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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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    Case 39



(2009)アメリカ・カナダ
出演…レネー・ゼルウィガー
ジョデル・フェルナンド
イアン・マクシェーン
監督…クリスチャン・アルバート
★★★


〔ストーリー〕
 福祉施設の児童相談所で働くエミリーの仕事は、虐待のうたがいのある家庭から子供を救いだすこと。39番目に彼女が担当することになったのは、貧しい家に両親と暮らすリリスという少女。いたいけなく、純粋な彼女は、いつもなにかにおびえている様子。エミリーは彼女の家をたずね、両親から話を聞くことする… しかし、ふたりは不気味な雰囲気で、エミリーはなにか問題があると直感をするのだが…


 じつはわたし、まだ「Orphan」「エスター」2009)は観ていないんですよ。一応内容は知ってるんですけどね…その「エスター」そっくりなプロットに、たぶん、こっちは公開がむずかしいんじゃないかと思います。「Silent Hill」「サイレント・ヒル」2006)「Tideland」「ローズ・イン・タイドランド」2004)の美少女、ジョデル・フェルナンドちゃんが出演しています。

 「Pandorum」(2009)がとんでもなくおもしろかったので、期待しながら観ちゃったのですが、あれ? こっちはわりとふつうな出来でした。まあ、チャイルド・ホラーって、簡単そうに思えてむずかしかったりするみたいなんですけどね。こちらは “虐待” という深刻なテーマをとりあつかっているものの、あんまりそっち方面にストーリーが進みません。そこがちょっと残念でした。

 エミリー(レネー・ゼルウィガー)は福祉施設につとめるソーシャルワーカー。彼女の仕事は虐待の疑いがある家庭をたずね、悲劇が起こらないように子供たちのサインを発見すること。彼女が39番目に担当したのは、リリス(ジョデル・フェルナンド)という美少女だった。

 リリスは愛らしく、賢そうで、ひと目で彼女に心を奪われてしまうエミリー。両親のエドワード(カラム・ケイス、レニー)、マーガレット(ケリー・オマリー)は態度がおかしく、あきらかになにかを隠している様子。家を訪ねたエミリーは、ふたりの挙動不審さとリリスのおびえた様子に、彼らからもっとくわしく話を聞こうと、施設に話しあいの場を持ちます。

 すると、上司の前だととたんに態度がガラリと変わり、快活に、ひとあたりよく話すエドワード。エミリーはリリスがかわいそうで、守ってあげたくて、両親が目をはなしたすきに彼女から話を聞こうとします。やっとリリスが真実を話してくれそうになった、そのとき… エドワードがもどってきて、無言の圧力をかけちゃいます。結局リリスは黙りこんでしまいます。

 それでも彼女が気になるエミリー、学校帰りを待ち伏せて、電話番号をわたします。「なにか困ったことがあったら、すぐに電話をかけてきて!」 そして、その夜彼女から連絡が。エミリーの予測どおり、おそろしいことが起きようとしていたのです…!!

 ジョデル・フェルナンドちゃんは幼いと同時に、妙に大人っぽい表情をするときがあって、不思議な魅力の子です。リリスの役にはぴったりだと思うんですけど、思ってたほど彼女の個性が発揮されていないような? もっとはっきりいっちゃうと、彼女をもってきたことに頼りすぎているようなー?

 こういうのって、つぎにあのひと、そのつぎのあのひとと、犠牲になるキャラクターが決まっちゃってるので、たとえば殺害方法を工夫したり、残虐度をあげたりと、多少工夫しないとそれほど盛りあがらないんですよ。「The Omen」「オーメン」1976)の首チョンパはすごかったでしょう? あれくらいインパクトがないと!!

