット・マレルというと、そうでーす、〈ランボー〉シリーズの原作者さんなんです。シリーズ1作目の 『一人だけの軍隊』 なんか、キングがベタ褒めして、自らの創作教室のテキストにも使っていましたね。そのほかにもミステリー、まあ、どちらかというと、冒険小説のイメージが強いかと思いますが…

 ですが、わりとホラーも書いてるんです。世界幻想小説賞を受賞した 『オレンジは苦悩、ブルーは狂気』『ナイトフライヤー』 所蔵)は、必々読のノヴェラです。たぶん、ホラーとしては5本の指に入っちゃうノヴェラなんじゃ…? まだ読んだことがないという方は、探してでも読んでください。
 あと、『トーテム』 なんて、変わり種の人狼ものもありました。愛息のマシューを
たった15歳で病気で亡くしてしまった悲しい実話 『蛍』 は、文芸作品としても高い
評価をうけています。

 そんな大御所マレルが、地方探検者 「クリーパー」 …つまり、廃墟に違法に潜りこむ人たちのことなんですが、その人たちを題材にとった超おもしろいホラー・ミステリがこちら。じっさいに、クリーパーという人たちはたくさん存在していて、ウェブで検索すれば、彼らのHPを見ることができます。

 物語は、記者のバレンジャーが 「クリーパー」 と接触するところからはじまります。バレンジャーが取材することに成功したのは、変わり者教授のコンクリンをリーダーとする、元教え子でコンクリンを慕うビニー、リック、コーラの4人組のクリーパーたち。

 彼らが目指すさきは、大富豪カーライルが残した〈パラゴン・ホテル〉。このホテルが、外観がピラミッドのようにエキゾチックながら、内装はすべて20世紀初頭に限定していたという、時間にとり残されたような不思議な空間です。なにより、カーライル自身が奇妙な経歴の持主でした。血友病のため、外出することがままならず、おまけに広場恐怖症で独身だったというカーライル。彼はホテルを閉鎖するまで最上階のペントハウスに暮らし、閉鎖してからもずっとそこに住んでいました… そして、ホテルを守るという偏執にとりつかれて、固い鎧戸をとざしたまま。

 う~ん、地方探検、巨大な廃墟、謎の大富豪のオーナー、鎧戸… と、ホラー要素なロマンが詰まりまくっています! これだけでもう、ウッキウキしてしまいますよね

 構成は、各章ごとに1時間ずつ経過していくんですが… 警察に通報されたり、だれかに目撃されたりしないようにと、コンクリン教授は午後10時から探検をはじめます。まあー、ただでさえ不気味な場所を訪問するのに、夜にスタートですよ。余計おもしろい… じゃなかった、こわいじゃないですか!

 不気味な廃墟ホテルに忍びこんだクリーパーたちと、バレンジャー。そんな彼らに、思いもしない恐怖が襲いかかってきます。そして、ホテルに秘められた過去が徐々にあきらかになるにつれて…!!

 あんまりおもしろい本なので、この “恐怖” なんですが、どういう種類のものかはいっさい書きません。みなさんもバレンジャーになったつもりで、クリーパーたちに同行しながら、廃墟ホテルの中を探検し、この恐怖が忍びよってくるのをゾクゾクしながら楽しんでください。やはり大御所、ストーリーテラーの水準が異常に高いです。そして、まさしく21世紀ホラーにふさわしい内容だと思います。

 ついでに、短編集 『真夜中に捨てられる靴』 もオススメです。この表題作は、『リオ・グランデ・ゴシック』 という別タイトルで、世紀末モンスター・アンソロジー 『999』 にも収録されています。あと、マレルの描く主人公(男性)は、わたしがいまさらいうまでもありませんが、かっこよすぎて魅力的すぎ。著者のスタンスと人柄が出ているんだと思います。



 



