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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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    Frontiere(s)



(2007)フランス/スイス
出演…カリーナ・テスタ
オレリアン・ヴィイク
パトリック・リガルド
監督…グザヴィエ・ジャン
★★★


〔ストーリー〕
 パリ暴動に乗じて、強盗を犯した若者たち5人のグループ。仲間のひとりがひどい怪我を負ったために、2台の車にわかれて逃亡することに。怪我人を乗せたヤスミンとアレックスの車は、病院にむかう。一方、トムとファリドの車は、国境付近の宿であとのふたりを待つことにする。だが、その宿にはおそろしい秘密が隠されていたのだった…!


 「Hitman」(2007)のグザヴィエ・ジャン監督のデビュー作です。
あらすじを読んでおわかりのように、例によって例のごとく、アノお話です。ありきたりですねー。飽き飽きですよねー。そう思いながら観はじめましたこの作品、ちょっとした不安もありました… だって、

 おフランスなんですもん!!

 フランス産ホラーというと、「Haute Tension」「ハイテンション」2006)。おもしろかったですねー。それにつづけとばかり、強力なものが撮られるようになりました。フランスは、アメリカやイギリスよりも、ホラー映画にたいする考え方(主に、マイナスな要素のほうですが)が、ちがうのでしょうか…? いくぶん、といいますか、多分に、規制がゆるい感じがするのですがっ!

 その代表格として、トラウマの記憶も新しい、「A L' interieur」「Inside」2007)。この作品、ホラー初心者は観ちゃダメです。中級者でも微妙です。上級者のみ、安心してオススメすることができます(…といっても、トラウマになっても、責任はいっさい持てませんよ~!)。

 そんなこんなで、おフランス・ホラーはシャレにならないくらい強力すぎるものがあるので、「油断しちゃなんねえ!!」 と、思いながら観ましたこの作品、やっぱりやっぱり、おフランスでした…(ひーん!)

 こわいよ~、痛いよ~、残虐非道だよ~!! の三拍子が見事揃った、怪作となっています。
 ストーリーはいたって簡単、世の中を舐めきった若者たちが犯罪をおかし、逃亡を図るんですが、アノ人たちに捕まってしまうまえに、さっそく因果応報な痛手を受けてしまいます。運悪く重症を負った仲間が、あっさり亡くなってしまうんですねー。
ここで警察に捕まっちゃえばよかったものの、がんばって逃げます。そして、アノ一家たちが暮らすホテルへ…!

 この犠牲となる若者たちというのが、ごくフツーの無邪気な青年たちなので、ちょっと強盗したくらいでこんなひど~い目に遭うなんて、割りにあわないナー…(汗)、と考えながら観るのが正しい鑑賞法ではないかと、思います。

 例のアノ人たちですが、フリークではありません。これまた、(見かけだけは)ごくフツーの人たちです。けだるいおネエさんがいたり、アヤシイおじさんがいたりと、一応家族なんですけど、そこの「長」たるお祖父さんがまた、ガチガチのネオナチだったりします。生々しいですね~。ようするに、「人が人を殺す」映画なんです。おっかないですね~。

 近年のフランス・ホラーの特徴として、この“生々しさ” があげられるのではないかと思います。怪物でもない、フリークでもない、「生身の人間が生身の人間を襲う」、ここに異様なテンションと、究極の恐怖が生まれるようなんです。
たとえば、食糧貯蔵庫にずら~っと食糧さんたちがぶら下がってる光景など、「The Hills Have Eyes」(2006)で少しもの足りなかったわたしには、「そう、そう、こういうのが観たかったの!」と、思わずアツくなってしまいました。

 さすが「ヒットマン」に大抜擢されただけあって、この監督さんはカンも鋭いようです。ありきたりなストーリーながら、新鮮な映像とスピーディーな展開に夢中になること必至! かなり才能アリアリな雰囲気です。そして、ラストはホラー・ファンも納得の○○が…!

 けっこうな美女も、美男子も、無残にバッサバッサと殺されていく圧倒的なパワーには、たじたじになります。おそるべし、おフランス… おフランスといえばホラー、そういわれる日が近いかもしれませんね









けだるいオネエさんその1:
長女ジルベルト(エステル・
ルフェビュール)。
誘惑してますね~。







けだるいオネエさんその2:
次女クラウディア(アメリ・
ドーレ)。
ヤンデレ系ですかね?








