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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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    Die Welle



(2008)ドイツ
出演…ユルゲン・ヴォーゲル
ジェニファー・ウルリヒ
マックス・リーメルト
監督…デニス・ガンゼル
★★★


〔ストーリー〕
 高校教師のライナーは、独裁政治をテーマにした歴史の授業を受け持つ。しかし、現代の子供たちはさほどそのテーマに興味を示さず、いまという時代にそんな極端なことは存在しえないと熱意がない。ライナーは、「それでは実践してみないか?」と、“このクラスの期間中、ここにいるだれかを絶対的な指導者にする” ことを提案。多数決で決まったその指導者とは、ライナー自身だった…


 英語タイトルは「The Wave」、じつはこの作品は、“The Third Wave” というアメリカの高校でじっさいに行われた実験をもとにしています。実話の、人間心理に関する実験を題材にした映画というと、「Das Experiment」「es/エス」2001)が思い出されるんですが、こんな話があったなんて、わたしもはじめて知りました。ちなみに、この事件は当時授業を指導した教師本人の手により本が出版され、世界中でそれをもとにした演劇やドラマなどが作成されているそうです。

 “The Thrid Wave” とは、第三帝国にちなんでつけた、生徒たちのプロジェクト名。1967年のニューヨーク州パロアルトのとある高校で、ひとりの生徒が、「ナチの躍進は、現代社会では起こるはずがない」と発言します。それを聞いた教師は、「ほんとうに現代のアメリカには専制体制は成立しないだろうか?」 という疑問をもとに、集団意識操作の実験をスタート。生徒たちはそれぞれ役割を担い、行動を制限され、服装も一律化するなどして(制服ということですね)、5日間という期間を決めて実践行動を行いました。

 すると、彼らはあっさり感化されてしまい、“The Thrid Wave” に熱狂する生徒たちが多数続出。事態をおそれた教師は、すぐさま実験を中止することになりました。こうしたじっさいに起きた事件をもとに、ドイツの高校に舞台を移しかえたのが、デニス・ガンゼル監督の本作です。

 映画のなかでは、教師のライナー(ユルゲン・ヴォーゲル)が「指導者」役を担います。彼は服装を白いシャツに決めたり、全員で挨拶することにしたり、彼らの名称(プロジェクト名)を決めたりして、しだいに生徒たちも彼のカリスマにつりこまれていきます。(制服、それに授業のまえの挨拶なんて、日本人のわたしたちからすると、まったく当たりまえのことのように思えていたんですけど。。。じつは、非常にきわどいことだったんですね…)

 女生徒のひとり・カロ(ジェニファー・ウルリヒ)は、ライナーの提案にどうしても賛同できず、挑戦的な赤い服を着て登校してしまいます(こういう女の子、いいですよね!)。でも、同級生たちは彼女が思っていた以上に、ライナーの発言を真剣に受けとめているのでした…
 
 最初は遊び半分に思えたプロジェクト、しだいに結束が強くなりだして、仲間意識が芽生えていきます。それは集団への帰属、ひいては自己の考えを見失うこと。仲間ではないと見なした相手にたいしては、敵対心が生まれたりもするのです。

 学生時代から集団行動や〈〇〇時間テレビ〉なんかに、どーしても違和感をぬぐえなかったわたしには、その理由がよくわかって、とてもとても納得できました。たとえば、おなじ色の服を着て一緒に行動したがる少年グループなんかや、いじめ問題なども、ファシズムのごく小さな規模なのだと理解できるのです。
 「エス」とくらべると、衝撃度はやや落ちるかもしれませんが、非常にクレバーで、もろく、危険な人間心理を丁寧に描いた佳作。オススメです。 









ライナー
(ユルゲン・ヴォーゲン)
は独裁体制が成立する
かどうか、実験を行うこと
を生徒に提案します。









カロ役のジェニファー・
ウルリヒ。





ひとり当惑するカロ、
BFのマルコや友人たち
は、どんどん熱中!




オタク少年のティム
(フレデリック・ラウ)は、
しだいに“The Wave”に
依存するようになって…
背後に見えるのが、彼らの
シンボル・マークです。







いつの間にか、信者が
こんなに!!
ライナーが最後に下した
決断とは…??







 
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   Dracula cerca sangue 
         
di vergine... 
         e mori di sete!!!

