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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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     『カーリーの歌』



    原題 『Song of Kali』
    (1985)
    ダン・シモンズ:著
    柿沼瑛子:訳
    ハヤカワ文庫


〔ストーリー〕
 詩人のルーザックは、編集者の友人から死んだはずのインドの大詩人・ダースがじつは生きているという情報を聞きつける。しかも、彼は新作を書きあげているというのだ。ルーザックはその真偽をたしかめるべく、妻と幼い娘をつれてカルカッタにむかう。しかし、西洋の理知的な詩人・ルーザックの目から見たカルカッタは、腐敗と臭気、暴力と混乱に満ちたおそるべき魔都だった…


 いまの装丁はこんな感じになっているんですね。
ダン・シモンズの長編デビュー作、デビュー作にして〈世界幻想大賞〉を受賞したという、快挙な一作です。

 この作品はグロテスク描写がすばらしく緻密で(!)、無気味なカルト集団の暗躍エピソードが寒気がするほどリアルでおもしろく、わたしなんか、読みかえすたびにおっかない悪夢を必ず見てしまうという代物なのですが… 映画化の話はこのさきも望めそうにありません。

 なぜかというと… 作者自身はまったくそのつもりはないのですが、差別的な描写が含まれていると誤解されるおそれがあるからです。
 そういえば、ラヴクラフトも、本人にはまったくその自覚がなくても、作中で有色人種やインディアンを恐怖の対象に見ていました。これは、ラブクラフト自身が彼らに “理由のない恐怖” を抱いていたからなのですが… (それが人種差別なんだよ、とだれかに指摘されれば、本人もびっくりしたことでしょう。だって、一方でヒトラーを大嫌悪していましたもんね!)

 シモンズの場合は無知からきている恐怖ではなくて、作品としてインドの大都市・カルカッタのエキゾティックなイメージを利用しただけ。その証拠に、カルカッタの混沌とした、どぎつくて邪悪な面をこれでもかと描いておきながらも、その筆はどこか醒めた様子です。おそらく、「西洋人の理解や知識がまったく通用しない場所」=「存在することすら呪わしい場所」の象徴として、カルカッタを使ったのでしょう。

 物語は、詩人のルーザックが死亡したはずの今世紀最大の大詩人・ダースの生存説を知り、妻のアムリタとまだ数ヶ月の愛娘・ヴィクトリアとともに、カルカッタに旅立つところからはじまります。そこでダースを見つけだし、彼の新作を手に入れるはずでしたが… 暗黒の邪神・カーリーを崇拝するカルト集団の陰謀に巻きこまれてしまいます。ダースはほんとうに生きているのか? カルト集団の狙いとは?? そして、そこにはひいぃぃぃ~!! な、おそろしい邪悪儀式と秘密もあったのです…

 「暴力こそが力」という提示にたいし、「それでも、わたしはなにもしない」というメッセージ性が非常に力強く、印象的です。ですが、時間を経ても色褪せないその魅力とは、やはりルーザックが迷いこむ異国の悪夢のような鮮烈体験でしょうね。ここのエピソード、ほんっとに夢に出てくるほどおぞましいです。(シモンズはまどろっこしい書き方をするきらいがありますが、この処女作にいたっては、わかりやすくて、単純で、ただひとこと、おもしろこわい! といいますか、エグイ!!
 
 「ハイペリオン」シリーズしか読んだことがないという人も、これを機会にホラーに挑戦してみてはいかがでしょう? なお、個人的には、少年ホラーの 『サマー・オブ・ナイト』 がいちばん好きなんですけど、〈ブラム・ストーカー賞〉を受賞した堂々たる大長編、『殺戮のチェス・ゲーム』 もオススメです。ちなみにこの作品は、傑作吸血鬼アンソロジー 『血も心も』 のオープニングを飾る、『死は快楽』をもとに書かれたもの。こちらも必読の仕上がりとなっています。






