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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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     『気象予報士』


    原題 『The Weather Man』
    (1995)
    スティーヴ・セイヤー:著
    浅羽莢子:訳
    角川文庫/上・下


〔ストーリー〕
 ミネアポリスに巨大な竜巻が突如発生。無防備な都市に甚大な被害をもたらした。しかし、国の気象庁しか出せない暴風雨警報を独断で放送した、ひとりの天才気象予報士・グレアムがいた… 異常気象が発生するたびに起こる、女性ばかりを狙った連続殺人事件。死刑制度反対だったミネソタ州は怒りに湧きあがる。そして、〈スカイ・ハイ・ニュース〉の報道部には、ふたりの気圧や湿度の変化に敏感な男がいた…


 この作品を書店で見かけたとき、タイトル、あらすじから想像して、ありがちなミステリなんじゃないかな? と思っていたのですが… えーと、一応ミステリに入る分類なんですけど、犯人探しが主体ではありません。説明するにも、ちょっとばかし複雑な内容です。ベトナム帰りのふたりの男の運命を描ききった、じつに密の濃~い、シリアスな人間ドラマといいましょうか… 本好きの方には、とにかくオススメの一作です。まだ未読という方は、とりあえず読んでみるべし!

 物語は、いきなりクライマックスともいうべき異常な緊張感からはじまります。ミネソタ州というと、天気に敏感にならざるえない、竜巻の多い州。とあるビルの屋上で、ひとりの女性が絞殺されるショッキングなシーンで幕開けです。犯人は覆面を被った男。女性の最期の抵抗が、この男を側壁に押しつけるのですが…

 おなじころ、〈スカイ・ハイ・ニュース〉の天気予報では、国の気象庁しか出せない暴風雨警報を独断で放送した気象予報士がいました。彼の名はグレアム・ベル。気圧の変化に異常に敏感で、鋭い勘を持つ、まさしく天才的な予報士です。
 そして、報道部にはリックという、ベトナム帰還兵の記者が。彼には顔がなく、そのためいつもマスクを被っていて、汗腺がないために気圧・湿度の変化に敏感という、またまた天気の変化に鋭い人間なのです。

 作者のスティーヴ・セイヤーは、この作品を書くためにテレビ局に3年間勤めたんだとか。そのため、実体験がもとになっているので非常にリアルな、華やかでありながら嫉妬が渦まくテレビ業界… といった、実情を知っている人ならではのドロドロな内面がよく描かれています。
 ストーリーは、天才なのだけれどモテないベル、やはりモンスターなのでモテない(と思っている)リック、知的美女のキャスター・アンドリアを中心に進みます。次々と起こる無差別殺人事件。トップニュースを掴もうと躍起になる報道部。はたして、真相は…??
 
 個々のキャラクター造形がすばらしく、魅力的なエピソードがふんだんにこらされています。なんといっても、結末まで持続する緊張感、スリルがすごいです。ここではあまり内容を書けないんですが、結末まぎわの迫力のある筆致(…といっても、文章自体は乾いて簡素なものなんですが…)には、思わずうなってしまいました。

 トマス・ハリスと比較されることが多かったそうなんですが、わたしはどちらかというと、キングっぽいという印象を持ちました。エピソードの積み重ねで奥ゆきのある世界を作りだしていく、というところなんか、たぶんお手本にしているんだと思います。余韻もかなり深く、あとあとまで引きずってしまいますね~… これは傑作!!





 



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紹介うまいですね
読みたくなってしまいました…見習いたいです。
気象予報士ってところが新鮮ですね。
犯人探しが主体じゃないとは…この二人の男性の魅力で読ませていくのですかね?
ユキまま URL 2008/12/17(Wed)22:37:18 編集
ありがとうございます~
>ユキままさん
適当に書いてるだけなんですー、ユキままさんのレビューもとてもおもしろいですよ!! 日本人作家も悪くないかなー、などと、思いはじめている今日このごろです。
わりと古い作品なので、ブクオフで簡単に手に入ると思います。上下200円でこれはお買い得!
内容は…? ネタばらしになりそうなので、やはり書けませんね~、個人的には横道のエピソードがよかったですね。
ななみ 2008/12/18(Thu)16:12:24 編集
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 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

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 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
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