(1974)アメリカ/イタリア/フランス…
出演…ウド・キアー
アルノ・ジョエギング
ジョー・ダレサンドロ
監督…ポール・モリセイ
監修…アンディ・ウォーホル
★★★

〔ストーリー〕
 ルーマニア貴族の末裔であるドラキュラ伯爵は、処女の生き血がなければ徐々に年老いて衰退してしまう身。しかし、近ごろでは生娘がめずらしくなり、一族の滅亡を嘆くドラキュラに、執事のアントンは信仰の厚いイタリアにむかってみてはどうかと勧める。最後の肉親である妹を永遠の眠りにつかせたあと、ドラキュラとアントンはイタリアの片田舎へと旅立つことにするのだが…


 アンディ・ウォーホル&ウド・キアーの変態&ブラック・ユーモア映画(…いえ、ギャグ?)の「処女の生き血」です。英題では「Blood for Dracula」になっていますね。原題がこんなに長かったとは、わたしも知りませんでした…

 ウォーホルとモリセイ、それにウド・キアー、ジョー・ダレサンドロとくると、「Flesh for Frankenstin」「悪魔のはらわた」1973)もあるんですけど… じつは、まだ未見です。ですが、この作品も悪趣味映像満載だそうで、ついでに3Dになっていまして(公開当時、すごく話題になりましたねー)、やはりギャグ? てんこもりの内容だそうで… いまから非常に楽しみにしています。まずは、若き日のキアーのうつくしさとカワイソさが十二分に堪能できる、本作から。

 この作品、わたしはひそかにキアー最高傑作ではないかと思うのですが、一般的なドラキュラ映画ファンからはあまり好かれていません… というのも、これまでのクールで上品なドラキュラ・イメージを180度くつがえしてしまうような、とことん惨めで哀れな(!)伯爵様になっているからです。

 オープニングは、心和ませるピアノ曲とともに、キアーが白髪を黒く塗ったり、化粧を施したりして老いを隠そうとするシーンからはじまります。それにしても、若いころのキアーって、ほんとにふつくしい…!! うっとり見とれてしまいます。キアー演じる伯爵様は、どういうわけか処女の生き血でなければ受けつけません。しかし、近ごろでは性の解放が進み、処女の存在自体がめずらしくなってしまいました。

 「われらはもはや、滅びるしかない運命なのか…」と、気弱になってしまう伯爵様。(そんなこといわずに、がんばってくださいよー!)

 と、執事のアントン(アルノ・ジョエギング)がナイスな提案をします。「敬虔なカトリック信者の多い、イタリアにいってみてはどうでしょう?」 アントン、ナイス! さっそく伯爵様は “マイ棺桶” を馬車に積んで、イタリアへとパカパカ遠征にむかうのですが… 

 さて、察しのいいみなさんには、もうこのあとの展開は読めちゃいますよね(笑)。
伯爵様は “先妻を亡くし、新しい嫁候補を探しにきた。ただし、処女限定!” という設定で、獲物探しをします。すると、彼の莫大な遺産につられた没落貴族のオバチャンが、「うちにいい娘がいるのよ~!!」と、4人姉妹を売りこんできます。

 「あなたはホントに処女ですか?」「ええ、わたしは処女ですわ、もちろん!」
こんなやりとりのすえ、結局はだまされちゃう伯爵が哀れです。非処女の血を吸ってしまうと、顔が緑色になって(…ほんとに緑のライトを当ててます!)、拒絶反応が起きてしまいます。浴室に直行です。以前、「Tenebre」「シャドー」1982)でダリア・ニコロディに 〈絶叫大賞〉 をあげちゃいましたが、これは 〈嗚咽大賞〉 をあげたいですね。だってキアー、迫真のゲロ演技、ほんとに苦しそう!

 作品の趣旨としては、「女は魔物」ということをいいたかったんでしょうか…? いえいえ、たんに、ドラキュラをギャグにしたかっただけでしょう!

 ほかにも笑えるシーンがたくさんありまして、イタリアに到着した伯爵様、飢えのためにベッドでゴロゴロ身もだえしているところを、アントンが「我慢しなさい!」と一喝するところなんか、じつは隠れS? と、思ってしまいます。それから、4人姉妹を紹介された伯爵様、「ふつくしい! なんて純粋なんだ…!」と、やはり我慢できなくなってワナワナしてしまうのですが、本作でいちばんピュアでうつくしいのは、キアー本人だったりしますあと、ポランスキー監督もちょい役で出演していますね。

 ドラキュラファンの方も、そうじゃないという方も、とりあえずこのトホホ作品は観ていただきたいです。 絶対笑えますから~!!