 エミリーの恋人にカウンセラーのダグラス(ブラッドリー・クーパー)、相談役の刑事さんにマイク(イアン・マクシェーン)。かわいくていたいけなリリスが徐々に不気味になっていくのはおもしろいんですけど、正体がいまいちなあ~ あ、でも、ラストはわかりやすくて好みなんですけどね

 たぶん、インパクト度では 「エスター」 に負けちゃってるかと思いますが、ちょびっと大人になったジョデルちゃんを見れただけでもよしとしましょうか。












かわいいですねー
大人になったらどんななっちゃうのやら!








こわがらないで、
ほんとのことを話して
いいのよ!









不気味な両親…
彼らのねらいは??









この子だけはぜったい
守るんだから!









ぎゃー!!
つかまった母親の顔が
たいへんなことに!!








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    Trick 'r Treat



(2008)カナダ・アメリカ
出演…ディラン・ベイカー
アンナ・パキン
ブライアン・コックス
監督…マイケル・ドハーティ
★★★☆


〔ストーリー〕
 ハロウィンの夜につぎつぎ起こる怪異!!お祭り騒ぎに沸きたつ小さな町を舞台に、5つのストーリーが同時進行でおこなわれるオムニバス… というか、グランドホテル形式のホラー。

 
 評判がすこぶるいいにもかかわらず、時期をのがしてしまったのか? あるいは、目玉となる売りがなかったから? DVDスルーになってしまった作品です。しかーし、たぶん、多くの方がチェックされてると思いますが、これはおもしろーい。

 プロデューサーが、「X-メン」シリーズでお馴染みのブライアン・シンガーです。「The Usual Suspects」「ユージュアル・サスペクツ」1995)は、とんでもなくおもしろかった…! あの作品で、ケヴィン・スペイシーが人気者になったんですよね。わたしはガブリエル・バーンのファンになりました。

 マイケル・ドハティは、シンガーの「スーパーマン・リターンズ」(2006)の脚本をつとめた方です。それで、今回これが監督デビューとなったようです。シンガーがからんでいるだけあって、ひと筋縄ではいかなくておもしろい。邦題では、「ブライアン・シンガーのトリック・オア・トリート」なんてつけられちゃってますが。

 オムニバスといいましても、グランドホテル形式のようになってまして、ひとつひとつのストーリーがちゃんとうまいこと絡みあっている。そのため、オムニバスにつきものの、もたつき感、モヤモヤ感がいっさいなし!これはかなり優秀なオムニバスの部類に入るんじゃないですかね。

 オープニング、夫婦がちっちゃなパンプキンくん(サム)に襲われるところからはじまります。このパンプキンくん・サムを演じる男の子、非常に愛らしくて、のちにのぞきっ子としても登場します。お姉さんの着替えシーンを、「ワオ! ホーリーシット!」とささやくので、すぐわかるかと思います。

 まず、1話目。
 地元の校長のスティーヴン(ディラン・ベイカー)の家に、メタボな少年がお菓子をくすねにやってきます。しかし、運悪く帰ってきたスティーヴンに見つかっちゃいます。「お菓子はひとつって、そこに書いてあったろ!」と、怒られるメタボ少年。そしてさらに運の悪いことに、スティーヴンには刺激的な秘密があったのです…

 2話目。
 メイシー、サラ、シュレイダー、チップの4人のいたずらっこは、一風変わった女の子ロンダを誘って、町はずれの湖にむかいます。ワガママ娘のメイシーが語るには、そこには数十年前、問題児たちを乗せたバスが転落するという悲劇があったそうなのですが…

 3話目。
 ローリー(アンナ・パキン)は姉たちの友人と一緒に、赤ずきんの衣装をつけて仮装パーティーにむかうところ。しかし、姉のダニエル(ローレン・リー・スミス)に挑発されて、今夜運命の相手を見つける決心をすることに。姉たちが森のそばでパーティーをするころ、ひとり町に残ったローリーは、運命の恋人を探そうと歩きまわるが…

 4話目。
 変わりもののいじわるじいさん、ミスター・クリーグ(ブライアン・コックス)は、子供たちを脅しては逆にお菓子を奪っちゃういけない老人。ハロウィン? くだらん! 暖炉で古い写真を燃やしていると、庭のほうから不思議な物音が聞こえてきて…?