こんな美少女も登場します。
末娘のエヴァ(モード・フォル
ジェ)。








パトリック・リガルド(役名カー
ル)の決まったポーズ! 
大事な食糧は逃がさんで~。







ヒロインのヤスミン(カリーナ・
テスタ)。食糧さんの陰に
隠れています。
ドキドキ…!!)







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   Diary of The Dead


(2007)アメリカ
出演…ジョシュア・クローズ
ミシェル・モーガン
エイミー・レイロンド
スコット・ウェントワース
監督…ジョージ・A・ロメロ
★★★★


〔ストーリー〕
 映画科の生徒8人と担当教授、あわせて9人のクルーが、深夜の森の中で自主制作ホラー映画 『Dead of the Dead』 を撮影していた。そんななか、ラジオで信じられないニュースを聞く者がいた。なんと、死体が甦って、生きている人間を襲いはじめているというのだ。はじめはだれも信じないが、不安にかられた監督のジェイソンは、恋人デボラがいる寮にむかうことにする…


 ロメロ監督の「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」です。
企画こそ一番乗りで、早くからその話題が伝えられていたものの、類似作品に次々追い抜かれてしまったロメロ監督… でも、待っていたかいがありました。
これは傑作の部類に入ると思います!
 
 1968年製作の「Night of the Living Dead」で、衝撃的なデビューを飾ったロメロ監督。死者が腐乱した身体で歩きまわる姿は、まるで体裁よく隠してきたベトナム戦争の犠牲者たちを描いているようでしたし、その死者たちを景気よくバンバン殺していく人間も、やっぱり殺戮になんの痛みも感じない、無感動な現代人を表現しているようでした…

 それで、この作品は、原点回帰の意味もあったんですね。
撮影期間はわずか20日足らず、もちろん、予算もきりつめられています。

 CAM映像、「ブレア・ウィッチ」的手法というと、比較的だれにでも撮れそうな
(…すいません、偏見ですね~)イメージがあるんですけど、この作品を観て、「ああ、やっぱりロメロの映画は、ロメロにしか撮れないんだなー!!」と、納得してしまいました。

 どういうことかといいますと、かなり、キッチリ、“映画” してます。そして、硬派です。なのに、ストーリーが進むごとに、とぼけたユーモラスが散見できて愛嬌があります。そして、やっぱり現代社会を風刺した強いメッセージ性もあります(ホラーという媒体で、ここまでできるなんてスゴイッ!)。

 ロメロのゾンビというと(基本中の基本ですが)、テロでも人災でもなく、むしろ、回避できない “自然災害” のような現象であるので、破滅の序曲に人々がなす術もなく、秩序が崩壊していくのを傍観していくだけ、という姿が非常に印象的で、説得力があります。

 主人公のジェイソン(ジョシュア・クローズ)は、「現状をありのまま伝えることで、各々が解決法を見つけるチャンスを得ることができるかもしれない」と、考えて、ドキュメンタリーを撮る決心をしますが…
これは、「情報操作」の痛烈な批判でもあるのですけど、また逆に、「ネットの危険性」についても明確に示唆するきっかけにもなります。

 こうした内容を、ビデオカメラで撮っていくんですが、これがいきあたりばったりの映像ではなくて、じつによく練られた展開だったり、構図だったりするので、ときに、「はっ!」とするほど詩的だったりします。(…とくに、死亡した恋人が生きかえるまで額を撃ち抜けない女性のシーンは、必見です)。あと、こんなこともいえますね。
“目にやさしい” です!(笑)。そのため、一般的に危惧されているような、カメラ酔いということは、まずないと思います。

 「28 Weeks Later」(2007)のような派手なドラマや演出が用意されているわけではありませんが、衝撃度はかなりのもの。この作品を観てしまうと、ほかのCAM映像的な類似作品が、稚拙に見えてしまうかもしれません。そして、この映画の続編なら、(登場人物・及び、社会がどんなふうに変貌していくのか)、ぜひ知りたい! という気持ちになりました…

 最後に、著名人たちがニュースを伝える「声」で特別出演しています。豪華なラインナップは、スティーヴン・キング、ウェス・クレイヴン、ギレルモっち、タランティーノ、サイモン・ペグ…
ロメロ監督ももちろん、チラリ出演しています。みなさんは見つけることができるでしょうか?










