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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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     『フェイド』



    原題 『Fade』
    (1988)
    ロバート・コーミア:著
    北澤和彦:訳
    扶桑社ミステリー




〔ストーリー〕
 田舎町に住むフランス移民の少年・ポールは、あるとき自分に姿を消す能力があることに気づく。それは代々彼の一族に受け継がれてきた、とても不思議な力だった。実力者が小さな町を牛耳り、無力な労働者たちは日々の暮らしに不満を募らせはじめるなか、ポールの父親は労働争議の中心的メンバー。しかし、そんな彼の言動や行動が快く思われるはずもなかった…
 夭折した作家ポール・ロジェイの残したこの遺稿は、フィクションなのだろうか、それとも…??


 ちらほら映画化の話が聞かれるようになってきましたので、とりあえずレビューしておこうかと思います。

 ロバート・コーミア… ロバート・コーミアですよ、みなさん!!

 日本だと、ヤングアダルトな作家というイメージが強いですけど、といいますか、「ヤングアダルト = 子供が読む本」 ということになっていますけど、この方の本はぜひとも大人が読むべき内容です。一様にして、思春期の少年たち、彼らの複雑な心理や葛藤を描くのを得意とする人なんですが、子供が読んでもきっと痛いんでしょうね~、大人が読むと、もっともっと痛いです。痛くて、苦い。ビター・スイートというよりは、ビ
ター・ビター・ちょっとスイートな感じです。
    
 コーミアというと、いちばん有名なのが 『チョコレート・ウォー』 なんですけど、これはコーミアの息子さんに起こったじっさいの出来事から着想を得たそう。そういえば、むかし夏休みの読書感想文なんかで、この本を読んでいる同級生が何人かいました。ちなみに続編も邦訳されています。

 ひとことでいってしまうと青春小説… なんですけど、そこには十代のれっきとした現実、映画みたいにハッピーエンドにはならないリアルな現実が、そこには存在します。それがつねに、主人公の前に立ち塞がります。その現実というのはコンプレックスだったり、いじめだったり、家族とのあり方だったり、性の問題だったり… と、さまざまなんですが、どんな人も一度は経験したことがあるとリンクするのはまちがいナシ。この痛い共感、せつなさが、ほんとにうまい作家さんなんです、この人は。

 それで、本作品なんですが、ちょっとほかの作品とは趣向が変わっていまして、複雑な構図のミステリーとなっています… ミステリー? うーん、このあたりが微妙なんですが、ただの青春ホラーにとどまらず、なかなか凝った仕掛けです。

 前半が、姿を消す能力(フェイド)に目覚めたポール少年の冒険、後半からポールの姪のスーザンが主人公となり、前半の物語はすべてポール・ロジェイという作家の遺稿ということが判明します。スーザンも作家志望の女子大生、ポールに憧れを抱いていたのですが、遺稿を読んでショックをうけてしまいます。これは現実なのだろうか、それとも、ただのフィクションなのか…?
 そして、紛失していた遺稿のつづきが発見されたとき、そこには驚くべき真実が…!!

 超能力、青春とくると、『キャリー』 が頂点ではないかとわたしは思うんですが、こんなにすばらしい傑作もあるんですよ。やはりホラーと青春ものは相性がいいですよね。(…ただ、個人的な感想をいってしまいますと、後半がもうすこし踏ん張ってくれていれば、大傑作になったのにと思うのです!)

 ちなみに、コーミアの作品はどれもこれも痛いのですが、『ぼくが死んだ朝』 は、とくに痛くてせつなくて悲しかったです。ヤングな方もアダルトな方も、このズキンとくる痛みはぜったい必要。オススメ!!






