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個人的にグッときたホラー映画(べつの意味でグッときたホラー映画も)なんかや、 小説のレビューなどをポツポツと…
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    Aparecidos



(2007)スウェーデン/アルゼンチン/スペイン
出演…ルス・ディアス
ハビエル・ペレイラ
へクトル・ビドンテ
監督…パコ・カベサス
★★☆


〔ストーリー〕
 マレナとパブロの姉弟は、離婚して病身となった父親を見舞いに、はるばるアルゼンチンの病院にやってくる。しかし、父にもはや意識はなく、もう長くないことはふたりともよくわかっていた。傷ついた心をごまかすように、明るく振る舞うパブロ。そんな彼を心配するマレナ。途中で車を停めてひと休みしていると、ひとりの少女が車のタイヤを一生懸命覗きこんでいる。パブロが手を貸そうとすると、少女はいつの間にか消えていて、ぼろきれに包まれた日記帳があらわれた…


 最近ほんとうに元気のいいスペイン・ホラーから、またまたおニューな一作をご紹介です!
 監督さんは、はじめて名前を聞く方です。じつはそれほどこわくも、新しくもないんですが、やはりスペイン・ホラーは奥が深くてあなどれないなー、と感じてしまう一品でした。英題では、「The Appeared」となっています。

 おおまかな説明をしますと、姉弟たちが発見した日記帳というのが、どうやら殺人犯のもののようなんですね。しかも、20年もまえの。以前にあらすじを読んだとき、殺人鬼が残したうんぬん… のサイコ・サスペンス? かと思ったんですが、そこはさすがスペイン、ミステリで味つけしたゴースト・ストーリーでした。

 マレナ(ルス・ディアス)とパブロ(ハビエル・ペレイラ)は、仲のよい姉弟。休日を利用して、アルゼンチンの病院に入院中の老いた父親を見舞いにくるのですが、彼に意識はなく、担当するお医者さんも 「希望を持つことは無駄なこと」 と、冷酷に宣言します。思っていた以上に傷ついてしまうパブロ。彼が姉より感受性が強いという設定も、このさきの物語のちょっとしたミソになっています。

 病院を出たふたりは、旅行を再開します。途中で車を停めてひと休みしていると、ひとりの女の子が後輪タイヤのそばに座りこんで、なにやらゴソゴソ探しているではありませんか… 「どしたの? なにか失くしちゃったの?」と、気のいいパブロは手伝ってあげます。すると、ぼろきれに包まれたノートが出現。なんだコレ… いつの間に? と、とまどっていると、少女が忽然と姿を消しています。ひぃ~、ゴーストなストーリーのはじまりです。

 この日記帳というのがまた、奇怪で不気味な内容なんです。ある家族の惨殺事件について、詳細に、まるで見てきたように書かれていて、ご丁寧に手書きの地図やポラロイド写真まで入っています。悪趣味が乗じて、写真に写っていた惨劇の舞台の宿を発見するパブロとマレナ。「206号室に泊まりたい!」(← 事件のあった場所です)と、はしゃぐパブロですが、マレナが受けとった鍵は、隣の207号室のものでした…

 浮かばれない幽霊が惨劇の場面をくりかえす、という映画や小説はわりとあるんですけど、こちらはそうじゃないパターン。ただ、ミステリの部分にもうちょっと説得力がほしかったですね。犯人像はもとより、犯行の真の動機とかを… それから、日記とリンクする部分をもうちょい増やせば、もっとおもしろくなったかな? などという、素人な意見を持ってみたり…

 ですが、オーソドックスながら、こういうこわがらせ方をする映画は大好きです。ちなみに、エンディングもよかったです。
今後もますます、スペイン・ホラーから目が離せなくなりました!












マレナ役のルス・ディアス。 
「Para entrar a Vivir」「悪魔の管理人」2006)
にも出演しているそうですが、どんな役だったか
憶えてないなあ…












パブロ役のハビエル・ペレイラ。
クルクル巻き毛がちょっとかわいいですね。










ふたりのまえに何度も
あらわれる、少女の
正体は…?








とうとう彼女を救出
しちゃったのです
が…!!








殺人鬼はほんとうに
存在するのでしょう
か…?!