 残酷描写は皆無にひとしいんですが、なかなか罰あたりで不道徳的なシーンもてんこもりでして、楽しいですよー

 なにより、一見ばらばらに思える物語がひとつにつながっていくことは、これ、オムニバスのいちばん大事なこと!ひとつひとつのお話も楽しいし、意外な結末も待っていたりして、すてきなハロウィン気分が味わえます。い~な~、お菓子の山とか、ジャック・オ・ランタンとか、子供でなくたってわくわくしちゃいますよ! クリスマスなんかよりも、ハロウィンが日本に定着すればよかったのに…

 アンナ・パキンが登場するとのことだったんですが、わたくし、最初に彼女が画面に出てきたときに気づきませんでした。いえ、変わらず美人さんなんですけど、あんなにかわいかった娘が、いつの間にかすっかり大人になっちゃって… そんな感じです。どのお話も基準値が高く、楽しいんですけど、とくに狼男のストーリーがイカしております。

 クレジットがコミック・ブックスになっていて、「Creepshow」「クリープショー」1982)を意識しているのは明白なんですが、これはひょっとすると、「クリープ」より質が高いかもしれません?
 ラスト、サムの正体がちゃんと説明できるようになっています。これはだれが観ても楽しい気分になれるオススメ作です!









ローリー(左)は姉の挑発
に乗って、恋人を探す
ことに…











メタボ少年と、
スティーヴン。








ハロウィンの日、この町
にはとある悲劇が
ありました…











ランタン頭のサムくん
の正体は…??















メイシーたちはロンダを誘いだしますが…







    Like Minds



(2006)オーストラリア・イギリス
出演…エディ・レッドメイン
トム・スターリッジ
トニ・コレット
監督…グレゴリー・J・リード
★★★


〔ストーリー〕
 富裕な子息ばかりを集めた全寮制学校で、ひとりの生徒が死亡する。その場に居合わせ、友人でもあったアレックスは学長の息子。黙秘をつづける彼の心をひらかせようと、心理学者のサリーが尋問することになるのだが… やがて、死んだ生徒ナイジェルとアレックスの異常な関係が浮かびあがってくる…


 こちらも、以前から気になっていた作品のひとつ。
もう、こういう題材って女子にはたまりませんよねー。無条件で気になってしまいますよ。だって、寄宿舎! 悩める美青年! 謎めいた転校生!! …ふう、ちょっと興奮してしまいました。天使な笑顔のエディくんと、ミステリアスなトムくんが共演した青春ホラーです。

 
 タイトルにもなっている 「ライク・マインド」 とは、あんまりいい意味で使われることがない言葉みたいです。たとえば、ネオナチとか白人至上主義とか、そういう偏った考えのひとにむかって使われるニュアンスがあるようです。
 ジャンル的にはクライム・サスペンスになってますけど、完全にホラーでした。まずは、ストーリー説明から。

 アレックス(エディ・レッドメイン)は全寮制学校の生徒、父は学長という筋金入りのお坊ちゃま。科学オタクのジョシュ(ジョン・オヴァートン)、アラブ系のラジ(アミ・シャア)とつるんで、ささいないたずらをくりかえしておりました。アレックスはそれなりに特権があるので、部屋もひとりで使っています。

 そこへ、季節はずれの転校生がやってきます。黒髪のナイジェル(トム・スターリッジ)は妙に落ち着いている雰囲気のへんなやつ、アレックスは食事中にぬけだして、部屋にもどってナイジェルの荷物を勝手にひらいちゃいます。するとそこには、動物の剥製が…!