『Dead of the Dead』ですが、
非常にぬる~い映画です。
実現しなくて、かえってよかっ
たんじゃ…(笑)。




こちらがドキュメンタリーな撮影隊!
左から、アンドリュー(スコット・ウェントワース)、エリオット(ジョー・ディ二コル)、
トレイシー(エイミー・レイロンド)、ジェイソン(ジョシュア・クローズ)、
デボラ(ミシェル・モーガン)、トニー(ショーン・ロバーツ)。









ジェイソンは、どんなときでも
カメラを手放しません!









事故現場からフラフラ
歩いてくるのは…!








自殺を図った(!)仲間を助け
ようと病院にむかうと、そこ
にもゾンビが…!!














                       続編を匂わせてますけど、じっさいのところは
                       どーなんですか、ロメロ監督!!





    Doomsday


(2008)イギリス/アメリカ/南アフリカ
出演…ローナ・ミトラ
ボブ・ホスキンス
アレクサンダー・シティグ
ショーン・パトウィー
監督…ニール・マーシャル
★★★


〔ストーリー〕
 人類を全滅させるほどの威力をもった殺人ウィルス “リーパー” が発生、中心地となったスコットランドは、わずか数日で数百万人が感染してしまう。事態をおそれた政府は、スコットランドを強制的に隔離してしまう。
 それから25年後の2033年、ふたたび “リーパーウィルス” の猛威がふるう。追いつめられた政府は、ウィルス殲滅のカギを握るある男とコンタクトをとるために、専門チームを結集して送りこむ。そのメンバーのひとり、シンクレア少佐は、幼いころ母と生き別れになるという思い出があった…


 ニール・マーシャル監督の最新作です。
マーシャル監督というと、ぱっと思いつくのが、「Dog Soldiers」「ドッグ・ソル
ジャー」
2002)
「The Descent」「ディセント」2005)。非常に手堅い作品作りで定評な監督さんなんですが、この作品に関しては、評価がまっぷたつにわかれているようです。どういうところが二分される原因なんでしょう。ゆっくり見ていきたいと思います。

 あらすじを一読していただければ、もうおわかりのように、今回はホラーではなく近未来スリラー&アクションです。近年、こういった「世紀末もの」はほんとに多いですよねー。マーシャル監督も例に漏れず(笑)、いかにも、それっぽ~い渋いナレーションから幕を開けます。

 世紀末ものというと、なにより大切なのは重厚感
ということで、しょっぱなから非常に重たく、シリアスに進みます。ウィルスでパニクっちゃった一般市民を、兵隊さんたちはバンバン撃ちまりです。こうなってくると、逃げるが勝ち!な状況です。自分たちだけさっさと非難しちゃって、かわいそうな一般市民はあっさり見捨てられてしまいます。そうです、まるで「28 Weeks Later」(2007)ですね。もしくは、「Outbreak」(1995)か!

 それから23年後、今度はウィルス撲滅のために知恵がほしいといって、閉鎖されていたスコットランドが解放されます。役所の人が考えることは勝手ですねー。でも、23年間も放ったらかしにされていたわけですから、当然危険な無法地帯と化していました…!

 さて、ここで登場するパンクでアブナイ連中というのが、「Mad Max2: The Road Warrior」(1981)の悪役のようです。この人たちの狂乱ぶりやどぎついメイクなど、そこここに期待させるものがあるんですが、これが思いのほか弱かったりして…(泣)

 …いいえ、たぶん、彼らが弱いというのではないのです。
ヒロインのシンクレア(ローナ・ミトラ)が、強すぎるのです!

 キャラクター的にいうと、「Resident Evil」(2002)のアリスくらい、現実味がないんですが、あまりにもそっけないタフさから、わたしは「Underworld」シリーズのケイト・ベッキンセールを思い出してしまいました。

 後半に入ってくると、「中世な試合ですか?」 と、思うシーンや、「や、やっぱり中世ですか?!」 と思うシーンもあり。そして、予想通りにド派手な脱出を図るあたりは、そうです、「エスケープ・フロム~」ですよね~!!

