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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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    Dying Breed



(2008)オーストラリア
出演…ミラ・フォークス
リー・ワネル
ネイサン・フィリップス
監督…ジョディ・ドワイアー
★★☆


〔ストーリー〕
 動物の生態学を研究しているニーナは、タスマニアでも貴重な種類のタスマニア・タイガーの現状を調べるため、恋人のマット、友人のジャックとレベッカの4人で調査旅行に出かける。じつは、ニーナの妹のルースが8年前におなじ地で旅行中に溺死しており、彼女の追悼旅行の意味もかねていた。だが、島にはおそろしい秘密が隠されていて…!!


 ジャック・ケッチャムのせいなのか、アジャ監督のせいなのかわかりませんが、こちらももはや、不動の地位を築きそうなホラーです。都会からやってきた若者集団が、文明とはかけ離れたとある場所で、現地のカニバリズムと遭遇!! みたいな~

 考えてみればこの設定って、なにかと作る側にもお得ですよねー。とりあえず、舞台を選ばないから、砂漠のどまんなかでも、森の中でも、郊外の一軒屋だっていい。そこに無邪気な若者たちを用意して、奇形メイクを施した殺人鬼を登場させればOK! あ、もちろん、メイクなしのフツーのおっちゃんでもOKです。(そういう場合は、エログロ趣味も入ってきちゃうのでしょうか…)

 “都会人 V.S 僻地の食欲旺盛な人たち” の構図は、それが純粋に「食材を得るため」という目的だからおもしろいわけで、いってみれば、どちらが正しいのか観ている側にも判断しにくいところだと思います。

 それで、この作品もそんなきわどい線引きのなかで、ドキハラの鬼ごっこが展開されるのかな? と、思っていましたら、ちょっとちがっていました。

 タスマニアというと、タスマニア・デビルのほかにも、こんな名物があったんですね。その名も、アレクサンダー・ピアス。タスマニアにはセーラ島という流刑地がありまして、19世紀のオーストラリアは、本土には置いておきたくない罪人たちをそこに送っていました。アレクサンダー・ピアスもそのひとり。ですが、彼は複数の仲間を連れて脱獄を図り、無人島にたどりついて食料不足に陥ってしまいます。そこで、彼らが選択した道は…

 これが実話というから、人間っておそろしいですよね。しかも、このピアスという囚人、仲間を全員食べちゃってさんざん懲りたと思ったら、二度目に捕まったあとにまた脱獄(!)して、やっぱり連れの仲間を餌食にしちゃっています。カニバリズムというとよく聞くのが、クセになっちゃうの… という、アレですが、アレ、ほんとにあるんですかね?? とてもじゃないですが、信じられません。

 話がだいぶ逸れてしまいましたが、この作品は実在の食人鬼ピアスに触発された映画です。冒頭、脱獄を図ったピアスが警官隊に追われているところからはじまります。そして場面は変わって、現代。動物学を研究するニーナ(ミラ・フォークス)たち一行は、タスマニア島を目指すのですが…

 単純な鬼ごっこではなく、ちょっとひねりの入った残酷ドラマです。わりとおもしろいです。ゴア描写はおさえめな感じです。あ、わりとオリジナリティもあるかもしれません。それでも、なぜかもの足りないと感じてしまうのは… 登場人物(犠牲者たち)が4人というのが、そうさせるのでしょうか? うーん?

 すこし以前に観ましたある映画を想起させるラストなんですが、それを書いてしまうと一発でネタばれになってしまうので、書きません! それから、画像検索しますと、やはりネタばれしているものがありますので、注意してください~












ニーナとマット。









黒髪美人がレベッカ
(メラニー・ファレホ)。








レベッカの恋人のジャック
(ネイサン・フィリップス)。
ちょいアホ。









奇怪な小屋でマット
が見たものは…??