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    Repo! The Genetic
    Opera


(2008)アメリカ
出演…アレクサ・ベガ
アンソニー・ヘッド
ポール・ソルビーノ
監督…ダーレン・リン・バウズマン
★★★


〔ストーリー〕
 西暦2056年、流行性の臓器不全が発生、地球規模の大パニックとなる。そのため「臓器移植事業」というバイオ産業が出現、大企業の〈ジェネコ社〉が市場を独占していた。だが、〈ジェネコ社〉は支払いを怠った者にたいしては、強制的に臓器を回収する暗殺者・レポマンが用意されていた…
 17才の少女・シロは、血液の病をもつ少女。ふだんは家の中に閉じこもっていたのだが、ある夜部屋を抜け出して、墓地で見知らぬ男と出会うが…


 「ソウ・シリーズはぼくのライフワークなんだよ、なんちて…」とか、なんとかいっていたダーレン・リン・バウズマン監督(2、3、4作目担当)、さすがに5作目は新人のデヴィット・ハックルにあけわたして、新作にホラー・ミュージカルをせっせと撮っていました。

 これがですねー、もう、こってこての “MTV「ロッキー・ホラー・ショー」” していまして、音楽総プロデュースはなんと、あのYOSHIKIさんなんだとか。ロック・オペラな内容らしく、出演陣にも歌手を多用しています。一番世間を騒がせているのは、サラ・ブライトマンの出演でしょうか。

 物語の舞台は近未来。流行性の臓器不全が人々を襲い、臓器移植事業がさかんに行われるようになった世界。大企業の〈ジェネコ社〉がその市場を独占していました。そこへ、血液病を患っているため、世間から隔絶されて育った少女・シロ(アレクサ・ヴェガ)が登場します。シロは父親のネイサン(アンソニー・ヘッド)とふたり暮らし。身体が弱いために、いつも部屋に閉じこもりっきり。しかし、外に出たいという欲求を抑えることができず、ある晩部屋を抜けだして墓地にむかいます。そこで、墓荒しのあやしい男(テランス・ズダニッチ)と出会うのですが…

 シロ役のアレクサ・ヴェガは、「スパイキッズ」シリーズの女の子。そして、父親役のアンソニー・ヘッドは、「バフィー/恋する十字架」でジャイルズ役だった人です。じつは、彼が〈ジェネコ社〉の恐怖のレポマン(回収家)なのですが、シロはそんなことはまったく知りません…

 “レポマン” と聞くと、アレックス・コックス監督の風変わりなカルト映画を思い出してしまいますが、こちらもカルト・ミュージカルを目指したもよう。アニメーションやマンガのコマ割りでストーリー、キャラを紹介していくところなんか、アメコミ・ヒーローのダークさや葛藤、スタイリッシュさなんかを意識しているようです。

 出演者もごたまぜ(?)状態で、おもしろいんですよ。〈ジェネコ社〉の冷酷社長にはポール・ソルビーノ(ミラ・ソルビーノのお父さん)、彼のふたりの息子にチョップトップ、じゃなかった、ビル・モーズリー(長男ルイーズ)とニヴェック・オーガ(次男パヴィ、かなりのおバカ!)。長女のアンバーにはパリス・ヒルトン、整形マニアというところがまた、ビッチな役よりはまっています。
 サラ・ブライトマンは、元盲目のオペラ歌手・ブラインド・マグ役です。彼女は〈ジェネコ社〉専属の歌手となることを条件に、視力を手に入れるのですが…

 正直に申しあげまして、ミュージカルって、どうも苦手なんですよね~!
ですが、なにも考えずに流すぶんには、けっこう楽しいものがありました。 
ストーリー自体はばかばかしいものなんですけど、視覚的におもしろいので(もちろん、音楽的にも)、はまるとすごく楽しい作品だと思います。

 ジョニー・デップ主演の「Sweeney Todd: The Damon Barbar of Freet Street」「スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師」2007)が品のあるグランギニョルしていたのにくらべると、こちらはやりたい放題になっています(笑)。あ、それから、当然微グロもあります。“観客参加型” を狙っているところがまた、ちょっと作りすぎ? な感がしないでもないですけど…

 全編賑やかなロック(プログレ系多し)していますので、油断するといくばくかの体力を消耗するかと思われ。鑑賞するさいには、体調のいい日を選びましょう










近未来なアメリカ。
注:ゴッサム・シティでは
ありません!