 うげー、やっぱりへんなやつと、一度はひくのですが、ナイジェルの妙に落ち着いた態度、部屋にもどるたびに不気味な解剖や生物学の研究をしていたりして、どうしても気になってしまいます。研究内容をこっそり持ちだしてジョシュたちに見せると、彼が驚くほどの秀才だということもわかります。

 しかし、いくらちょっかいを出しても、面倒くさそうにあしらわれてしまうアレックス。よし、ここはいっちょう、あのおつにすました顔をひと泡吹かせてやるか! と、寝ているナイジェルにクロロホルムを嗅がせて、ジョシュたちと深夜の列車に連れていくのですが…

 あのですねー、エディくんもいいし、トムくんも不気味な雰囲気がよく出てるしで、非常に期待しながら観てしまったのですが、なんといいますか、肝心のふたりの関係がサラッとしか描かれないのが残・念!!
 あ、もちろん、ストーリー的にはちゃんと描かれてますよ。知的ミステリなホラーになっています。でも、全寮制、惹かれあう男子とくると、その方面を期待しないほうが無理でしょ、でしょ!!

 なのに、アブノーマルさはほんのさわり程度でして、ほのめかすくらいにしか描かれていません。そこまで上品にしなくても。この監督さん、いちばん大事なことがわかってないな~、観客だっていちばんそれを期待してるのにと、勝手に文句をいってみましたが。

 心理学者のサリーは、トニ・コレットが演じています。この女優さん、役柄によってガラリと変わるからすごいですよね。本作では美貌の心理学者を演じていて、物語に華をそえています。
 でも、いちばんの見どころはやはりエディくんでしょうね。うんうん、見てるだけで癒されちゃいますから。一方トムくんはというと、神秘的な顔立ちが魅力的。ナイジェル役にはまっています。まったくタイプのちがうふたりが、この後どんな感じにライク・マインドしちゃうのかというと…??

 個人的には非常にものたりなかったのですが、エディくんには癒されたので、今回は甘めの採点
 あと、イギリス映画ってドラマ作りが丁寧ですから、よほどのことがないかぎり外すことはありませんね。











癒されますー
エディ・レッドメインくん。










気品がある顔立ちの
トム・スターリッジくん。










殺人の嫌疑をかけられたア
レックスと、サリー。









すました態度が気にいらず、しょっちゅう
ナイジェルにちょっかいを出すアレックス
ですが…







アレックスの話を信じて、
秘密の研究室を訪れて
みると…?








    Paintball



(2009)スペイン
出演…ブレンダン・マッケイ
ジェニファー・マター
パトリック・レジス
監督…ダニエル・ベンモイアー
★★☆


〔ストーリー〕
 森のなかでサバイバル・ゲームを楽しんでいた男女8人。ゲーム主催者は彼らにそれぞれ無線で指示をだして、ときどきチェックポイントに立ちよったり、アイテムをゲットするという仕組み。最初に古ぼけたバスで手に入れたのは、防弾ジャケットひとつきり。これだけ? と、ほとんどの者は興味をしめさない。だが、その直後に突然ジャケットを着た男性が実弾で胸を撃たれて…!!


 きのうの「District 9」(2009)の破壊力がすごすぎまして、たぶん、いまなにを観ても負けちゃうんだろうな~ ということで、「サバイバル・フィールド」などを観てみましたー。

 ええっと、「Rec」「レック」2007)で調子づいたスペインホラーが、似たような手ブレ感ありあり映像でサスペンスを撮ったといった感じです。で、その手ブレ感ありありさを、宣伝部は “新感覚” とのたまっているようですが…

 今回は簡潔にいきましょう!

