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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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  『戦慄の
    シャドウファイア』


原題 『Shadowfires』
(1987)
ディーン・R・クーンツ:著
白石朗:訳
扶桑社文庫


〔ストーリー〕
 エリックは天才的な遺伝子工学者。その才能で莫大な富と名声を築いていたが、別居中の妻レイチェルとの離婚訴訟中に、車に撥ねられて死んでしまう。そして、彼の死体が市の死体公示所から消失した。不穏な気持ちを隠しきれないレイチェルと恋人のベンは、独自の調査を開始するが、ナゾの追っ手が彼らに迫っていた…!!


 今回は、クーンツの作品を紹介したいと思います。

 いまや大ベストセラー作家となったクーンツ、(現在はRを抜いて、ディーン・クーンツ表記になっています)、その地位を築くまでには、さまざまな名義であらゆるジャンルの小説を書いてきました。
この作品は、なかでもわりと評判のいい、リー・二コルズという女性名義で書かれたものです。二コルズ名義ではほかに、『邪教集団トワイライトの追撃』 (…すんごいタイトルです!)なんて佳作もあります。かくいうわたくしも、この作品でクーンツをはじめておもしろい! と、思ったものなんです。

 クーンツというと、いかにもベストセラー作家というポジションらしく、多才、量産、ゆえに薄っぺらい(ファンのみなさま、ごめんなさい~)という感想が多いのですが、事実、わたしもそう思っていました。これは映画 「Hideaway」「ハイダウェイ」1995)でも書いたことなんですが、登場人物がみんないい人すぎる、ハンサムすぎる、美人すぎる、善悪の区別がはっきりしすぎている… などなど、キングのような重量感のある小説を読み慣れている人にとっては、「リアリティがない!」 という厳しい意見も。

 …でもでも、この作品は、そんなクーンツでもよかったんだ、じゅうぶんおもしろいんだ!! と、納得させてくれた一作でもあります。クーンツのよさはまさに、そのストリーテラーにあったんですね~。 次から次へととんでもないアイデアで本を書きつづけるクーンツ、この作品も、そのとんでもアイデアがたくさん詰まっています。

 まず、オープニングが一風変わっています。
主要人物がいきなり死んじゃうし! エーッ、なにこれ?!  と、意表をつかれること必至のはじまりです。そしてそこから、ジェットコースター並みのとんでもストーリーがはじまっちゃうのです。

 未読の方の感動を阻害しないために、あまりくわしいことは書きませんが、この作品ではクーンツの苦手面・キャラ設定、リアリティなどが、ストーリーのおもしろさによってほとんど気になりません。ストーリーのおもしろさ! これ、いちばん大事なことなんですよね。どんなにうまく書けたって、リアリティがあったって、つまんなくちゃ意味がありませんもの。

 これとおなじように万人にもオススメできる作品として、さきにもあげました、“カルト宗教団体に狙われちゃう母子の恐怖の物語”、 『邪教集団トワイライトの追撃』 (だ~から、なんなのこのタイトルはっ!)、 “上昇志向の強い美人のオネエさんが狙われちゃうサイコ・ミステリ” の 『ウィスパーズ』、 “田舎町にすんごいモンスターが出てきちゃう”  『ファントム』 も、非常におもしろくて安定した小説の醍醐味があります。とくに、一見スタイリッシュなヒロイン・サスペンスに思える 『ウィスパーズ』 は、後半はまったくの予定調和なのですが、それを差し引いても、前半が複雑怪奇でおもしろすぎるっっ!! 一読の価値あり!






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   『テキサス・ナイト
     ランナーズ』


原題 『Texas Night Riders』
(1983)
ジョー・R・ランズデール:著
佐々田雅子:訳
文芸春秋文庫


〔ストーリー〕
 大学教授のモンゴメリーと高校教師のベッキーは、過去の傷を癒すために別荘にむかっていた。じつは、ベッキーは一年前に、教え子から暴行を受けていた。犯人は、罪の意識などまったく感じないクライドとブライアン、その仲間たち。だが、捕まったクライドは、拘置所の中で自殺を図ってしまう…