 ということで、この作品、上映時間もわりと長めなんですが、“ムムッ、どこかで見たことあるゾ!”の連続なんですね。こういった過去作品の面影が気にならない方は、たぶん好評で、(気になる方は、ちょっとガッカリ…) な作品のようです。エピソードを詰めこみすぎて、もう少し整理されていてもよかったかな?
なにより、「ディセント」の成功が大きかっただけに、シビアな評価になってしまってるかもしれません…(汗)
マーシャル監督、次回作に期待します!


 







ヒロインのシンクレア(ローナ・
ミトラ)。気のせいか、顔まで
(ケイトに)似ているような…













ひゃっほ~う! な、
倒錯集会のはじまりです。
(…といいますか、もっと
倒錯してもいいですよ!!)









捕まっちゃって、ねちねち
拷問されるも、あんまり
痛そうじゃない…




お約束の形成逆転で、ブッス~!!
(この豹メイクなおネエさん、もうちょっと活躍してほしかったですねー







   They Wait




(2007)カナダ
出演…ジェイミー・キング
リーガン・オーイ
ヘンリー・オー
監督…アーニー・バーバラッシュ
★★☆


〔ストーリー〕
 カナダで暮らすサラとジェイソンの若夫婦と息子のサミーは、ある日、ジェイソンの叔父が事故で死亡したという連絡を受ける。葬儀に出席するために上海に訪れた彼らだが、感受性の強いサミーは、そのころから不吉な人物や不気味なものが見えるようになってしまう。そして、ジェイソンの母親の家に泊まった夜に、不思議な少女に導かれるように、閉ざされたドアを抜けると…


 ちょっとおもしろいかなーと思ったので、レビューしてみました。
アーニー・バーバラッシュという監督さんは、「American Psyhco Ⅱ: All American Girl」(2002)や、「Cube 2: Hypercube」(2002)のプロデューサー、「Cube Zero」(2004)や、「Stir of Echoes: The Homecoming」(2007)を撮った方です。ようするに、二番煎じが好きな方(笑)ですね。評価も一部ではさんざんだったりしますが、この作品は、いくぶんオリジナリティがあって楽しめました。

 …といいますか、わたしは「キューブ2」「エコーズ2」なんかは、なかなかおもしろいと思いましたよ。
どういう理由があってつづきものばかり撮っているのか、不明なんですけど、映画を成功させる要因として、優秀なスタッフや、そのときどきのシチュエーションなんかも非常に関係していると思います。
それで、この作品にかんしていえば、舞台を上海にしたことがまず成功の一因だったようです。

 最初に書いてしまいますけど、けしてこわくはありません。どちらかというと、ファンタジーな冒険要素が強いです。物語の前半が、少年サミーの視点で描かれていて、後半からは母親サラの活躍となっていきます。
これに、日本人にはノスタルジックに感じられる上海の入り組んだ横丁、色鮮やかな店の商品、呪術要素なんかがくわわって、鑑賞中終始思ってしまったのは、アニメにしたとしても、なんの違和感もないということ。

 そ~なんですね、この作品、ホラー映画というよりは、まるで「パプリカ」(2004)「妄想代理人」(2006)の今敏監督みたいなんです! 
 もしくは、YAMATOWORKS(森田修平さんと桟敷大祐さんのユニット)の「カクレンボ」(2005)っぽいです。
 
 こう書いてしまうと、ほとんど感触がわかってしまうと思いますが、全体的にほどよく子供っぽく(笑)、ほどよくリアリティがなく(再笑)、ストーリーは明快な起承転結型。
後半に入って、「こ、これは、楳図かずお先生?!」 というシーンがあるんですが、そこまでお下品になりませんでした… (残念!)
観客を驚かせる見せ場や、恐怖シーン(お下品さもね)などは、あと一歩といった感じです。

 ごくフツーのチャイニーズな父子に、白人の美人ママという、これまたマンガちっくな設定なんですけど、息子のサミーが憑依されてから、パニックに陥っていく母親サラをジェイミー・キングが熱演。
アジアなゴーストストーリーというと、ジメジメッとした復讐譚が圧倒的に多いんですけど、わたしは主人公が能動的になっているほうが、よほどスリリングに感じられるんですが、みなさんはどうですか?