まず、ちっとも新感覚ではなく、ごくごくフツーのサスペンス映画です。
思っていたほど悪くもなく、そこそこ楽しめる内容でした。
物語が一直線だから、途中のトイレ休憩も余裕でOK!
いちばんのポイントは、い~ 感じにイラッとする映画ってことですかね。

 内容を簡単に説明しますと、能天気な男女8人(← 名前をおぼえる気もまるでなし!)がサバイバル・ゲームに参加してまして、そこに実弾ライフルを持った殺人鬼がやってきた!! ただそれだけのお話。

 この男女8人がまた、全員バカばっかりでして、適度にイライラしまくれますよー。なんにもないところで転ぶわ、仲間割ればっかするわ、大声で喋るわ、移動中も自分の銃器を構えながら行動するわ… って、それ実弾じゃないんだから、そんなことしたってしょーがないじゃん! と、つっこみたくなるのはけしてわたしだけではないはず。そんなですから、当然共感できるはずもなくて、さっさと全員撃たれちゃいなYO!! と、思ったところで、犯人もそれなりに不気味な行動をしてくれます。

 えーと、結末もよくある感じでして、ひねりもへったくれもなく、かといって、犯人像もサイコにしたかったのか? 殺人マシーンにしたかったのか? どっちつかずで残念でした。
 まあ、それなりに楽しめるんですけどね。そこそこ楽しめる作品なんですけど、「The Killing Room」「実験室KR-13」2009)といい、「Paranormal Activity」「パラノーマル・アクティビティ」2009)といい、最近の劇場公開の基準がよくわかりません!

 もっとおもしろい作品がたくさんあるはずなんだけどな~… そう思ってるのはわたしだけでしょうか…? 暇つぶしに観るぶんにはいいと思います。











サバイバル気分で森
を歩いていると…








あーっっ、
撃たれた!!!








はひはひ、
なんでこんな目に~!









ギャーギャー泣いてても、
しょうがないから!







← んで、やっと覚醒。
生き残るためならなん
だってするわよ!!







    District 9


(2009)アメリカ・ニュージーランド
出演…シャールト・カプレイ
ジェイソン・コープ
ナタリー・ボルト
監督…ニール・ブロムカンプ
製作総指揮…ピーター・ジャクソン
★★★★☆


〔ストーリー〕
 1982年、南アフリカ上空に巨大な円盤型UFOがあらわれる。しかし、UFOからは攻撃もなければ、友好のしるしもない。しびれをきらした人類が内部に潜入すると、そこには昆虫と甲殻類をあわせたような、エイリアンたちがいた…
 この宇宙船、制御不能になってエイリアンたちもどうすることもできず、すっかり衰弱していた。人類は寛大処置をしめそうと、“District 9” という居住地区をあてがい、隔離する。しかし、居住地区とは名ばかりで、食糧もとぼしく、しだいにスラム化してしまう。民間軍事請負企業でエイリアン対策本部の 〈MUE〉は、新たな居住地 “District 10” に彼らを移そうとするが… その任務をになうことになったのは、ウィッカスという男だった…


 やっと観ました。各種メディアから大絶賛されてまして、どれくらいすごいんだろうと思いながら観たのですが… ほんとにすごすぎて、椅子から転げ落ちそうになりました!! この世界観はヤヴァイです。しばらく抜けきれなくなります。

 たぶん、いろんな方がすぐれたレビューを書いていると思います。だから、わたしがいまさらくどくどいう必要もないんですが。まずは、監督さんの紹介でも書いておきますか。

 ニール・ブロムカンプは南アフリカ出身の若手新鋭です。ピーター・ジャクソン監督に見いだされ、大ヒットゲームの映画化 「Halo」 を撮る予定でした。ところが、これが見事に頓挫。ハリウッドに失望したジャクソン監督は、「じゃあ、おれたちでもっとおもしろいのを撮っちゃえばいいじゃん!」 と、企画したのがこの作品。

 そのため、お金もそんなにかかってないのです。役者さんたちもほとんど無名。いちばん驚いたことには、主演のシャールト・カプレイ、じつは完全な素人さん!! なんでも、ブロムカンプの友人なんだそうです。それであの演技力とアドリブ… もう、ほんとど~なっちゃってるのやら!