 







キアーがあまりにもきれいだったので、
いつもより画像を多めに。
貴族的な横顔がすてきですね~






こんなキアーも。
ちょっぴりワイルドな雰囲気に
してみました…







ふ、ふつくしい!!
もはや、生きる芸術作品。









そして現在っ!!
(時の経過って残酷なのね… のね)








…はれ?
なんかおかしいよ?
(顔が緑だよ?)








ゲロゲロ~ッ!!
やっぱりだまされちゃった!






だって、毎晩こんなです
もーん
(…いちばんおいしいのは、
下男のマリオだったりします!






    Aparecidos



(2007)スウェーデン/アルゼンチン/スペイン
出演…ルス・ディアス
ハビエル・ペレイラ
へクトル・ビドンテ
監督…パコ・カベサス
★★☆


〔ストーリー〕
 マレナとパブロの姉弟は、離婚して病身となった父親を見舞いに、はるばるアルゼンチンの病院にやってくる。しかし、父にもはや意識はなく、もう長くないことはふたりともよくわかっていた。傷ついた心をごまかすように、明るく振る舞うパブロ。そんな彼を心配するマレナ。途中で車を停めてひと休みしていると、ひとりの少女が車のタイヤを一生懸命覗きこんでいる。パブロが手を貸そうとすると、少女はいつの間にか消えていて、ぼろきれに包まれた日記帳があらわれた…


 最近ほんとうに元気のいいスペイン・ホラーから、またまたおニューな一作をご紹介です!
 監督さんは、はじめて名前を聞く方です。じつはそれほどこわくも、新しくもないんですが、やはりスペイン・ホラーは奥が深くてあなどれないなー、と感じてしまう一品でした。英題では、「The Appeared」となっています。

 おおまかな説明をしますと、姉弟たちが発見した日記帳というのが、どうやら殺人犯のもののようなんですね。しかも、20年もまえの。以前にあらすじを読んだとき、殺人鬼が残したうんぬん… のサイコ・サスペンス? かと思ったんですが、そこはさすがスペイン、ミステリで味つけしたゴースト・ストーリーでした。

 マレナ(ルス・ディアス)とパブロ(ハビエル・ペレイラ)は、仲のよい姉弟。休日を利用して、アルゼンチンの病院に入院中の老いた父親を見舞いにくるのですが、彼に意識はなく、担当するお医者さんも 「希望を持つことは無駄なこと」 と、冷酷に宣言します。思っていた以上に傷ついてしまうパブロ。彼が姉より感受性が強いという設定も、このさきの物語のちょっとしたミソになっています。

 病院を出たふたりは、旅行を再開します。途中で車を停めてひと休みしていると、ひとりの女の子が後輪タイヤのそばに座りこんで、なにやらゴソゴソ探しているではありませんか… 「どしたの? なにか失くしちゃったの?」と、気のいいパブロは手伝ってあげます。すると、ぼろきれに包まれたノートが出現。なんだコレ… いつの間に? と、とまどっていると、少女が忽然と姿を消しています。ひぃ~、ゴーストなストーリーのはじまりです。

 この日記帳というのがまた、奇怪で不気味な内容なんです。ある家族の惨殺事件について、詳細に、まるで見てきたように書かれていて、ご丁寧に手書きの地図やポラロイド写真まで入っています。悪趣味が乗じて、写真に写っていた惨劇の舞台の宿を発見するパブロとマレナ。「206号室に泊まりたい!」(← 事件のあった場所です)と、はしゃぐパブロですが、マレナが受けとった鍵は、隣の207号室のものでした…

 浮かばれない幽霊が惨劇の場面をくりかえす、という映画や小説はわりとあるんですけど、こちらはそうじゃないパターン。ただ、ミステリの部分にもうちょっと説得力がほしかったですね。犯人像はもとより、犯行の真の動機とかを… それから、日記とリンクする部分をもうちょい増やせば、もっとおもしろくなったかな? などという、素人な意見を持ってみたり…

 ですが、オーソドックスながら、こういうこわがらせ方をする映画は大好きです。ちなみに、エンディングもよかったです。
今後もますます、スペイン・ホラーから目が離せなくなりました!












マレナ役のルス・ディアス。 
「Para entrar a Vivir」「悪魔の管理人」2006)
にも出演しているそうですが、どんな役だったか
憶えてないなあ…












パブロ役のハビエル・ペレイラ。
クルクル巻き毛がちょっとかわいいですね。










ふたりのまえに何度も
あらわれる、少女の
正体は…?








とうとう彼女を救出
しちゃったのです
が…!!