 今回は、ランズデールをご紹介します。
 
 ランズデールというと、ハップ&レナードもののでこぼこコンビが有名でしょうか… 
このシリーズで人気が爆発したんですけど、のちに、世紀末一大アンソロジー『999』 (1999)におさめられた短編、『狂犬の夏』 を長編に書きなおした 『ボトムズ』(2000)、こちらがまたまた大ヒット、純文学の域にまで達したともいわれて、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)の最優秀長編賞を受賞しています。

 南部出身の作家さんというと、ランズデールよりずっと苦労していない(笑)デビューの仕方をしたのが、ロバート・R・マキャモン。最近ようやく復活してくれましたね。でも、ちょっとまだおぼつかないですね。南部出身の作家さんの特色は、ずばり南部小説にあるわけなんですが、ランズデールの場合は、マキャモンなんかよりずっと口が悪いタイプです。お下品です。お下劣です!!

 …といっても、けして不真面目な人というわけではなく、この方はほんと~に、努力して作家になった方なんですよ。なんでも、「作家なんか食ってけるわけない!」なんていわれている中で、コツコツと作品を出版社に送りつづけて、その不採用通知が 「100通になったらあきらめよう!」 と、不屈の精神で希望を持ちつづけた方なんです。もちろん、作品はどれもおもしろいものばかり。それで、どうしてブレイクしなかったのか?というと、ジャンルの別なくオールマイティーに書きつづけていたために、出版社側も混乱しちゃったんでしょうね。

 ですから、アンソロジーというと必ず登場する方です。
そんな彼の長編、『テキサス・ナイトランダーズ』ですが、こちらは 「嫌悪のために途中で投げだしたらいいのか、笑いだしたらいいのかわからない」 とまで、ニューヨーク・レビューにいわしめた大変態小説。
ストーリーは、追うもの、追われるものの物語です。

 いわゆる十代の犯罪ものなのですが、これがほんとに、どーしようもない悪ガキばっかりです。自分たちの快楽のために女性を襲っては殺し、なんてひどいことをくりかえしていたんですが、ついに年貢の納めどきといいますか、女性教師のベッキーを襲ったときに逮捕されます。ところが、そのリーダーのクライドは、拘置所内で自殺しちゃう。(…どこまで悪あがきなんだか!!)当然、相棒のブライアンは気分よくありません。「あの女のせいで自殺したんだ!」 と思いこみ、復讐を決意するのです! おそろしいですね~!!

 もはや無軌道を通り越して、ひたすら俗っぽくて残虐で、まさしく嫌悪のためにやめちゃおうか、それとも、全部ジョークにしちゃおうか? というような内容です。標的にされてしまったベッキーとモンゴメリー、助かることはできるのでしょうか…??

 この小説のおもしろいところは、犯罪者たちが犯罪者なりの運命の出会い(?)らしきものを感じるシーンにあります。また、罪を犯す側の心理状態も不気味すぎてこわいです。いえ、おもしろいです。“カミソリの神” というのが出てくるんですが、『モンスター・ドライブ・イン』(1988)にも、似たようなものが登場します。やっぱり、似たような運命の出会いがあります。(…なんですが、こちらはあまりに破綻しすぎていますので、初心者にはオススメできません!) …わたしが感動してしまったのは、この破綻ぶりにもあります。だって、フツー、ここまでしっちゃかめっちゃかになっちゃったら、絶対途中で投げだしちゃいますよね~。。。

 とりあえず、一度読み出したら最後まで読まずにはいられなくなるくらい、パワーの溢れた野心作…かな?? ド変態作かな!!


 



   『ミステリー』


原題:『Mystery』
(1989)
ピーター・ストラウブ:著
芹澤恵:訳
扶桑社文庫
 
   

〔ストーリー〕
 カリブ海の小さな島ミル・ウォークに暮らす少年トム。祖父のグレン・アップショウは島の有力者、家は富裕だが、両親は不仲で、情緒不安定な母はアル中だった。ある日、ふとした好奇心から、祖父が追いかえした浮浪者風の男の住む場所にいってみようと思いつく。だが、そこで地元の不良少年たちに目をつけられ、逃げる途中で彼は車に轢かれてしまうのだが…


 あまりにも好き♪♪♪ すぎて、まともな感想を書けるかどうか(?)すこし不安なんですが、ついに登場させてしまいました、 ピーター・ストラウブです!