 驚きついでですが、この作品はモキュメンタリーにドラマが入れ子状態になっています。モキュメンタリーというと、「うさんくさい」 を合い言葉に批評してきたわたくしですが… こんなに硬派なリアリティが出せるものだとは、思いもしませんでした!!! とーっっっても反省しております!!

 ストーリーは、80年代の南アフリカに巨大宇宙船がやってきたというところからはじまります。この宇宙船、とんでもなく大きく、人類は脅威におののくんですが、宇宙船からはなんのアクションもありません。あれ? どうしたの? 宇宙戦争は? 親善大使は? と、人類のほうから宇宙船に乗りこんでみると…

 そこには、昆虫ぽいエイリアンたちが病気になりかけておりました。なんとエイリアンたち、宇宙船が動かなくなってしまい、仕方なく地球にやってきたのですね。

 で、その容姿からうかがうに、知性はなさそう、なんか、敵ではなさそう! などと、人類は勝手に思いこむわけです。ついでに、ここはおなじ宇宙人として友好的にならねばと、隔離地区を用意します。

 でもほんとは、あんなすごい宇宙船を持ってるんだし、武器も並外れてすごかったり。全部没収しちゃうんですけど(予備対策とかいう名目で)、ほんとは彼らがこわかったんです。彼らの知性がこわかったんですね。でも、その武器は人間には使えないものでした。

 エイリアンたちは最初はぎょっとする容姿ですが、見なれてくると、哀愁を帯びた目が同情をさそいます。“District 9” とは、アパルトヘイト時代にじっさいにケープタウンにつくられた “District 6” をモデルにしています。簡単にいってしまうと、政治で人種差別を合法にして、そこには白人の特権を守るというねらいがありました。ですから、痛烈な社会メッセージもこめられているのです。

 外国人監督というと、やはり表現するメタファーが圧倒的に強い。劣化コピーばかり生みだしちゃうハリウッドとはちがって、彼らにはどうしても表現したいメッセージがあるんでしょう。この作品はブロムカンプの才能もさることながら、環境に恵まれた幸運もあったのだろうなと思います。だってジャクソン監督だって、「Bad Taste」「バッド・テイスト」1987)で一部マニアを熱狂させて、「Braindead」「ブレインデッド」1992)のメジャー・デビューでハリウッドの度肝を抜いたんですから。

 なんだかんだで、こんなにくどくど書いちゃいましたが、わたしたちはこの才能の誕生を目撃できたことに感謝しましょう!! まだ29才だそうですよ、は~へ~、これからどんな作品を撮っちゃうのやら…

 あまりにクオリティが高すぎまして、ここ最近観たおもしろかった映画がみんな吹っ飛んじゃいました。あわわ…













巨大宇宙船の到来! これだけ見ると、ふつうのSF映画のようですが…












ウィックスを演じるのは、これがほんと
に最初の役者経験だというシャールト・
カプレイ。
いま、映画界がもっとも注目する男!









インチキくさい銅像が
立っておりますが。







あのー、すいません、
ここにサインをお願い
します。








悲しい顔のエイリアン…








ついには武力行使と
なってしまいます…!!








    Mutants


(2009)フランス
出演…エレーヌ・ド・フージュロル
フランシス・ルノー
ディダ・ディアファ
監督…デヴィット・モルレ
★★★


〔ストーリー〕
 脅威的なウィルスが蔓延する世界。感染した者は凶暴なモンスターのようになって、正常者たちに襲いかかる。救急救命士のソニアとマルコは怪我人を救おうとするが、噛みつかれた犠牲者は容赦なく射殺されていた。潜入した建物で、ウィルスに感染した少年を発見。だが、少年はまだ正気を保っていて、マルコは彼を撃つことができない。行動をともにしていた女性警官は怒り、発砲。少年の返り血を浴びてしまったマルコは…?!