ホントに母子ですか? といっ
た雰囲気のサラ(ジェイミー・
キング)と、サミー(リーガン・
オーイ)。でも、後半に入ると
ホントの母子に見えてくるから
不思議です。








こちらは、ホントに夫ですか?
なジェイソン(テリー・チェン)。
ちょっと影薄い人です(笑)。








サラに力を貸してくれる、
薬剤師のおじさん(ヘンリー・
オー)。呪術にも詳しいです。








サラが堀りだしてしまった、
夫の一族にかけられた呪い
とは…?







    Das Experiment



(2001)ドイツ
出演…モーリッツ・ブライブトロイ
クリスチャン・ベルケル
ユストス・フォン・ドーナニー
監督…オリヴァー・ヒルシュビーゲル
★★★☆


〔ストーリー〕
 元新聞記者のタクシー運転手タレクは、大学の心理実験の被験者を募る広告に興味を抱き、参加することに。実験内容は、模擬刑務所内で無作為に看守と囚人にわかれて、生活するというもの。実験はなにごともなくはじまったかに見えたが、やがて徐々に、被験者たちの心理に変化が訪れはじめて…


 邦題「es/エス」です。
この作品に関してまっさきにいえることは、“実話を元にしました映画” なんですが、どこまでが実話で、どこまでが誇張されていようと(笑)、たいへん見ごたえのあるドラマに仕上がっています。
オープニングで、それはいらないんじゃない? というエピソードがあるんですが、これがストーリーが進むにつれて、重要な役割を果たすことになっていくんですねー。

 さて、実話を元にしたという触れこみですが、1971年にスタンフォード大学で行われた心理学の実験をそのまま脚本にしたようです。この実験についての記録を、とあるTV番組で観たことがあるんですが、それはそれは、気分が悪くなるような内容でした。
なんでも、予定では2週間のところを、わずか6日で実験は中止に。現在でもこの実験は、危険すぎて禁止されているんだとか。
 
 アプローチが少しちがうんですが、ナチスの人間が、(ごくふつうの人間であったのに)、なぜあんな残虐行為ができたのかという実験の記録を見たこともあります。実験内容はすごく簡単で、被験者に、「これは記憶力に関する実験です」と、ウソをついて、パートナーと組ませ、パートナーの記憶が曖昧になって答えをまちがえるたびに、罰として電流ボタンを押す(!)というもの。

 当然、これには電流なんか流れていなくて、パートナーはわざとまちがえたり、痛がったりといろいろ演技をするわけなんですが、事前に「このレベルの電流は、生命に危険を及ぼすかもしれない」と、説明されていたにもかかわらず、ほとんどの人がためらいながらもボタンを押してしまう… ようするに、責任転嫁できる状況にいれば、理性や判断力がまったく働かなくなってしまうんですね。これ、だれにでも当てはまることのようです。

 この作品は、「看守」と「囚人」という役割を与えられて、かつ閉鎖された空間内で、ごくふつうの人間が “ふつう” を逸脱していく様子がじつに丁寧に描かれています。
人が人を傷つけるのは本能的なものでしょうし、傷つけられた人間が、自ら “被害者” となってしまうのも、やはり本能的なものなのだと納得… でも、わかっていても、うすら寒く、暗澹とした心地になります。

 この通り、かなりシリアスな作品なんですが、結末の爽やかさが唯一の救いになっているかと思います。








この実験をレポートして、記者
にかえり咲こうと目論むタレク
(左モーリッツ・ブライブトロ
イ)。くじ引きで「囚人」になっ
ちゃったのが、運のつき。 







タレクと同室になったシュタイ
ンホフ(クリスチャン・ベルケ
ル)は、なんと軍人でした!