シロ役のアレクサ・ヴェガ。
病人でも行動的なところが、
アメリカっぽいですね。










墓荒し人のテランス・
ズダニッチ。
死体から獲ったナゾ液
モテモテ!
脚本も担当していまーす







レポマンのネイサン
(アンソニー・ヘッド)。
神がかりなメスさばき
に注目!







ブラインド・マグ役のサラ・
ブライトマン。彼女の瞳
には、ある秘密が…?










短気なルイーズ(左ビル・モーズリー)と、
おバカ・パヴィ(ニヴェック・オーガ)。
注:「ソウ」のお人形ではありません!







    Sei donne per
   L'assassino


(1964)イタリア
出演…キャメロン・ミッチェル
エヴァ・バルトーク
トーマス・ライナー
監督…マリオ・バーヴァ
★★☆


〔ストーリー〕
 ある嵐の晩、ファッション・モデルのイザベルが何者かに絞殺された。遺体は人気デザイナー、モラルキの館に隠されていて、犯人は業界内部説が濃厚。しかし、すべての人物にアリバイが成立する。一方、モラルキの館のショウの控え室では、イザベルの日記帳が発見される。彼女には他人のことまで事細かに記すくせがあった。日記帳の内容を公開されては困るモデル仲間のニコレは、彼女と親しかったのをいいことに預かることにするのだが…

 英題では「Blood and Black Race」、邦題は「モデル連続殺人」。イタリアン・ホラーの巨匠、マリオ・バーヴァ監督のジャーロです。

 バーヴァ監督は、のちの映画界に多大な影響を与えた逸材のひとりなのですが、彼の技法、色彩美なんかをそのまんま踏襲したダリオ・アルジェント監督とくらべると、ワールドワイド的な成功は果たせませんでした… でも、バーヴァ監督はほんとにすごいんですよ。本作で「ジャーロ」(= 残酷なイタリアン・ミステリ)という分野が成立したといわれていますが、この1年前に、すでにジャーロ最初の1本といわれる「La Ragazza che sapeva troppo」「知りすぎた少女」があります。
 また、SFホラーの「Errore nello sapzio」「バンパイアの惑星」1965)は、のちの「Alien」「エイリアン」1979)の原型といわれています。それから、残酷スラッシャーの「Reazione a catena」「血みどろの入り江」1971)は、「Friday the 13th」「13日の金曜日」1980)の元ネタという話も。

 さまざまな監督が彼の作品を参考にしている、といっても過言ではないのですが、なかでも、もっとも影響をうけたのがアルジェントというのは… 一目瞭然ですよね! 

 まず本作、オープニング、クレジットとともに流れるのは、カルロ・ルスティケリの退廃的な音楽と、役者さんたちを原色の幻想的な構図に立たせた、きわめてうつくしいカット。この原色カットがまた、「Suspiria」「サスペリア」1977)そっくりなんですよ。あのどぎつい、光沢のあるあやしくて不気味な世界は、この作品から端を発していたんですねー。

 陰影のメリハリも見事としかいいようがないです。もう、すべてのカットに額縁をつけてもいいくらい。そして、殺害されるのはゴージャスなファッション・モデルばかり…
 もちろん、この時期はまだ、それほど流血な場面はすくないのですが、「美女を殺害する」のをエロチックに、美に昇華して見せるという映像快楽が確信犯となっているのは決定的です。

 ストーリーは、ひとりのモデル(フランチェスカ・ウンガロ)が、林の中で絞殺されるところからはじまります。犯人は黒いコート、黒い帽子、黒い革手袋、そしてナゾの白マスクを被っているという、ああ、ジャーロ! な典型の姿をしていました。こうして、刑事たちがファッション業界に捜査に乗りこんでくるのですが、登場するすべての人物が疑わしくて、すべての人物に黒い秘密があったのでした…

 物語も複雑に作られていて、謎解き部分もおもしろいです。でも、いちばんの見どころは、やはり殺害されるモデルたちの「死」と「快楽」ぎりぎりのきわどいシーンでしょうね。バーヴァが女性たちの絶命シーンをどんなふうに撮りたかったかは… もう、それはいうまでもないですよねー

 思えば、ジャーロというのは「過度の流血」と、「引き伸ばされた殺人シーン」なんかを特徴とする映画分野。そのため、ストーリーがないがしろになってしまうのですが、“ホラーこそが消費される映画” となっているところは潔いです。ジャーロ・ファンには見逃せない1本ですね。








オープニング、
マネキンとともに
原色のライトを浴びて…
音楽もカッチョイイ!