殺人鬼はほんとうに
存在するのでしょう
か…?!







    Repo! The Genetic
    Opera


(2008)アメリカ
出演…アレクサ・ベガ
アンソニー・ヘッド
ポール・ソルビーノ
監督…ダーレン・リン・バウズマン
★★★


〔ストーリー〕
 西暦2056年、流行性の臓器不全が発生、地球規模の大パニックとなる。そのため「臓器移植事業」というバイオ産業が出現、大企業の〈ジェネコ社〉が市場を独占していた。だが、〈ジェネコ社〉は支払いを怠った者にたいしては、強制的に臓器を回収する暗殺者・レポマンが用意されていた…
 17才の少女・シロは、血液の病をもつ少女。ふだんは家の中に閉じこもっていたのだが、ある夜部屋を抜け出して、墓地で見知らぬ男と出会うが…


 「ソウ・シリーズはぼくのライフワークなんだよ、なんちて…」とか、なんとかいっていたダーレン・リン・バウズマン監督(2、3、4作目担当)、さすがに5作目は新人のデヴィット・ハックルにあけわたして、新作にホラー・ミュージカルをせっせと撮っていました。

 これがですねー、もう、こってこての “MTV「ロッキー・ホラー・ショー」” していまして、音楽総プロデュースはなんと、あのYOSHIKIさんなんだとか。ロック・オペラな内容らしく、出演陣にも歌手を多用しています。一番世間を騒がせているのは、サラ・ブライトマンの出演でしょうか。

 物語の舞台は近未来。流行性の臓器不全が人々を襲い、臓器移植事業がさかんに行われるようになった世界。大企業の〈ジェネコ社〉がその市場を独占していました。そこへ、血液病を患っているため、世間から隔絶されて育った少女・シロ(アレクサ・ヴェガ)が登場します。シロは父親のネイサン(アンソニー・ヘッド)とふたり暮らし。身体が弱いために、いつも部屋に閉じこもりっきり。しかし、外に出たいという欲求を抑えることができず、ある晩部屋を抜けだして墓地にむかいます。そこで、墓荒しのあやしい男(テランス・ズダニッチ)と出会うのですが…

 シロ役のアレクサ・ヴェガは、「スパイキッズ」シリーズの女の子。そして、父親役のアンソニー・ヘッドは、「バフィー/恋する十字架」でジャイルズ役だった人です。じつは、彼が〈ジェネコ社〉の恐怖のレポマン(回収家)なのですが、シロはそんなことはまったく知りません…

 “レポマン” と聞くと、アレックス・コックス監督の風変わりなカルト映画を思い出してしまいますが、こちらもカルト・ミュージカルを目指したもよう。アニメーションやマンガのコマ割りでストーリー、キャラを紹介していくところなんか、アメコミ・ヒーローのダークさや葛藤、スタイリッシュさなんかを意識しているようです。

 出演者もごたまぜ(?)状態で、おもしろいんですよ。〈ジェネコ社〉の冷酷社長にはポール・ソルビーノ(ミラ・ソルビーノのお父さん)、彼のふたりの息子にチョップトップ、じゃなかった、ビル・モーズリー(長男ルイーズ)とニヴェック・オーガ(次男パヴィ、かなりのおバカ!)。長女のアンバーにはパリス・ヒルトン、整形マニアというところがまた、ビッチな役よりはまっています。
 サラ・ブライトマンは、元盲目のオペラ歌手・ブラインド・マグ役です。彼女は〈ジェネコ社〉専属の歌手となることを条件に、視力を手に入れるのですが…

 正直に申しあげまして、ミュージカルって、どうも苦手なんですよね~!
ですが、なにも考えずに流すぶんには、けっこう楽しいものがありました。 
ストーリー自体はばかばかしいものなんですけど、視覚的におもしろいので(もちろん、音楽的にも)、はまるとすごく楽しい作品だと思います。

 ジョニー・デップ主演の「Sweeney Todd: The Damon Barbar of Freet Street」「スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師」2007)が品のあるグランギニョルしていたのにくらべると、こちらはやりたい放題になっています(笑)。あ、それから、当然微グロもあります。“観客参加型” を狙っているところがまた、ちょっと作りすぎ? な感がしないでもないですけど…

 全編賑やかなロック(プログレ系多し)していますので、油断するといくばくかの体力を消耗するかと思われ。鑑賞するさいには、体調のいい日を選びましょう










近未来なアメリカ。
注:ゴッサム・シティでは
ありません!