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     『殺戮のキャンパス』



    原題 『Flesh』
    (1987)
    リチャード・レイモン:著
    山口緑:訳
    扶桑文庫



〔ストーリー〕
 サイクリング中の女子学生をつけ狙う、不気味な一台の車。これは無差別殺人なのか、それとも…? 担当刑事のジェイクは、事故現場にそう遠くない場所で老夫婦が無惨に殺害されたことを知る。事件のあまりの異常さから、ジェイクは犯人の精神状態を疑うが…
 一方、魅力的な女子大生のアリソンは、恋人の教授エヴァンとの関係に悩んでいた…


 リチャード・レイモンの登場です。
どうせレイモンをとりあげるなら、なぜ『殺戮の野獣館』(&『逆襲の野獣館』)にしないっ!! というお叱りの声をいただきそうですが、好きなんです、こういうテイスト。これが訳出された当時、「うわーい、これからどんどんレイモンが読める」と、期待にワクワクしていたんですけどねー…

 リチャード・レイモンというと、軽妙なノリ、お下品、お下劣の三拍子がそろった、B級テイスト満載のホラー作家です。“スプラッタ・パンク” を語るうえでも、欠かせない作家のひとりとなっています。まだ長編の邦訳が出ていなかったころ、ちらほらといろんなアンソロジーで短編を見かけるたび、「この人、すごくセンスいい!大好きかも…」と、思ってました。レイ・ガートンとおなじくらい、期待しちゃっていたかなあ。

 レイモンはもともと小学校教師だったのですが、娘の友だちにせがまれてコワいお話を即興でつくったところ、これが大好評。その気になって小説にしてみたところ、あっという間に人気が出ちゃって、作家としても大成してしまいました。きっと、お話好きのオチャメなパパだったんでしょうね。

 レイモンのおもしろさは、映画やコミックスや雑誌なんかのサブカル一般、それと伝承(…デート中のカップルが片手がフックの殺人鬼に襲われかける話とか)のいいとこどりをして、非常に軽いノリですいすい読めてしまう作品に仕上げたところ。この軽さが、キングの重厚感にちょっと飽きてきた読者層の心を一気につかんでしまったようなのです。

 本作品も美人の女子学生アリソンを中心に、お下品・お下劣きわまりない殺戮がくりひろげられます。レイモンの登場人物というと、女性は必ずセクシーな美人! セクシー場面も多数あり! それから、青春! バッググラウンドなんて関係ないさー、どんどんいきます! という、テンションのよさ。でも、このお約束な展開が、お約束なホラー映画を観ているみたいで非常にワクワクしてしまうんですよね。

 『殺戮の野獣館』は、その異常な(…珍奇な?)結末にかなり注目が集まったようですが、(もちろん、〈野獣館〉シリーズも大好きなんですけど)、こういう単品も捨てがたいです。捨てがたいといえば、まだまだ訳出されてもいいような作品がたくさんあるんですよね。
 たとえば、遊園地ものの 『Funland』、変わり種吸血鬼ものの 『The Stake』、地震後の人々の争いを描いた『Quake』、もちろん、忘れちゃいけないのが〈野獣館〉シリーズの続編 『The Midnight tour』

 こんなに期待していたのに、これからレイモン人気がいっきに高まる! と思っていた矢先だったのに… 2001年2月14日、心筋梗塞で亡くなってしまいました。享年54才。あまりに早すぎる死です。わたしはショックのあまり、20日間ほどチョコ断ちしてしまいましたほど。結局長編訳出はいまのところ、上記にあげた三作のみです。埋もれさせるには、あまりに惜しい才能です…!!






 
     『カーリーの歌』



    原題 『Song of Kali』
    (1985)
    ダン・シモンズ:著
    柿沼瑛子:訳
    ハヤカワ文庫


〔ストーリー〕
 詩人のルーザックは、編集者の友人から死んだはずのインドの大詩人・ダースがじつは生きているという情報を聞きつける。しかも、彼は新作を書きあげているというのだ。ルーザックはその真偽をたしかめるべく、妻と幼い娘をつれてカルカッタにむかう。しかし、西洋の理知的な詩人・ルーザックの目から見たカルカッタは、腐敗と臭気、暴力と混乱に満ちたおそるべき魔都だった…


 いまの装丁はこんな感じになっているんですね。
ダン・シモンズの長編デビュー作、デビュー作にして〈世界幻想大賞〉を受賞したという、快挙な一作です。

 この作品はグロテスク描写がすばらしく緻密で(!)、無気味なカルト集団の暗躍エピソードが寒気がするほどリアルでおもしろく、わたしなんか、読みかえすたびにおっかない悪夢を必ず見てしまうという代物なのですが… 映画化の話はこのさきも望めそうにありません。

 なぜかというと… 作者自身はまったくそのつもりはないのですが、差別的な描写が含まれていると誤解されるおそれがあるからです。
 そういえば、ラヴクラフトも、本人にはまったくその自覚がなくても、作中で有色人種やインディアンを恐怖の対象に見ていました。これは、ラブクラフト自身が彼らに “理由のない恐怖” を抱いていたからなのですが… (それが人種差別なんだよ、とだれかに指摘されれば、本人もびっくりしたことでしょう。だって、一方でヒトラーを大嫌悪していましたもんね!)