 
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やっとこちらに来れました。
もう松の内も過ぎてしまって・・・。
今年も面白そうな作品を取り上げて下さって
ありがとうございます。最新作はレンタル出来る
までに一年あいてしまったり、どうしても観賞できない作品も多いですが、遅ればせのレスを薄目で
見てやって下さい。
この「カーリーの歌」のクライマックスの悲劇は
どうしても正視できずに読み飛ばしてしまいます。
初めての時は読んでしまって大ダメージでした。
大都市カルカッタそのものが奥さんと赤ちゃんの
脱出を悪意でもって阻んでいるような錯覚を覚え
ます。変わり果てた我が子・・・。
「西洋人の理解を越えた呪われた場所」として
カルカッタを使ったとありますが、私自身は東洋人
のせいかインドものは大好きなんです。
流水りんこさんの「インドな日々」とか。
毎週録画している世界ふれあい街歩きでも
欧米の都市は美しく清潔で計画的に作られて
いますが、モロッコや台湾やインドの都市は
ゴチャゴチャして非衛生で凄い人なのに、
とても魅力的に見えます。実際に海外に行った
ことは無い癖に。長レスすみません。
奈良の亀母 2009/01/18(Sun)17:50:15 編集
カルカッタの魅力
>亀母さん
こちらこそ、忙しいなかを訪問してくださって、おまけにこんなすごいコメントまで書いてくださって、ありがとうございます!! 亀母さんに参考にしていただけると、わたしもレビューを書く励みになります。
基本的に新作中心、めずらしいものもありますので、もしかしたら手に入りにくい作品があるかもしれません。できることなら、みなさんと共感したいんですけどね…
「カーリーの歌」は、まさかの残酷さでしたよね。赤ちゃんを愛らしく描いていたぶん、ずいぶんひどいことするなあと思ったものです。
第三世界の大都市の魅力、やはり人々の活気にあるのだと思います。われわれのような憂鬱ややる気のなさはどこ吹く風で、バイタリティにあふれてますもんね。でも、賑やかな外観の奥の奥には、おぞましい身分差別、性差別もあったりして…
なかなかわたしたちには理解できない世界です。でも、非常に魅力的だというのはすごくわかります。
旅番組(ナレーターが出てこないもの)はわたしも好きで、外国の風景はとても刺激を受けますよね。
ななみ 2009/01/18(Sun)23:35:04 編集
カーリーの歌
ブク〇フで購入して学生のサンジェイとの独白部分まで読んだのですが、外出先でなくしてしまい大ショックでした。。。(涙)
また再び本と再開できるのを楽しみにします。
ダン・シモンズは「ハイペリオン」から入りましたが「愛死」「サマー・オブ・ナイト」「カーリーの歌」と傑作が多いですね。「エンディミオン」シリーズは「ハイペリオン」の続編ですがいまいち合わなくて途中挫折です。
クロケット 2009/01/20(Tue)00:53:46 編集
シモンズ
>クロケットさん
それはなんて気の毒なお話!!
一度手に入れた本を失くしちゃうほど、惨めなことはないです。(…わたしは以前、ジェームズ・ハーバートの「奇跡の聖堂」でおなじことをしました)。
でも、復刊もされたみたいですし、必ずまたご縁がありますよ!欲しいなあー、と思っていたら、ひょっこり目の前にあらわれてくれるものです、書物って。
「ハイぺリオン」シリーズはたぶん全部揃えていると思いますが、わたしも途中から読んでいません…
あ、でも、いずれ必ず読みます!
…なんですけど、シモンズはもともと中編作家なんでしょうね~(長編になると、ちょっとキツイですかも…)
ななみ 2009/01/20(Tue)23:38:43 編集
見つかりました。
外出先でなくしてしまったと思っていたのですが、自宅で見つかりました。本の神様がまた引き合わせてくれたみたいです。
ジョー・ヒルの短編集と「死霊たちの宴」というゾンビものの短編集を読んでいるのでしばし中断です。
ところで私も暫定版ブログをつくってみました。さしつかえなければリンクお願いします。
クロケット URL 2009/03/14(Sat)21:34:26 編集
ついに!!
>クロケットさん
やっぱり本の神さまはいましたね。見つかってほんとうによかったです。たぶん、本のほうがクロケットさんに最後まで読んでもらいたかったんでしょうね♪

クロケットさんのブログ、拝見しました!!
さすがなラインナップと品のよい雰囲気、本も充実していて、これはもう、映画好きには見過ごせない濃い内容になりそうですね!
わたしは以前から、クロケットさんはすごい映画通だなと思っていたので、非常に勉強になりそうです。知らない作品もきっとたくさんあると思います。
リンクさせていただきましたので、今後もよろしくお願いします。
あと、『死霊たちの宴』は粒ぞろいのアンソロですよ♪
あれをはじめて読めるなんて、うらやましいです…
ななみ 2009/03/16(Mon)00:00:35 編集
インド
ちょっと前の話になりますが読み終わりました。
読み終わった後は衝撃で(「セブン」以来の)ドーンという気分でした。でもなかなか面白かったです。