マットを置いて、
スタコラサッサ~(笑)







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    Dorothy Mills


(2008)アイルランド/フランス
出演…カリス・ファン・ハウテン
ジェン・マーレイ
デヴィット・ウィルモット
監督…アニエス・メルレ
★★★


〔ストーリー〕
 ベビーシッター先で、赤ちゃんの首を絞めて殺害しようとした嫌疑をかけられている少女ドロシー。事件が起こったのは、アイルランドの本土から離れた小さな島の寒村。事実関係をたしかめるために、ダブリンの精神科医ジェーンは調査にむかうことにするのだが…


 てっきりサイコ・サスペンスものかと思っていたら、いや、ミステリなのかと思っていたら、ホラーでした!!  という作品をご紹介です。…といいましても、やっぱりサイコ・サスペンスよりの、どちらかというとミステリ的なホラーなんですけどね。

 監督は、17世紀のローマに実在した女流画家の半生を描いた「アルテミシア」(1997)でデビューした、アニエス・メルレ。デビュー作もそんな雰囲気ですけど、この作品も、いかにも女性監督が撮ったという感触が強いです。あ、べつに、フェミニストを刺激しているわけではありません! ですが、ヒロインの細やかな心情や、登場人物の配置、物語の文学性なんか、いかにも女性らしいんですよね。ホラーなんですけど、ドラマ性の高い、ミステリアスなお話といった感じ。
(…個人的には、チャールズ・グラント+ミネット・ウォルターズかな、と)。

 主人公の精神科医ジェーンを演じるのは、オランダの人気女優、カリス・ファン・ハウテン。わたしははじめてこの方を知ったのですが、えらい美人で色っぽい方です
ねー。ジェーンは都会の女、トレンチコートを格好よく着こなして、タバコを吸ったりするのですが、彼女がむかった先はまるで時間が逆行したような辺鄙な田舎。村人たちは教会に通い、新参者にたいする態度はけしてやさしくなく、下卑た男たちが彼女をからかい、必要最小限のこと以外はむっつり口を閉ざしたまま。

 じつは、村にもうすぐ到着しようかというところで、とあるアクシデントに遭遇しちゃいます。猛スピードで飛ばす若者たちの車にひっかけられて、湖にザッパーン!! それ以外にも、ずぶ濡れでやっとこさ到着すると、バカな男どもにからかわれるし、食堂の2階に部屋を用意してもらったのはいいけど、深夜になるとギターの音がうるさくて眠れないし、なんか暴走してた若者が宿の下にいてこわいし、白眼のバアサンはもっとこわいし…!!

 とまあ、いろいろとすったもんだがあるのですが、一方で、謎めいた少女ドロシーとの対話が行われるわけですが… 

 ドロシー役のジェン・マーレイは、これがデビュー作となるそうですが、なかなかよいです。映画のなかで彼女は薄い金髪と抜けるような白い肌を強調していて、服装もメルヘンチック、どことなく人間離れした雰囲気とエキセントリックな役柄がうまくはまっています。もちろん、ヒロインのジェーン役のカリスは魅力絶大です。彼女はもう、動いているだけでいいです。彼女の持つ年相応の知性と色気と悲しみがまた、ストー
リーに奥ゆきを与えています… なんていったら、やっぱり女性的だからー、とかいわれちゃいますか。
 あと、警官のコリン役のデヴィット・ウィルモットもよかったですね。

 ものすごーく丁寧に作られていて、伏線も複雑にはられているし、役者さんたちも素晴らしいし、ドラマ性もかなり高いんですけど、いまいち感情移入しにくい作品でもあります… それは結局、「閉鎖されたコミュニティ」というテーマに帰結してしまったから? 内容が複雑なわりには、全体的にあっさり淡白だから? ですが、カリス・ファン・ハウテンを見るだけでも、この作品は鑑賞する価値があると思います。
 














ジェーン役のカリス・ファン・ハウテン。
べっぴんさんですね~









ドロシー役の
ジェン・マーレイ。









楽しいお誕生日会…
ではありません!!









ジェーンが驚愕しちゃっ
てる理由とは…??



ジェーンと村人たちの目のまえに、驚愕の真実が明かされる…!!