 シモンズの場合は無知からきている恐怖ではなくて、作品としてインドの大都市・カルカッタのエキゾティックなイメージを利用しただけ。その証拠に、カルカッタの混沌とした、どぎつくて邪悪な面をこれでもかと描いておきながらも、その筆はどこか醒めた様子です。おそらく、「西洋人の理解や知識がまったく通用しない場所」=「存在することすら呪わしい場所」の象徴として、カルカッタを使ったのでしょう。

 物語は、詩人のルーザックが死亡したはずの今世紀最大の大詩人・ダースの生存説を知り、妻のアムリタとまだ数ヶ月の愛娘・ヴィクトリアとともに、カルカッタに旅立つところからはじまります。そこでダースを見つけだし、彼の新作を手に入れるはずでしたが… 暗黒の邪神・カーリーを崇拝するカルト集団の陰謀に巻きこまれてしまいます。ダースはほんとうに生きているのか? カルト集団の狙いとは?? そして、そこにはひいぃぃぃ~!! な、おそろしい邪悪儀式と秘密もあったのです…

 「暴力こそが力」という提示にたいし、「それでも、わたしはなにもしない」というメッセージ性が非常に力強く、印象的です。ですが、時間を経ても色褪せないその魅力とは、やはりルーザックが迷いこむ異国の悪夢のような鮮烈体験でしょうね。ここのエピソード、ほんっとに夢に出てくるほどおぞましいです。(シモンズはまどろっこしい書き方をするきらいがありますが、この処女作にいたっては、わかりやすくて、単純で、ただひとこと、おもしろこわい! といいますか、エグイ!!
 
 「ハイペリオン」シリーズしか読んだことがないという人も、これを機会にホラーに挑戦してみてはいかがでしょう? なお、個人的には、少年ホラーの 『サマー・オブ・ナイト』 がいちばん好きなんですけど、〈ブラム・ストーカー賞〉を受賞した堂々たる大長編、『殺戮のチェス・ゲーム』 もオススメです。ちなみにこの作品は、傑作吸血鬼アンソロジー 『血も心も』 のオープニングを飾る、『死は快楽』をもとに書かれたもの。こちらも必読の仕上がりとなっています。






 
     『気象予報士』


    原題 『The Weather Man』
    (1995)
    スティーヴ・セイヤー:著
    浅羽莢子:訳
    角川文庫/上・下


〔ストーリー〕
 ミネアポリスに巨大な竜巻が突如発生。無防備な都市に甚大な被害をもたらした。しかし、国の気象庁しか出せない暴風雨警報を独断で放送した、ひとりの天才気象予報士・グレアムがいた… 異常気象が発生するたびに起こる、女性ばかりを狙った連続殺人事件。死刑制度反対だったミネソタ州は怒りに湧きあがる。そして、〈スカイ・ハイ・ニュース〉の報道部には、ふたりの気圧や湿度の変化に敏感な男がいた…


 この作品を書店で見かけたとき、タイトル、あらすじから想像して、ありがちなミステリなんじゃないかな? と思っていたのですが… えーと、一応ミステリに入る分類なんですけど、犯人探しが主体ではありません。説明するにも、ちょっとばかし複雑な内容です。ベトナム帰りのふたりの男の運命を描ききった、じつに密の濃~い、シリアスな人間ドラマといいましょうか… 本好きの方には、とにかくオススメの一作です。まだ未読という方は、とりあえず読んでみるべし!