 ストラウブというと、『ゴースト・ストーリー』 だよ! という人が大多数かもしれません… もしかしたら、最新作の 『ヘルファイア・クラブ』 だよ! という方もいるかも。かくいうわたしも、どちらも大好きなんですが、今回はどうしてもこの作品を紹介したいと思いました。

 ストラウブの本をどれか一冊でも読んだことのある方なら、もうご存知だと思いますけど、この方の本はきわめて文学的です。高尚です。洗練されています。

 ここで、ホラーに “高尚さ” は必要なのか? という疑問が出てきてしまいそうですが、ストラウブにかぎっていえば、まったくの違和感なしです。
だって、ジェイムズだってホーソーンだって、幽霊小説を書いているじゃありませんか。ようは、文学肌の作家さんたちが、そこに及び腰になっていたということなんですね。そして、「文学的なホラーでも十分売れるノダ!」 ということを、はじめて証明してみせた作家さんでもあります。

 物語は、トムが高校生になってから本格的にスタートします。複雑な家庭環境で育ったトム、一風変わった雰囲気を持ち、周囲には溶けこまず、ちょっと陰がある不思議な青年… おかげで、ホモっ気のある先生が興味を覚えちゃいます。が、ほかにも興味を抱いた人がいました。幼馴染みの美少女サラと、トムのむかいの豪邸に住む、やっぱり変わり者の老人ラモント・フォン・ハイリッツ。

 このラモント老人、名前のとおり、ただの変わり者ではありませんでした。若いころは、すっごく有名な「素人探偵」だったのです。そして、トムとラモントが手を組んで、未解決の事件に乗りだすと… なんと、巨大なナゾに繋がってしまうという… (ううーん、これ以上は、もうなにもいえません!!)

 とにかく、キャラクター描写が知的なほどすばらしく、会話も完璧、ちょっとした心情や情景描写もサイコー、構成なんか、ほんとに凝っています。これぞプロの技です。ため息がでちゃうほどです。(…わたしのいちばんのお気に入りは、ラブ・シーンだったりします)← ここは惚れますよ~

 また、この作品は〈ブルー・ローズ〉三部作の一冊でして、これのほかには、ベトナム帰還兵のミステリものの 『ココ』、おなじくサイコものの 『スロート』 があります。ちなみに、〈ブルーローズ〉三部作とは、アンソロジー 『カッティング・エッジ』 に収録されている 『ブルー・ローズ』 という短編からはじまる一連のミステリ小説です。(…内容は微妙に繋がっていないようで、微妙に繋がっています…!)←  こちらは、ニューロティック・ホラーの最高峰ですので、絶対読み逃しのないように!!






 

  『果てしなき夜の息子』


    

原題 『Son Of The Endless Night』
(1984)
ジョン・ファリス:著
工藤政司:訳
ハヤカワ文庫 


〔ストーリー〕
 恋人カリンとスキー旅行に出かけた大学生のリッチは、気がかりな問題をひとつ抱えていた。去年宿をとったロッジの少女・ポリーから、「助けてほしい」という伝言を受けていたのだ。ロッジについて、ポリーを探すも、宿の主人の養父からは、「親戚の家にいっている」と、話をごまかされるだけ。ポリーを助けようとするリッチの正義感は、思わぬ事態を引き起こし…!
 そして、しがない悪役レスラーでリッチの兄のコナーは、「リッチが逮捕された」という連絡を受けることになり…


 1987~90年にかけて、ハヤカワ文庫が満を持して世に送りだした、〈モダン・ホ
ラー・セレクション〉
。作品を選出するさいに、当時 “モダンホラーの旗手” と呼ばれていたキングの意見や褒め言葉などを参考にしたために、地味なセレクションとなって失敗してしまった、なんて業界の人には苦い思い出があるようですが…

 なんの、なんの! 作品のほとんどが絶版となってしまったいまとなっては、マニア垂涎の品となっています。

 その一冊が、コレ。
イラスト、カッコイイですねー。持っていない方は、いまのうちによく憶えておきましょう。古書店で見かけたら、即ゲットですよ! この作品は中身もすばらしく、評論家の方たちの評価も非常に高いです。

 ネタばらししてしまいますと、「悪魔 V.S 人間」というストーリーなんですが、この、一見マンガちっくでありがちな本筋と、それとはかけ離れたシリアスで奥深~い物語世界は、一度読みはじめたら感動すること請けあいです。

 前半が、子供っぽくて無鉄砲な雰囲気の青年・リッチ、後半から、悪役レスラー兼ステキなお父さんの兄・コナーと主役が引きつがれます。

 まず、前半リッチの悪魔に魅入られてしまうまでのストーリーが、非常に複雑怪奇! 論争好きで鼻っ柱の強いリッチ、少女からの “助けてコール” を受けて、生真面目な青年らしく、真剣に手を貸そうとします。が、肝心のポリーは見つからない。宿の隣の建物は、火事で焼け落ちていました。不審に思ったリッチが潜りこむと、階上に囚われたポリーが… なんと、彼女は虐待を受けているではあーりませんか!