 

 
    Freakdog



(2008)イギリス
出演…アリエル・ケベル
サラ・カーター
スティーヴン・ディラン
監督…パディ・ブレスナック
★★☆


〔ストーリー〕
 医学生のキャサリンとおなじ病院で働くケネスは、どもり癖があり、対人恐怖症気味で、どことなく薄気味悪い青年。しかし、彼女に好意を抱いているようで、こっそり携帯に彼女の行動を録画したりする。ある夜、研修仲間のキム、ショーンたちとクラブでパーティーをひらいて盛りあがろうとしていると、ケネスがやってきて、仲間に入れてほしいと頼む。ショーンは相手にしないが、ケネスは彼が麻薬を手に入れる場面を撮影していた。仕方なくケネスを仲間に招き、ドラッグ・カクテル “フリークドッグ”を飲ませてしまうのだが…


 “幽体離脱ホラー” という触れこみのこの作品、まるでクーンツの 『12月の扉』 のようですね。まあ、離脱しちゃった魂が大暴れしちゃうの? それで、「イドの怪物」とか出てきちゃったりするのかしら…! と、ワクワク期待しながら観てしまったのですが、これがですねー、まあ、ごくフツーのスラッシャーしていました。 …スラッシャー? うーん、そのあたりの思いきりのなさがまた、非常にもの足りないんですけど…

 ですが、悪くもなかったです。
 物語は、ちょっと不気味で哀しいトラウマからはじまります。医学生のケネスくん(アンドリュー・リー・ポット)は、幼いころに貧しかったためか、母親が客引きをしていました。ケネスくんはそれをドアの鍵穴から見てしまうのですが、それに気づいた母親が行為を中断しようとして、客とトラブルに。彼女はひどい暴力をふるわれて、殺害されてしまいます。

 大人になったケネスくん、そんな過去が心の傷となってしまったのか、自傷行為やどもり癖、対人恐怖症などといった、ビョーキでアブナイ根暗青年に成長します。当然、モテません。研修仲間も気味悪がって遠まきに。ですが、比較的性格のいい女の子・キャサリン(アリエル・ケベル)が憧れの的で、まるでストーカーのように尾けまわしたりします。
 
 ある夜、キャサリンたちの仲間入りにしたいがために、パーティーにやってきたケネスくん。彼はそこでドラッグ・カクテル “フリークドッグ” を飲まされて、意識不明になってしまいます。研修仲間たちは自分たちの身を案じて、彼を病院前に置き去りにしてしまいます。こうしてケネスくんは昏睡状態に陥ってしまうのですが、キャサリンだけは罪の意識から逃れることができず、独力で彼を蘇生させようと、“ある薬”に手を出してしまうのです…

 せっかくの “幽体離脱ホラー” なんですけど、肝心の「離脱の瞬間」が省略されていまして、気がついたら「憑依されちゃっている」パターンです… といいますか、これはたんなる “憑依ホラー” じゃないですか~!! と、騙された感が強いです。。。 ですが、こういうストーリーは、さきがわかっていてもわりかし楽しめておもしろいです。

 全体的に思いきり感がいくぶん不足していて、痛いのにしても、不気味なのにしても、もうちょっとはっちゃけてほしかったですね。あと、ケネス役のアンドリュー・リー・ポットは、どうがんばってもビョーキ青年には見えません。ごくフツーの健康的な青年がどもってる感じです。オープニングのインパクトのあるトラウマ・エピソードも、生かす方向性があるとよかったんですけどねー。

 ヒロインのキャサリンを演じるアリエル・ケベルがまた、絶世の美女タイプではなくて、ごくフツーのよくいる女の子なんですが、これはこれでアリですね。そのフツーさがまた、ラストに効いてくるんです。そのラストもおそらく、みなさんも、「…うん、そうだよねー」と、納得ずくの帰着の仕方だと思います。イギリスって、やっぱり意地悪なお話が好きなんですね













ビョーキ青年ケネスくん
(Aー・リー・ポット)。








ドラッグで昏睡状態に
なってしまうのですが…







身体を乗っとられて
しまうと、いろんな
破滅行為をして
しまいます!








はひ~、
ぐ、ぐるじいぃ!!










気がついたら、森の中
を下着姿で放置プレイ、
なんて意地悪も
あります…!







    El Rey de la montana



(2007)スペイン
出演…レオナルド・スバラグリア
マリア・ヴァルヴェルデ
トーマス・リオーダン
監督…ゴンサロ・ロペス・ギャロ
★★★


〔ストーリー〕
 山間部をドライブ中のキムは、途中で立ち寄ったスタンドで万引きする若い女性を発見。彼女とはトイレで一緒になり、そのまま誘惑されて関係を持ってしまう… が、彼女に財布をすられてしまう! パニックに陥るキムに、スタンドの店員は、「会計はすでに済ませてある」とのこと。仕方なくふたたび車を走らせて、道に迷ってとある道路を選んだのが、彼の恐怖体験のはじまりだった…!!