本日「スラムドッグ$ミリオネア」を見てきました。今年のナンバー1になるほど良かった映画です。本作ではムンバイのスラム街が出てきますが、「カーリーの歌」での悪夢のような街の実写版といった趣がありました。インドの裏社会も出てきます。お勧めです。
クロケット URL 2009/05/11(Mon)01:22:24 編集
「スラムドッグ・ミリオネア」
>クロケットさん
「スラムドッグ・ミリオネア」、わたしも観たいと思っているんですよ。ちょっと前にショッキングなニュースもありましたもんね。
スラム街の子供たちとか、裏社会とか、過酷な条件で生きている人たちを見ると、かなりへこみます。でも、知らないままでいるのもまぬけになっちゃいますよねー。
クロケットさんのナンバー1認定なら、ぜひ観たいです!
それから、『カーリーの歌』読破ですね。おめでとうございます。ひどい結末ですけど、シモンズのなかではいちばん好きな作品かもしれないです。
ななみ 2009/05/13(Wed)00:13:09 編集
無題
隣町に新しい図書館が出来て、行ってみたところ
館員さんの趣味なのかSFやミステリ、幻想文学が
充実しているのです!早川文庫や創元文庫は
殆ど無いのですが、早川書房のハードカバーは
置いてありました。あと河出書房の「洋梨型の男」
とかもあって!「ハイペリオン」と「エンディミオン」の
シリーズを借りて読んでいるところです。
店の手伝いがなけりゃ、空いている平日に行ける
のによう・・・。シモンズ様の最近の作品は国語や
社会科の授業を受けているみたいで「イリアム」とか
挫折しました。シェークスピアとかの素養がないし。
奈良の亀母 2010/01/31(Sun)16:46:40 編集
いーなー!
>亀母さん
すてきな図書館じゃないですか、うらやましい~!!
図書館は絶版書が置いてあるのが、いちばん便利ですよね!わたしもよく利用します。
やっぱり司書さんの趣味が影響するんですかね?ほんとにいいなあー、わたしがそこにいきたいくらいです。
「ハイペリオン」シリーズは人気作ですからねー、
あれ、まだ終わってないんでしたっけ…?
シモンズは文学的すぎちゃうと、わたしも苦手です。いまいちなにをいいたいのか、わからなくなっちゃいますよね…?
それとも、わたしの理解力が乏しいだけですか?
話は変わりますけど、最近の本屋さんは椅子が置いてあるのが居心地よくていいですよね♪
ななみ 2010/02/01(Mon)20:32:06 編集
ハイペリオン
ななみさん、亀母さん、こんばんわ。
「ハイペリオン」はホラー要素もあって(謎の生命体シュライクは全身が刃物に覆われていて「ヘル・レイザー」のよう。)なかなか楽しめました。
「エンディミオン」は「ハイペリオン」ほどははまれず挫折中です。
最近は筒井康隆氏が編纂した珠玉のホラーアンソロジー「異形の白昼」を読んでいます。これはいずれの作品も怖い!お勧めです。
あとは「ぼっけえ、きょうてえ」の原作本をブクオフで買いました。
クロケット URL 2010/02/01(Mon)22:33:16 編集
きょうてえ
>クロケットさん
「ハイペリオン」、おもしろかったですよねー♪
シモンズはいつも長すぎちゃうのが玉にキズ…なんですが、いい作家さんですよね。
「異形の白昼」はいい短編集です!わたしもときどき読みかえしています。
あと、岩井志麻子さんは、わたしもつい最近買ったばかりですよー!まだ積んでるだけで、タイトルは忘れちゃいましたけど…
「ぼっけえ、きょうてえ」もこわい本でしたね~
最近、角川からスター作家さんがあらわれないのが残念です!
ななみ 2010/02/02(Tue)20:44:42 編集
ハイペリオンが一番面白かった!
ななみ様、クロケット様、シモンズにドップリ浸かった
一週間でございました。
キーツという詩人が大変重要なキャラなのですが
「詩人?キーツ?誰それ?」という感じで教養の
無さが・・・。シュライク様もっと出てきて!
エンディミオンの方は「好き好き大好きアイネイアー」
で四十路のおばさんは、あてられてしまいました。

奈良の亀母 2010/02/04(Thu)13:05:15 編集
ハイペリオン
>亀母さん
一週間で読みきってしまいましたか、さすが亀母さん!
「ハイペリオン」はだんだんマニアうけ(?)する内容になってっちゃいましたよね。まあ、おもしろいんですけど。
キーツはスミスの曲を聴いてから、たまーーに読んだりします。でも、イエイツのほうが好きですかね。
来週からはだれの本をご覧になるんでしょう?
いいですね~、ほんとうらやましい!!
図書館て、冬の暖かい窓辺とかすてきですよね。
ななみ 2010/02/04(Thu)20:16:24 編集
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ななみといいます
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女性
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 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

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〈苦手かも…〉
 かます、説明書、道案内、カマドウマ、狭いところ、壁がすんごい目の前とか、渋滞、数字の暗記、人ごみを横切る、魚の三枚おろし…
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