 フレンチ・ゾンビの「フェーズ7」です~
 最近のフレンチ・スプラッタのエッジ効きまくりには、ほんと目を見張るものがありますが… 今回はそれらのスプラッタとくらべると、すこーしおとなしめ。ですが、かなりおもしろかったです。「28 Weeks Later」「28週後…」2007)をフランス版で、パーソナルな物語にリメイクしてみた! そんな感じの内容です。

 考えてみれば、ロメロとサヴィーニが80年代ホラーファンを狂喜乱舞させて、そういうものにどっぷり浸かって青春時代をすごしたひとが、〈バイオ〉なんかを作っちゃって、これまた世界的に大ウケ、とうとう走るゾンビが誕生したんですが。

 本作もそんな進化型ダッシュ・ゾンビ、スリリングにできてます。新生ゾンビはやはり、スピード感が命ですよね! 「28週後…」ほど悲壮感はないにしても、これが個人的な物語に掘り下げてまして、思いのほかよい出来でした。

 ソニア(エレーヌ・ド・フージュロル)とマルコ(フランシス・ルノー)は恋人同士、ふたりとも救命士なんですが、世界はひとをゾンビ化させちゃう “レイジ” のようなウィルスにさらされ、まさしく終末状態。感染者がなぜ “ミュータント” と呼ばれるのかというと… ラストでわかるようになっています。

 彼らは女性警官とともに行動をともにしているんですが、なかなか生存者にめぐり会うことはできません。やっと人気があったと思ったら、それもまた感染者。しかし、感染にも段階がありまして、最初のうちはちゃんと意識を保ってるんですね。で、自分でもコントロールが効かなくて、本人にもかなりこわいことなんだろうし、見ていてとってもかわいそう。

 マルコはとある少年に同情したばっかりに、とばっちりをくっちゃいます。警官が少年の頭を吹っ飛ばしたときに、返り血をもろにかぶっちゃいまして、ソニアがあわてて警官に逆発砲。マルコはなんとか命が助かりますが、もはや感染の疑いはないのでした…

 前半、しだいに正気を失い、身体を冒されていくマルコと、献身的につくすソニアの物語。これがじっくり描かれてまして、愛ですよね~、究極の愛。でも、これはウィルスというより、単純に癌患者とその近親者の物語のようでもあって、心苦しいです。ゾンビというと鬼ゴッコが基本ですが、感染者に焦点をあてたのははじめてかもしれないです。で、それほど重くならず、エンタメとしても高めに成功している。

 後半から登場人物が増えまして、基本ルールの鬼ごっこが入ってきますが、ヒロイン・ソニアの人間性が出ていてよかったです。愛のつぎはエゴですよ、エゴ! 人間、そううつくしいだけではいられないんです!!

 冒頭からもテンション高めでして、ハラハラさせる展開もうまいです。フランス、なんでも持ってっちゃうな~と、最近のアメリカ・ホラー業界は脅威を感じているかも?

 “ミュータント” と呼ばれるゆえんですが、その最終形態にありまして、“レイジ” なんかよりもおそろしいことになっちゃってます。それでも相手が愛するひとだと、なかなかとどめがさせないのですよ… 反対に、どーでもいい相手にたいしては、どーでもよかったり(笑)。そのへんの人間性がリアルかなと思いました。見ようによっては、ソニアはド悪女かもしれません。正気と狂気の境を曖昧に描いている点もよかったです。これはオススメな力作!!












無人の建物にとじこもる
ソニア。








感染者の血を浴びて
しまったマルコ!









献身的に看病をつづけ
るのですが…








症状はどんどん進んで
しまいます…







ぎゃー!!
とうとうこんな
なっちゃった!








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(いちおう)プロフィールです
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ななみといいます
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女性
自己紹介:

 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

〈好きかも♪〉
 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
 かます、説明書、道案内、カマドウマ、狭いところ、壁がすんごい目の前とか、渋滞、数字の暗記、人ごみを横切る、魚の三枚おろし…
ねこじかんです

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