 それと同時に、恋人カリンにも不思議な現象が起こります。カリンははじめから、ポリーにたいして不信感を抱いていたのですが、(さすがは女のカンといいますか)、ポリーのほうも、彼女を “邪魔者” と思っていたようです。…と、いいますか、これは小悪魔ポリーひとりが企てたことではなかったんですね。
 そして、思いもしない惨劇が…!!  

 そうした、悪魔の計画の全貌が明らかになるにつれて、読んでいるこちらはどんどん奇怪な迷路にはまっていくような心地になってしまいます。

 登場人物も非常に多く、物語にグイグイひきこむ筆力も見事です。
余談までに、ジョン・ファリスという作家さんは、デ・パルマの「The Fury」「フューリー」1987)の原作者。なんと、あのキングが憧れた作家さんのひとりなんだそうです。なるほど、そう考えてみれば、緻密な描写や、リアルなキャラクター造形、ストーリー展開など、キング顔負けの一流ランクです。(…ちょっと残念なのは、訳文が弱冠古いところでしょうか…)

 おもしろい小説は星の数ほどありますけど、この独創性には唸ること確実です。
このほかにも、おなじハヤカワ文庫で 『サーペンド・ゴッド』 があります。こちらもがつくほどおもしろいので、オススメです!!
 





    『死者の書』

原題 『The Land Of Laughs』
1980
ジョナサン・キャロル:著
浅羽芙子:訳
創元推理文庫


〔ストーリー〕
 高校教師のトビィは、のみの市で知りあった風変わりな女性・サクソニーと恋に堕ちる。ふたりが共通して熱心なファンである童話作家・故マーシャル・フランスの故郷ゲイレンを訪ねようと、休暇をとって旅に出ることにする。だが、ふたりはまだ知らなかった。その町は、けして足を踏み入れてはならない場所だったのだ…!


 ストーリー紹介に、とてもホラーな書き方をしてしまいましたが、これはホラーではありません… いえ、れっきとしたホラーです。出版元を見ると、推理文庫から出ていますね。なるほど、ミステリ要素もたっぷりです… それに、ファンタジーな部分もあります。ファンタジーといっても、かなりダークですけどね。いいえ、それ以上に、“ジョナサン・キャロル的” としかいえないような、特異な世界観を紡ぎだしている、おそるべき処女作でもあります。

 近ごろ観念的になりすぎて、読者には伝わりにくい “アチラの世界” にいってしまわれたのでないかと、もっぱら噂されていましたが… またすこしずつ(?)もどってきてくれているような、ジョナサン・キャロル。
経歴も顔写真もなにやらナゾめいている方ですが、この処女作にかぎっていえば、

 こ~んなすごい人がいていいの!!

 …というくらい、たまげてしまった作品です。オソロシイです。読後、キングが興奮のあまりファンレターを書いてしまったというのも、超有名なお話です。

 キャロルの小説の魅力は、登場人物たちの織り成す会話や、ウィットあふれるエピソード、ときに知的すぎる作者の薀蓄にあるわけですが、全体的なトーンはとても無邪気。それでいて、不気味。
この、「無邪気」で「不気味」という対極の魅力を持つ世界観というものを、読んだことがない方にど~う説明したらいいのやら…!!

 物語の冒頭そうそう、不思議設定にびっくりしてしまいます。トビィは高校教師なんですが、亡き父親は超有名俳優でした。その影響もあってか、小学生のころから精神科に通っていました… !
トビィは見てくれも悪くないので、簡単に女子を自宅に連れ帰ることができるんですが、壁一面に飾ったマスクを気味悪がられて、結局うまくいきません…

 …とまあ、こんな日常が淡々とつづくんですが、なぜかこうしたユーモア(?)あふれるエピソードが重なるうちに、不穏で不気味な空気も増していく。コワい、これが異常なほど、コワいんです! まさしく、特異な才能だと思います。真似しようとしても、たぶん、だれもできないんじゃないでしょうか… ??