 最近のスペイン・ホラーは、ほんとうに良質なものが多いですよね。
こちらは、英題「King of the Hill」、上記のあらすじだけではわかりにくいと思いますので、つけ足させていただきます。主人公はなんと、「正体不明の狙撃手」に狙われてしまうのでーす… いわゆる、顔のない殺人鬼にねらわれちゃうパターンの、手に汗握るスリラー映画! この手の映画って、けっこうたくさんあるようなんですが、わたしははじめてちゃんと観た気がします。そして、おもしろかったです。

 監督さんはスペインで活躍している方らしく、この作品で世界的にも注目を浴びそうな予感です。(…アメリカ進出の話もだいぶ以前からあるようなんですが、そちらのほうはなかなか決まらないみたいですね)。
 …ええと、とくにこれといって書くこともない作品なんですが、まずはストーリーの要約から。

 主人公のキムを演じるのは、色男 レオナルド・スバラグリア。わたしはこういう系統の顔に非常に弱いんですが、なんでも彼、アルゼンチンで絶大な人気を誇る役者さんなんだそうです。ちなみに、「逃走のレクイエム」(2000)「Intacto」「10億分の1の男」2001)が有名です。

 そして、ヒロインのベア(万引き美女)を演じるのは、マリア・ヴァルヴェルデ。パッと見童顔なんですけど、化粧映えする美人といいますか、見ようによってはかなり変身しちゃうタイプです。

 この美男美女カップル(…カップルではないんですけど)が、人気のない田舎道で、いきなり正体不明の狙撃手に襲われちゃうと! それで、森に逃げちゃうと!! 途中で保安官やマヌケ警官となんやかんやと!! どーやって脱出するんだと!!…まあ、そんな感じのお話です。

 前半は物語がどこにむかうかもわからず、スリリングだったり、ハラハラしたり、キムがマヌケで愛らしく見えてしまったりと、ごくふつうのスリラーとして進むんですが、後半、犯人の正体がわかってからは、“最近の傾向と対策” が生きてくるようなお話です。そして、不・愉・快です!! あんまりにも不愉快なんで、これからこういう傾向のある作品は、「ザ・不愉快」と名づけようかと思います。

 リアリティ重視の恐怖って、どうしてもこういう感じの作品になってしまうのかなーと、ちょいと食傷気味。最近の流行なんですかね? それとも、(ありがたくはない話ではありますが)、時代を反映しちゃっているのでしょうか…? ですが、作品のテンション自体はよく、結末近くになると、やはり緊張でギリギリしてしまいます。キムの悲壮感がこれでもかと画面に映しだされる一方、犯人側の映像はシューティングゲームのようなふざけたカットと、どこまでも 「リアルでない現実」 をリアルに描きだしています。…なんていったら、褒めすぎですかね?

 ですから、こういう作品が多い風潮のなかで、こうした結末を選んだことは非常に非常に、評価できると思います。うむ、良作です!












車から降りたとたん、
足を撃たれた!!









ベアとふたりで森を
さまようことに…









なかなか助けが
きません…










犯人の正体は…??









追いつめられた
キムの運命は…?!







    Ghost in the Machine



(1993)アメリカ
出演…カレン・アレン
クリス・マルケイ
テッド・マルクス
監督…レイチェル・タラレイ
★★☆



〔ストーリー〕
 住所録を入手しては、そこに記載された家族を惨殺していく狂気の殺人鬼カール。ある日、彼が勤める家電製品店に、そうとは知らないテリーとジョシュの母子がやってくる。新しい情報処理ソフトに夢中になって、アドレス帳を置き忘れてしまうテリー。それを手に入れたのは…
 そして、内なる狂気に突き動かされるように、ある晩カールは車を暴走、墓地に突っこんで意識不明の重態となり病院へ運ばれるのだが…

 
 90年代というと、やたらとバーチャルものが流行って、いかがわしいCG処理が映画界に多用されていた時期でもありました。この作品は、そんななかでもお気に入りのひとつです。