 物語は、いきなりクライマックスともいうべき異常な緊張感からはじまります。ミネソタ州というと、天気に敏感にならざるえない、竜巻の多い州。とあるビルの屋上で、ひとりの女性が絞殺されるショッキングなシーンで幕開けです。犯人は覆面を被った男。女性の最期の抵抗が、この男を側壁に押しつけるのですが…

 おなじころ、〈スカイ・ハイ・ニュース〉の天気予報では、国の気象庁しか出せない暴風雨警報を独断で放送した気象予報士がいました。彼の名はグレアム・ベル。気圧の変化に異常に敏感で、鋭い勘を持つ、まさしく天才的な予報士です。
 そして、報道部にはリックという、ベトナム帰還兵の記者が。彼には顔がなく、そのためいつもマスクを被っていて、汗腺がないために気圧・湿度の変化に敏感という、またまた天気の変化に鋭い人間なのです。

 作者のスティーヴ・セイヤーは、この作品を書くためにテレビ局に3年間勤めたんだとか。そのため、実体験がもとになっているので非常にリアルな、華やかでありながら嫉妬が渦まくテレビ業界… といった、実情を知っている人ならではのドロドロな内面がよく描かれています。
 ストーリーは、天才なのだけれどモテないベル、やはりモンスターなのでモテない(と思っている)リック、知的美女のキャスター・アンドリアを中心に進みます。次々と起こる無差別殺人事件。トップニュースを掴もうと躍起になる報道部。はたして、真相は…??
 
 個々のキャラクター造形がすばらしく、魅力的なエピソードがふんだんにこらされています。なんといっても、結末まで持続する緊張感、スリルがすごいです。ここではあまり内容を書けないんですが、結末まぎわの迫力のある筆致(…といっても、文章自体は乾いて簡素なものなんですが…)には、思わずうなってしまいました。

 トマス・ハリスと比較されることが多かったそうなんですが、わたしはどちらかというと、キングっぽいという印象を持ちました。エピソードの積み重ねで奥ゆきのある世界を作りだしていく、というところなんか、たぶんお手本にしているんだと思います。余韻もかなり深く、あとあとまで引きずってしまいますね~… これは傑作!!





 

    『スワン・ソング』


    原題 『Swan Song』
    (1987)
    ロバート・R・マキャモン:著
    加藤洋子:訳
    福武文庫/上・下巻
  


〔ストーリー〕
 ときは1980年代後半、第三次世界大戦が勃発。植物と心を通わせることができる不思議な力を持つ少女、スー・ワンダと元レスラーのジョシュは、ガソリンスタンドの地下室に閉じこもっていたために奇跡的に命を救われる。そして、べつの場所では、バックレイディの 「シスター」 が生き残った人々を導いていた。
 荒廃した世界、放射能障害、“核の冬” という極寒のなかで、なんとか生き延びようとする人たち。はたして世界は再生することができるのだろうか? そして、スワンたちに課せられた使命とは…??


 今回はマキャモンの 『スワン・ソング』 をご紹介します。
この作品、なんと現在絶版になっているそうです。「信じられなーい!」 とお嘆きのアナタ、もちろん読了していますよね。ほんと、こんなにクオリティの高い超娯楽大作が絶版だなんて、最近の出版業界はどうなっているんでしょう!

 …話が少し逸れてしまいましたが、最初にネタばらししてしまいますと、これはキングの終末超々大作 『スタンド』 のオマージュです。…といいますか、真似っこです。…といいますか、マキャモンは全作家人生を通して、「キング大好き♪♪♪超~キング憧れる!」 という方なのです。だから、いくらプロットが見たことあろうと、キャラが似通っていようと、そんなことは問題にならないのです。だって、おもしろいですから! ついでにいってしまいますと、『スタンド』 よりも読みやすいですから!! エンタに徹していますから!!!

 ストーリーは核戦争後の凄惨きわまる世界で、3つのグループにわかれて展開していきます。少女スワンと彼女の守護神のようなジョシュ、元バックレイディの 「シス
ター」、そして、ベトナム帰還兵のマクリン大佐とゲームおたく少年のローランド。
 ここに、「真紅の眼を持つ邪悪な男」 が登場することによって、物語はさらに複雑に入り組んでいきます。

 前半は、焦土と化した世界で必死に生き延びようとする人々の悲惨さや醜さなどがこれでもかと描写されますが、マキャモンの根底にあるのは、いつも 「善」「希望」。そのため、キングが徹底的に人の裏側を描こうとするなら、彼の場合は温かみがある、といった感じです。(…また、クーンツのような職業作家的な 「善」 ではないため、なぜか素直に共感できてしまうのです)。

 不思議な力を持つ少女・スワンが世界再生の鍵を握るわけですが、彼女にはさまざまな困難が立ちはだかります。そして、マクリン大佐とローランド少年は、狂った方向に突っ走ってしまいます。そして、核戦争を引き起こした張本人(!)も登場します。そしてそして、なぜかスワンをおそれる 「紅い眼の男」 の正体は…??