シロ役のアレクサ・ヴェガ。
病人でも行動的なところが、
アメリカっぽいですね。










墓荒し人のテランス・
ズダニッチ。
死体から獲ったナゾ液
モテモテ!
脚本も担当していまーす







レポマンのネイサン
(アンソニー・ヘッド)。
神がかりなメスさばき
に注目!







ブラインド・マグ役のサラ・
ブライトマン。彼女の瞳
には、ある秘密が…?










短気なルイーズ(左ビル・モーズリー)と、
おバカ・パヴィ(ニヴェック・オーガ)。
注:「ソウ」のお人形ではありません!







    Sei donne per
   L'assassino


(1964)イタリア
出演…キャメロン・ミッチェル
エヴァ・バルトーク
トーマス・ライナー
監督…マリオ・バーヴァ
★★☆


〔ストーリー〕
 ある嵐の晩、ファッション・モデルのイザベルが何者かに絞殺された。遺体は人気デザイナー、モラルキの館に隠されていて、犯人は業界内部説が濃厚。しかし、すべての人物にアリバイが成立する。一方、モラルキの館のショウの控え室では、イザベルの日記帳が発見される。彼女には他人のことまで事細かに記すくせがあった。日記帳の内容を公開されては困るモデル仲間のニコレは、彼女と親しかったのをいいことに預かることにするのだが…

 英題では「Blood and Black Race」、邦題は「モデル連続殺人」。イタリアン・ホラーの巨匠、マリオ・バーヴァ監督のジャーロです。

 バーヴァ監督は、のちの映画界に多大な影響を与えた逸材のひとりなのですが、彼の技法、色彩美なんかをそのまんま踏襲したダリオ・アルジェント監督とくらべると、ワールドワイド的な成功は果たせませんでした… でも、バーヴァ監督はほんとにすごいんですよ。本作で「ジャーロ」(= 残酷なイタリアン・ミステリ)という分野が成立したといわれていますが、この1年前に、すでにジャーロ最初の1本といわれる「La Ragazza che sapeva troppo」「知りすぎた少女」があります。
 また、SFホラーの「Errore nello sapzio」「バンパイアの惑星」1965)は、のちの「Alien」「エイリアン」1979)の原型といわれています。それから、残酷スラッシャーの「Reazione a catena」「血みどろの入り江」1971)は、「Friday the 13th」「13日の金曜日」1980)の元ネタという話も。

 さまざまな監督が彼の作品を参考にしている、といっても過言ではないのですが、なかでも、もっとも影響をうけたのがアルジェントというのは… 一目瞭然ですよね! 

 まず本作、オープニング、クレジットとともに流れるのは、カルロ・ルスティケリの退廃的な音楽と、役者さんたちを原色の幻想的な構図に立たせた、きわめてうつくしいカット。この原色カットがまた、「Suspiria」「サスペリア」1977)そっくりなんですよ。あのどぎつい、光沢のあるあやしくて不気味な世界は、この作品から端を発していたんですねー。

 陰影のメリハリも見事としかいいようがないです。もう、すべてのカットに額縁をつけてもいいくらい。そして、殺害されるのはゴージャスなファッション・モデルばかり…
 もちろん、この時期はまだ、それほど流血な場面はすくないのですが、「美女を殺害する」のをエロチックに、美に昇華して見せるという映像快楽が確信犯となっているのは決定的です。

 ストーリーは、ひとりのモデル(フランチェスカ・ウンガロ)が、林の中で絞殺されるところからはじまります。犯人は黒いコート、黒い帽子、黒い革手袋、そしてナゾの白マスクを被っているという、ああ、ジャーロ! な典型の姿をしていました。こうして、刑事たちがファッション業界に捜査に乗りこんでくるのですが、登場するすべての人物が疑わしくて、すべての人物に黒い秘密があったのでした…

 物語も複雑に作られていて、謎解き部分もおもしろいです。でも、いちばんの見どころは、やはり殺害されるモデルたちの「死」と「快楽」ぎりぎりのきわどいシーンでしょうね。バーヴァが女性たちの絶命シーンをどんなふうに撮りたかったかは… もう、それはいうまでもないですよねー

 思えば、ジャーロというのは「過度の流血」と、「引き伸ばされた殺人シーン」なんかを特徴とする映画分野。そのため、ストーリーがないがしろになってしまうのですが、“ホラーこそが消費される映画” となっているところは潔いです。ジャーロ・ファンには見逃せない1本ですね。








オープニング、
マネキンとともに
原色のライトを浴びて…
音楽もカッチョイイ!