 また、すぐれているのは人物描写だけではなく、ストーリーの細部にまで神経がいきわたっています。物語の重要な役割を果たす童話作家・マーシャル・フランスなんて、訳者さんはあまりの緻密な情報量に、実在する人物かと思って探しちゃったんだとか…
この作家さんの特色をほかのものにたとえるとしたら… “ものすごく繊細なレース” のよう。それも、凡人には理解できない複雑な方法で編んだ感じです。

 ラストの一文に衝撃を受けてしまったわたしは、なかなかこの魔力から抜け出すことができませんでした。
なお、『月の骨』『炎の眠り』『空に浮かぶ子供』 の三部作もオススメです。
とんでもなくオソロシくて、カッコイイ。
まだ読んだことがないという方は、ぜひ!!




 

    『小さな暗い場所』

原題 「A Small Dark Place
1997
マーティン・シェンク:著
近藤純夫:訳
扶桑社文庫


〔ストーリー〕
 カンザスで農場を営むピーターとサンドラは、かつては高校のキングとクィーン。だが、いまは落ちぶれて、日々の暮らしにもあえぐ貧困ぶりだった。元同級生で、いまや銀行の頭取となったデニーにローンの返済を迫られ、ついには家も抵当に入れられてしまう。万策つきた彼らは、ある計画を思いつく。それは、以前ある少女が井戸に転落し、TV中継され、同情した全国の人々から莫大な寄付金がよせられたというものだった…


 マーティン・シェンクの 『小さな暗い場所』 です。
この作品、以前から何度も映画化の話が持ちあがったようなんですが、いまだに実現にこじつけた話は聞きません。非常に残念です~。。。 だって、こんなに大傑作なのに…!!

 オープニングからこなれた描写力ではじまるこの物語、前半と後半で大きくふたつにわかれています。前半は、かつてのフットボールの王子さまと、ガールフレンドの女王さまの転落ぶり。残酷な時の経過を、これでもかと羅列してくれます。ヒロインのアンドロメダ(…ずいぶん印象的な名前ですね!)は、まだ5才。兄のウィルの献身ぶりにもまた、泣かせてくれるんですが、夫婦の思いつく計画がすごいです。

 わが子を危険にさらして、大金をせしめよう
っていうんだから!

 アメリカのメディアや、メディアに踊らされる国民なんかをかなり批判的に描いているんですが、どちらかというとブラックよりで、あまりシリアスなムードはありません。残酷なおとぎ話のように、登場人物たちが入れ替わり、立ち代わり、ときには滑稽に場面をひっぱっていきます。

 と、後半に入ってから、いっきにスピードアップしてきます。
成長したアンドロメダが、とにかく魅力的! “絶世の美女” として描かれてるんですが、“魔性の美女” でもあります。長らく故郷を離れていたアンドロメダ、彼女が十数年ぶりに町に帰ってきてから、おそろしい惨劇がつぎつぎと起こるようになってしまいます…!!

 すこし似ている雰囲気のものをあげるとすると、バリ・ウッドの作品群なんか、どうでしょう。悩めるうつくしき○○、う~ん、まさにぴったり!
 でも、あちらが女流作家さんということで、ほのかなラブロマンスなんかもあったりするのにくらべて、こちらはバッサバッサとを流していきます! (…とくに、超ド変態男デニーの流血シーンなんか、女性のわたしから見ても、痛々しくてヒエーッッ」って感じです!)

 ラストがあまりに莫大なことになりすぎて、イメージがつかみにくいというのが難点なんですが、この手の作品ではトップレベルのおもしろさと構成力です。

 残念なついでに、この作家さんの2作目の話もまだ響いてきていません… こんなすごい才能があるなら、もっと書いてほしいですねー!!






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(いちおう)プロフィールです
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ななみといいます
性別:
女性
自己紹介:

 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

〈好きかも♪〉
 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
 かます、説明書、道案内、カマドウマ、狭いところ、壁がすんごい目の前とか、渋滞、数字の暗記、人ごみを横切る、魚の三枚おろし…
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