 物語の展開がスピーディーで、随所に楽しいエピソードがあり、ページをめくる手を止めさせません。(…キングの 『スタンド』 が壮大な一大叙事詩なら、こちらはより軽い娯楽小説といったところ)。キャラクターもベタなものが多いのですが、はっきりいって、こういうのは大好きです。とくに、なにがあってもスワンを守ろうとするジョシュがステキ!! ついでに、スワンに恋してしまう不良少年といった、これまたベタな展開も大好きです~

 マキャモンはまた、キャラクターを大事にする人らしく、退場させるにしても涙なくして読ませない技を心得ています。(ベタ~な展開には馴れているわたしですが、さすがに○○の退場シーンは… 涙ぐんでしまいました!)結末も当然のことながら、非常に非常に、感動的です。
 この作品でマキャモンの認知度があがったことはいうまでもないのですが、超能力少年の成長を描いた『ミステリー・ウォーク』 も超オススメ! こちらは、インディアンの血を引く少年ビリーが主人公で、なんと死者を見る能力を持っており、南部のうつくしい風景が印象的。父子の葛藤あり、善と悪の戦いありで、すばらしい青春ホラーだと思います。タイトルの意味は、おなじ能力を持つ母親の言葉、「神秘の道を歩きなさい」 からきています。






   『16の殺人ファイル』


原題『Proclaimed in Blood』
(1995)
ヒュー・ミラー:著
加藤洋子:訳
新潮文庫


〔ストーリー〕
 グラスゴーの中心街で、鉄柵に串刺しにされて撲殺された高級娼婦の遺体が発見された。被害者の爪のあいだから採取した物質を分析した結果、植物の組織であることがわかり…
 過去半世紀に世間を騒がせた殺人事件をレポートし、かすかな痕跡をもとに事実を積み重ねて、事件解決に貢献する法科学者たちの活躍を描く。おもしろいです。


 絶版になっているようなんですね、この作品。
ハイ、結論からいってしまいます。傑作です。未読の方は、ぜひとも手に入れましょう。“事実は小説より奇なり” というのは、まさにこういうことなんですね。

 タイトルにもあるとおり、現実に起こった 「16の殺人事件」 の模様が描かれているんですが、結論にいきつくまでの科学者たちの、ほとんど執念ともいうべき捜査手順にはうなってしまうこと確実です。こんな細かい努力の積み重ねによって、結論を導きだしていたんだ、と、感心してしまうことうけあい。たぶん、大ヒットドラマ「CSI」シリーズをどれかひとつでも観たことがあるという方なら、わかっていただけるんじゃないでしょうか…… 現代殺人において、「証拠」 というのは不可欠なんですよ。それが科学的であればあるほど、実証されやすいわけです。

 また、事件の詳細が紐とかれることによって浮かびあがる、複雑な人間関係というのも、ときに哀しかったり、やるせなかったり…
人が人を殺すには、それなりの動機があったり、まったくの思いつきだったり…

 それにしても、ノンフィクションでありながら、この密の濃さはどうですかっ!
ミラーの筆致もじつに淡々としたもので、事実だけを客観的に述べているぶん、現実に起こった殺人の寒々しさというのが余計に際立っています。それにしても、この16件の悲劇すべてが、腕のある人にかかると立派な長編になってしまいそうなところが…… いえいえ、これは下世話な話ですか。

 ミラーはこの後も、「殺人データ・ファイル」(1998)(新潮OH!文庫)という続編を出版しています。こちらも大傑作の部類に入るものですので、お見逃しのないように。






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(いちおう)プロフィールです
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ななみといいます
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女性
自己紹介:

 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

〈好きかも♪〉
 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
 かます、説明書、道案内、カマドウマ、狭いところ、壁がすんごい目の前とか、渋滞、数字の暗記、人ごみを横切る、魚の三枚おろし…
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