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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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    『死者の書』

原題 『The Land Of Laughs』
1980
ジョナサン・キャロル:著
浅羽芙子:訳
創元推理文庫


〔ストーリー〕
 高校教師のトビィは、のみの市で知りあった風変わりな女性・サクソニーと恋に堕ちる。ふたりが共通して熱心なファンである童話作家・故マーシャル・フランスの故郷ゲイレンを訪ねようと、休暇をとって旅に出ることにする。だが、ふたりはまだ知らなかった。その町は、けして足を踏み入れてはならない場所だったのだ…!


 ストーリー紹介に、とてもホラーな書き方をしてしまいましたが、これはホラーではありません… いえ、れっきとしたホラーです。出版元を見ると、推理文庫から出ていますね。なるほど、ミステリ要素もたっぷりです… それに、ファンタジーな部分もあります。ファンタジーといっても、かなりダークですけどね。いいえ、それ以上に、“ジョナサン・キャロル的” としかいえないような、特異な世界観を紡ぎだしている、おそるべき処女作でもあります。

 近ごろ観念的になりすぎて、読者には伝わりにくい “アチラの世界” にいってしまわれたのでないかと、もっぱら噂されていましたが… またすこしずつ(?)もどってきてくれているような、ジョナサン・キャロル。
経歴も顔写真もなにやらナゾめいている方ですが、この処女作にかぎっていえば、

 こ~んなすごい人がいていいの!!

 …というくらい、たまげてしまった作品です。オソロシイです。読後、キングが興奮のあまりファンレターを書いてしまったというのも、超有名なお話です。

 キャロルの小説の魅力は、登場人物たちの織り成す会話や、ウィットあふれるエピソード、ときに知的すぎる作者の薀蓄にあるわけですが、全体的なトーンはとても無邪気。それでいて、不気味。
この、「無邪気」で「不気味」という対極の魅力を持つ世界観というものを、読んだことがない方にど~う説明したらいいのやら…!!

 物語の冒頭そうそう、不思議設定にびっくりしてしまいます。トビィは高校教師なんですが、亡き父親は超有名俳優でした。その影響もあってか、小学生のころから精神科に通っていました… !
トビィは見てくれも悪くないので、簡単に女子を自宅に連れ帰ることができるんですが、壁一面に飾ったマスクを気味悪がられて、結局うまくいきません…

 …とまあ、こんな日常が淡々とつづくんですが、なぜかこうしたユーモア(?)あふれるエピソードが重なるうちに、不穏で不気味な空気も増していく。コワい、これが異常なほど、コワいんです! まさしく、特異な才能だと思います。真似しようとしても、たぶん、だれもできないんじゃないでしょうか… ??

 また、すぐれているのは人物描写だけではなく、ストーリーの細部にまで神経がいきわたっています。物語の重要な役割を果たす童話作家・マーシャル・フランスなんて、訳者さんはあまりの緻密な情報量に、実在する人物かと思って探しちゃったんだとか…
この作家さんの特色をほかのものにたとえるとしたら… “ものすごく繊細なレース” のよう。それも、凡人には理解できない複雑な方法で編んだ感じです。

 ラストの一文に衝撃を受けてしまったわたしは、なかなかこの魔力から抜け出すことができませんでした。
なお、『月の骨』『炎の眠り』『空に浮かぶ子供』 の三部作もオススメです。
とんでもなくオソロシくて、カッコイイ。
まだ読んだことがないという方は、ぜひ!!




 

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キャロル登場!
「無邪気」で「不気味」そう、そうなんです。
キングやクーンツとは違う。繊細なクロシェレース
の文様に見とれていると、それが不気味な意味
を持っているのに気付くような。
大変静かに淡々とした始まりから、いつのまにか
引き返せなくなっているんですよね。
最近の「パニックの手」の「おやおや町」が
一番好きです。
奈良の亀母 2008/03/10(Mon)21:31:18 編集
亀母さん♪
こんばんは~。
引き返せなくなっている、って気づいたときが、いちばんこわいんですよね。
キャロルの不気味さは、うーん、独特すぎて、ほかにたとえようがないかもしれません。
『パニックの手』は、ハズレなしの傑作短編集ですよね!(わたしは「細部の悲しさ」なんかも好きです♪)
邦訳2冊目の『われらが影の声』、トイレのシーンが激トラウマになっています…。。。
ななみ 2008/03/10(Mon)23:04:14 編集
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