 邦題は「ヴァイラス/インターネットの殺人鬼」。…あ、同タイトルの「Virus」「ヴァイラス」1999)とは似ても似つかない内容です。(← こちらは、硬派でマジメで、ちょっと地味~なSFサバイバル・ホラーです)。今回ご紹介します作品は、「The Lawnmower Man」「バーチャル・ウォーズ」1992)とけっこう雰囲気が似てるかもです。製作年も近いですしね。トンデモ設定がまた、非常によく似ています。トンデモ・ストーリーもまた、90年代ならではの暴走っぷりで、なかなかイカしているんですよ。

 ヒロインのシングルマザー、テリーを演じるのは、「インディ・ジョーンズ」シリーズでおなじみのカレン・アレン。彼女がアドレス帳を置き忘れてしまったことから、それが無差別殺人鬼の手にわたってしまい、彼に狙われるようになってしまう… というよくあるストーリーなのですが、そこに仮想現実を追加しまして、当時は最先端だったと思われるCG映像がてんこもりとなっています。とあるフツーの殺人鬼が、実体を持たない “最強のモンスター” に変身しちゃう理屈がまた、ありえなくてトンデモすぎるのです。

 殺人鬼カール(テッド・マルクス)は、ある晩車を暴走、ゲラゲラ笑いながらそのまま墓地に突っこんで、意識不明の重態となっちまいます。病院に運ばれて、そこでMRI検査を受けている最中に、いきなり落雷。と同時に、彼は臨終してしまいます… ですが、落雷時の異常な電流過多によって、MRIがデータ化した彼の脳の情報(…なんのこっちゃい?)をネットに飛ばしてしまい(…だから、な、なんのこっちゃい?!)、彼の邪悪な意識だけが電子社会に生き残って、ヴァーチャル界の悪霊と化してしまうのです… うーむ、あなおそろしや、90年代ムービー!!

 フツーに考えてみても、MRIが人間の意識までデータ化するなんてありえないんですが、そこはそこ、うさん臭いホラーに徹しているところが潔いです。この悪霊ちゃん、副題では「インターネットの殺人鬼」なんてついてますが、なぜか電線や電気コードまでも自由に行き来して、罪のない人間をばかばか殺していきます。ついでに、コンピューター機器が組みこまれていないはずの電化製品(…人がスイッチで作動させるやつね)まで、なぜだか自在に稼動できちゃうし! なんでもありじゃんか~、こんな最強、どうやって退治するの? と思っていたら、ちゃんとできちゃうんですね。だって、トンデモ映画ですもん

 カールの異常性もしっかり描かれていて、冒頭のある一家を惨殺するエピソードもおもしろいです。悪霊と化してからのカールの第一犠牲者のシーンがまた、気合入っています。残念なのは、この残酷度がすこしずつあがっていくと、「ファイナル・デスティネーション」シリーズみたいにさらに盛りあがったんですけどねー。

 いま観てみると、バカバカしい娯楽作として片づけられそうですが、当時の電子社会にたいする不安や警戒が露骨に表現されていて、それが現在では、「ネットを悪用する側の人間」、「そうした人間に操られてしまう社会」… といったことに恐怖のテーマが移行してきたんだな、と、よくわかります。

 あと、監督のレイチェル・タラレイは、「Freddy's Dead: The Final Nightmare」「エルム街の悪夢/ザ・ファイナルナイトメア」1991)を撮った方ですね。最近はもっぱら、テレビドラマの監督というイメージがありますが。












殺人鬼カール(テッド・マルケス)。
殺害方法もバラエティに富んでます。
ジョークも通じるヤツですよ!








ひとり、恐怖の真相を
突き止めてしまうブラム
(クリス・マルケイ)!








ついに実体化した
カールの怨霊は…!!








身体を持たない
モンスター相手に、
勝算はあるのでしょうか…?!
 