ときおり思い出される、恋人
ドラ(マレン・エッゲルト)と
の記憶。






看守役のベラス(ユスタフ・
フォン・ドーナニー)は、
看守仲間から「クサイ」
バカにされているのですが…







     The Lost


(2005)アメリカ
出演…マーク・センター
シャイ・アスター
メーガン・ハニング
監督…クリス・シヴァートソン
製作…ラッキー・マッキー
★★☆


〔ストーリー〕
 60年代のニュージャージー州の保養地スパルタで、地元の不良少年レイは2人の女子大生にいきなり発砲した。理由は、彼女たちがキスしたからだ。
 それから4年後、レイの犯行は発覚しないまま、命をとりとめた意識不明の少女は死亡した。中年刑事のチャーリーは事件の再捜査を強く決意し、レイに圧力をかけて新たな展開を図ろうとするが…


 お待たせしました! …か、どうかはわかりませんが、ジャック・ケッチャム原作 『黒い夏』 の映画化作品です。2年前にすでに完成していたんですが、インディ系でして、上映される機会もないままに、フェスティバルなどを転々としていたようです。

 監督のクリス・シヴァートソンは、リンジー・ローハン主演のサイコ・ミステリ
「I Know Who Killed Me」(2007)を撮った方だったんですね。(…う~ん、この映画、いろんな意味で微妙でした!)
 ケッチャム作品は続々と映画化されているようですが、この作品にかぎっていえば、まず驚いたのが、キャスティングが非常に、忠実なくらい細かい! んです。

 原作を読んだ方ならわかると思うんですが、もう、そのまんまなんですよ。
主役のサイコ・レイをはじめ、彼をとりまく3人の女の子(…だらしない雰囲気のジェニファー、お金持ちで絶世の美女のキャサリン、知的でカワイイサリー)などなど、イメージぴったりの役者さんを見つけてきたよう。これにかぎらず、レイの両親、ジェニファーの養父母、サリーの親友、ドラッグ・パーティーの面子、バーガーショップのウェイトレスでレイに夢中のローティーンの女の子… などなど、ほんと、とにかく細かい~!

 オープニングからショッキングです。被害者の女子大生のひとりをエリン・ブラウン(別名ミスティー・マンディー)が演じているんですが、あっという間に殺されてしまいます。
このレイを演じるマーク・センターくん、ナルシストで、幼稚で、危険きわまりなく、バカバカしい虚栄心の塊といったキャラクターに、これまたぴったりです。

 原作では、レイは、“とくに理由もなく、極悪な人間として誕生した” といったことが強調されているんですが、こちらもそんな内容なんですね。男のくせに化粧をして、自分がカッコイイと思いこみ、魅力的な女の子と見るや、すぐにニヤニヤしながら近づく… それで、拒絶されれば態度を急変! まるでキレやすい子です。でも彼は、キレやすい子以上に危険な存在なのです。

 惜しむらくことは、この “危険さ” が、切迫するほど感じられない点。鏡を使って気持ちをリセットするなど、彼のサイコパスぶりがうまく表現されているシーンもあるんですが、殺戮にいたる異常心理が少しもの足りないでしょうか…

 全体的に、すごく軽いです。「あえて軽くしたのかな?」 と、思ったりもしたんですが、(← そうすることによって、たしかに “現代殺人” といった趣は出ているんですけど)、これだけアクの強いキャラなんですから、個人的にはそのあたりをもっと掘り下げてほしかったかナー、なんて…
正直、ストーリーの衝撃さに助けられているといった、感触です。

 ですが、やはりラストの残虐鬼畜っぷりは、映像化すると不快度さらに200%!! 免疫のない人は、うかつに手を出さないようにしましょう。
 










シヴァートソンのレイは、こんな感じ!
全身黒ずくめ、リーゼント、アイライン!






ナルシスなレイは、黒子まで自分で
書いてます。どうしてこんなうさんくさ
い男がモテるんでしょうー?!?









キャサリン役のロビン・シドニー。
大胆な演技に注目です!







ちょっと子供っぽい感じのサリー(メーガン・ハニング)。
サリーは頭がいいので、レイの小細工には騙されません。




終始こんなニヤニヤ顔で、ためらいもなく銃をぶっぱなします。
ケッチャムは執筆するとき、必ず実話をもとにしているんですが、
映画の中のレイは、「現在」の危機感にかぎりなく近いです…
(そこがまた、不気味…!)






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ななみといいます
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 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

〈好きかも♪〉
 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
 かます、説明書、道案内、カマドウマ、狭いところ、壁がすんごい目の前とか、渋滞、数字の暗記、人ごみを横切る、魚の三枚おろし…
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