モラルキ(キャメロン・
ミッチェル)の館にて。
 




モデルのタオリ(C・ダン
テス)と、クリスティナ
(右エヴァ・バルトーク)。
次に狙われるのは誰? と、
予想していくのも楽しいです。








このカットなんか、まんま
「サスペリア」ですよね!






そこはかとなくエロスな
殺害シーンがまた、
シュール!







    The Poughkeepsie 
          Tapes

(2007) アメリカ
出演…ステイシー・チョボウスキー
ベン・メズマー
サマンサ・ロブソン
監督…ジョン・エリック・ドゥードル
脚本…ドリュー・ドゥードル
★★☆


〔ストーリー〕
 ニューヨーク州ポキプシーで、全米を騒がせていた連続大量殺人鬼がついに逮捕。犯人の自宅の庭からは遺体が次々と発見され、クローゼットには100本以上のビデオテープがあった。そこには、これまでの犠牲者たちが殺害される瞬間が撮影されていた…!! スナッフ・フィルムをモチーフに描いた、擬似ドキュメンタリー。


 ジョン・エリック・ドゥードル、ドリュー・ドゥードル兄弟というと、バラゲロ&プラサ監督の「〔Rec〕」「REC/レック」2007)のリメイク、「Quarantine」(2008)を撮った方々です。が、評価のほうはあんまり芳しくなく、「こんな出来でリメイクする必要があったのか?」、なんて声も聞かれますが、この作品で注目を集めて頭角をあらわしてきました。トライベッカでも話題になりました。殺人鬼の残したビデオテープをもとに描いた、モキュメンタリーです。

 はじめにトレイラーを見たとき、かなりアブなそうな映画だな~、という感想を抱いたのですが、これがなんと、けっこう真面目に撮られています。もちろん、主観撮影(POV)特有のいかがわしさやうさん臭さもありますが、全体としては「The Blair Witch Project」「ブレアウィッチ・プロジェクト」1999)をさらに手堅く、硬派に仕上げた感じ。これはまた評価がわかれそうな作品ですが、前半はハラハラ不気味で、けっこうこわいです。

 モキュメンタリーということで、オープニングにレポーターが登場、そのほか、FBI捜査官や警官といったさまざまなスペシャリストたちが登場します。そして事件を詳細に、ひとつひとつ検証していきながら、犯人の残したテープ(“ポキプシー・テープ”)の内容が挿入されていく、といった具合です。

 殺人鬼は当然異常に描かれているのですが、犯行の残虐さ、ショッキングさを強調するというよりも、あくまでリアリティ重視の内容… といいつつも、しょっぱなから少女を殴って連れ去るシーンは、たいへんショッキングです。“ポキプシー・テープ” に替わると、画像が乱れてあちこちにノイズが入ります。「これは狙いすぎなんじゃない…?」、と苦笑しつつも、だんだん笑顔がひきつってきちゃうから不思議です。だって、モキュメンタリーといえ、現実にこんな殺人鬼がアメリカにはうようよいますからね。そうしたリアルな背景が、この作品を支えているひとつかもしれません。

 (! …余談ですが、ポキプシーにじっさいに連続殺人犯がいまして、彼の場合は売春婦ばかりを狙って殺害していたそうです。もしかしたら、この実話にインスパイアされたのかもしれません!)

 映画の中の殺人鬼は男女の別なく、子供でさえ標的にします。とくに、彼の車にあっさり乗りこんでしまう女性のシーンなんか、「どうして見知らぬ人間をかんたんに信用しちゃうかな~!!」 と、苛立ってしまいました。なのですが、あくまでアイデア先決の作品なので、見慣れてきてしまう(?)と、とくにこれといった新展開もなく、飽きがくるのはたしか。このあたり、もうすこし工夫の必要があったのでは?

 「Quarantine」は未見なのですが、ついでに、彼らがアメリカン・ホラーをしょって立つ、ということはたぶんないと思うのですが、すくなくともこの作品には彼らの若さや才気が感じられます。









冒頭、娼婦にお尻で
風船を割るように強要。
何プレイ?






犠牲者たちの遺体
発見記事が紙面を
賑わせています。








行方不明となったシェリル
の運命は?








犯人登場!!
不気味なお面
(ペスト流行時の鳥のお面?)
がお気にのようです。








ノイズだらけの歪んだ
世界に、女性の悲鳴が
響きわたる!!







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(いちおう)プロフィールです
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ななみといいます
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自己紹介:

 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

〈好きかも♪〉
 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
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