    Amusement



(2008)アメリカ
出演…キャサリン・ウィニック
ジェシカ・ルーカス
ローラ・ブラッケンリッジ
監督…ジョン・シンプソン
★★☆


〔ストーリー〕
 3話のオムニバス形式。シェルビー、タビサ、リサの3人の若い女性たちに起こった、悪夢のような恐怖体験とその結末とは…? 唯一助かったタビサは、FBI捜査官と心理学者から質問を受けながら、遠い過去の出来事を思い出そうとするのだが…


 タイトルから、よくある遊園地を舞台にしたホラーを想像していたのですが、オムニバスだったのですね。そして、あまり期待せずに観たのですが、これがけっこうおもしろかったです。監督さんを調べてみましたら、「Freeze Frame」「フリーズ・フ
レーム」
2004)
という作品が話題になっていました。こちらはスリラーでして、東京国際ファンタスティックでも注目を集めたようです。

 オムニバスといいましても、一話ごとにきっちり完結する形式ではなく、じつは彼女たちは幼なじみ、少女時代にある男の子と仲よしだったのですが… というお話。オムニバスに関連性は大事ですよね。さあ、3人の美女たちにいったいなにが起こったんでしょう? まずは一話目の、シェルビーの不運から。

 ボーイフレンド(キーア・オドネル)と夜間のドライブ中のシェルビー(ローラ・ブラッケンリッジ)は、途中で立ちよったスタンドで奇妙な光景を発見。隣に止まっていたトラックの荷台の小さな窓から、怯えた女性の顔を見てしまうのです。あの女性は? なんであんなところにいるの…? 不審に思いながらも、ふたたび車は出発。トラックはちょうど、彼女たちの前方を走っています。と、うしろの窓になにか書かれた紙が見えます。「あれを見て! だれかがあそこにいるの!!」と、彼女が叫んだとき、車は強い衝撃を受けて…

 場所は変わって、今度のヒロインはタビサ(キャサリン・ウィニック)。幼い兄弟たちの面倒を見るために、知人の家にやってきたタビサ。その家の一室は、大小さまざまなピエロの人形がたくさん飾られていた。今夜は子供たちと自分だけ… 無気味なピエロ人形に囲まれて、嫌悪感を隠せないタビサ。だれかに見られているようで、なんとなく落ち着かない。そのとき、雨のなかを訪問者があらわれるのだが…

 3人目には、リサ(ジェシカ・ルーカス)の物語。バーで知りあった青年・ダン(レイド・スコット)と仲よくなったリサ。ルームメイトが外出中なのをいいことに、彼を部屋に招き入れる。しかし、朝になってもルームメイトはもどっていなかった。リサとダンは、消えた友人を探すことにするのだが… 

 こういってはなんですが、あんまりリアリティ重視の姿勢にいると、なかなか楽しめない作品かもしれません。ですが、雰囲気はいいです。一話目のシェルビーの物語は、無難なオチつきホラーでして、(けしてつまらなくはないんですが)、「全体として、こんな感じのストーリーがつづくのかな?」 と、思っていたら、すこしずつ裏切られていくのがまたよかったです。

 ピエロの人形、廃墟みたいな古い屋敷、覗き箱、からくり仕掛けのオルゴール、「Silent Hill」「サイレントヒル」2006)みたいなデザインのクリーチャー… などといった、ホラー心をくすぐるアイテムが多数登場。ノスタルジックでファンタジックなムードのなかに、不条理さがときどき浸出してくる演出です。現実離れした仕掛けやからくりもよいですね。ホラー好きですもん、凝った仕掛けやからくりには弱いです! …といっても、「ソウ」のような合理的な仕掛けではないんですけどね。思いっきりありえなーい(笑)世界なんですけどね…

 殺人鬼が弱っちくてマヌケすぎるのがちょっと残念なんですけど、ありえない不可思議ワールドに浸れて楽しかったです。合理ホラーももちろん大事ですけど、こういう雰囲気重視の作品も、もっと作られてもいいかなあ、と。













みなさんは、どなたがお好み?
タビサ役のキャサリン・ウィニック。







リサ役のジェシカ・ルーカス。
「Cloverfield」「クローバーフィールド」2008)
にも出演してますね。










シェルビー役の
ローラ・ブラッケンリッジ。










トラックの荷台に
女性の顔が!









背後に迫って
きてますよ~!!








このオルゴールがまた、
カッチョイイ仕掛けつき
なんです。









ひいぃぃぃ
うしろ!!







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 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

〈好きかも♪〉
 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
 かます、説明書、道案内、カマドウマ、狭いところ、壁がすんごい目の前とか、渋滞、数字の暗記、人ごみを横切る、魚の三枚おろし…
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