     『密閉病室』



    原題 『The Select』
    (1994)
    ポール・F・ウィルスン:著
    岩瀬孝雄:訳
    ハヤカワ文庫NV



〔ストーリー〕
 秀才女学生のクインは医者を目指しているが、家が貧しくて学費を払うことができない。唯一のチャンスは、超名門イングラム医大に合格すること。そこは製薬会社が設立した学校で、全米中から選抜された優秀な生徒だけが教育を許される場所、学費も無料という夢のような場所だった。おなじようにイングラムを目標にする幼馴染みのマット、大天才のティムという青年とクインは出会うのだが…


 ポール・ウィルスンも訳出されている作品がいっぱいありまして、どれをレビューしようか悩んだんですけど… うーん、そこは本命〈ナイトワールド・サイクル〉シリーズでしょ、という方もいれば、やっぱり 〈始末屋ジャック〉シリーズでしょ! という方もいると思います。もちろんわたしも、どちらも好きですよー

 この方も、バリ・ウッドとおなじくお医者さんなんですよね。それで、お医者さんが主人公の作品がいくつかありまして… 『触手(タッチ)』 もいいかなーと、思ったんですけど、こちらのほうが内容的にも新しかったので、今回ご紹介しますのは 『密閉病室』。(…余談ですが、『触手』 と似たような作品で、タイトルも似ているんですけど、エルモア・レナードが 『タッチ』 という作品を書いてます。これはジョニー・デップ主演で映画にもなっていますね

 ウィルスンは日本にも馴染み深い作家さんですが、いまいち位置づけがむずかしいといいますか、代表作を読んでみますと、うーん? 正直、ほかの大御所ホラー作家のような重厚さとか、リアリティとか、ありません… すいません、でも、たしかにそうなんです!
 かといって、けしてつまらなくはないです。〈始末屋ジャック〉シリーズなんか、もう、こってこてのB級懐かしホラーしてまして、わたしなんか新作が出るたびに夢中になって読んでしまいます。短編もなかなかのレベルのものが多いです。

 で、この作品、そんなウィルスンにしては、わりと、おおお! な、きっちり硬派な内容なんですよね。ミステリ好きにも訴えるストーリーかと思いますので、オススメしたいです。

 ヒロインは、超秀才でボーイッシュな魅力がかわいい女学生クイン。クインは、おなじく秀才の男友だちマットと一緒に、エリートだけが入学を許されるという、イングラム大学を目指しています。
 そこは全寮制、学費はタダという夢のような場所。そもそも、医療に役立つためにエリートを育てるわけですから、学費はいただきませんという低姿勢なんですが… うーむ、こっからかなりキナ臭いですよね。

 試験前にマットからティムという青年を紹介されて、このティムが、一度本を見ただけですべてを暗記してしまうという大天才(!)であることを知って、ショックを受けるクイン。こんな子がライバルじゃ、当然勝てるわけありませんもんね。

 彼女の予想通り、テストで聞いたこともない問題が出題されてしまいます。それは二択なのですが、彼女に答えは想像もつきません。うえーん、どうしよう…!!
 すると、彼女に好意を抱きはじめていたティムは、わざとペンを落とし、カンニングさせてしまうのですが…

 医学生が主役というと、映画でもドラマでも、必ずエリート思考の、それも鼻持ちならな~い嫌味キャラが登場するんですが、こちらの登場人物たちはごくふつうの秀才な若者たち。とくに、ティムが繊細な青年で、うっかり感情移入して読んでしまうと、後半にちょっとしたストレスを感じてしまうかも…?!

 タイトルからある程度想像ついてしまうんですが、けっこうこわいお話しなんですよ。これと非常によく似たストーリーで、「Anatomy」「アナトミー」2000)という映画があるんですが、わたしはてっきりこの原作から生まれたものと思ってたんですけど… ぜんっぜんちがいましたね!!
 いえ、むしろ、こっちの作品のほうが現実的で、非常にいや~なこわさがあります。結末の不気味さもよいです。もしかしたら、現実の世界のどこかにもありそうな内容だから、余計ぞわっとくるんでしょうか?






    
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(いちおう)プロフィールです
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ななみといいます
性別:
女性
自己紹介:

 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

〈好きかも♪〉
 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
 かます、説明書、道案内、カマドウマ、狭いところ、壁がすんごい目の前とか、渋滞、数字の暗記、人ごみを横切る、魚の三枚おろし…
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