モラルキ(キャメロン・
ミッチェル)の館にて。
 




モデルのタオリ(C・ダン
テス)と、クリスティナ
(右エヴァ・バルトーク)。
次に狙われるのは誰? と、
予想していくのも楽しいです。








このカットなんか、まんま
「サスペリア」ですよね!






そこはかとなくエロスな
殺害シーンがまた、
シュール!







    The Poughkeepsie 
          Tapes

(2007) アメリカ
出演…ステイシー・チョボウスキー
ベン・メズマー
サマンサ・ロブソン
監督…ジョン・エリック・ドゥードル
脚本…ドリュー・ドゥードル
★★☆


〔ストーリー〕
 ニューヨーク州ポキプシーで、全米を騒がせていた連続大量殺人鬼がついに逮捕。犯人の自宅の庭からは遺体が次々と発見され、クローゼットには100本以上のビデオテープがあった。そこには、これまでの犠牲者たちが殺害される瞬間が撮影されていた…!! スナッフ・フィルムをモチーフに描いた、擬似ドキュメンタリー。


 ジョン・エリック・ドゥードル、ドリュー・ドゥードル兄弟というと、バラゲロ&プラサ監督の「〔Rec〕」「REC/レック」2007)のリメイク、「Quarantine」(2008)を撮った方々です。が、評価のほうはあんまり芳しくなく、「こんな出来でリメイクする必要があったのか?」、なんて声も聞かれますが、この作品で注目を集めて頭角をあらわしてきました。トライベッカでも話題になりました。殺人鬼の残したビデオテープをもとに描いた、モキュメンタリーです。

 はじめにトレイラーを見たとき、かなりアブなそうな映画だな~、という感想を抱いたのですが、これがなんと、けっこう真面目に撮られています。もちろん、主観撮影(POV)特有のいかがわしさやうさん臭さもありますが、全体としては「The Blair Witch Project」「ブレアウィッチ・プロジェクト」1999)をさらに手堅く、硬派に仕上げた感じ。これはまた評価がわかれそうな作品ですが、前半はハラハラ不気味で、けっこうこわいです。

 モキュメンタリーということで、オープニングにレポーターが登場、そのほか、FBI捜査官や警官といったさまざまなスペシャリストたちが登場します。そして事件を詳細に、ひとつひとつ検証していきながら、犯人の残したテープ(“ポキプシー・テープ”)の内容が挿入されていく、といった具合です。

 殺人鬼は当然異常に描かれているのですが、犯行の残虐さ、ショッキングさを強調するというよりも、あくまでリアリティ重視の内容… といいつつも、しょっぱなから少女を殴って連れ去るシーンは、たいへんショッキングです。“ポキプシー・テープ” に替わると、画像が乱れてあちこちにノイズが入ります。「これは狙いすぎなんじゃない…?」、と苦笑しつつも、だんだん笑顔がひきつってきちゃうから不思議です。だって、モキュメンタリーといえ、現実にこんな殺人鬼がアメリカにはうようよいますからね。そうしたリアルな背景が、この作品を支えているひとつかもしれません。

 (! …余談ですが、ポキプシーにじっさいに連続殺人犯がいまして、彼の場合は売春婦ばかりを狙って殺害していたそうです。もしかしたら、この実話にインスパイアされたのかもしれません!)

 映画の中の殺人鬼は男女の別なく、子供でさえ標的にします。とくに、彼の車にあっさり乗りこんでしまう女性のシーンなんか、「どうして見知らぬ人間をかんたんに信用しちゃうかな~!!」 と、苛立ってしまいました。なのですが、あくまでアイデア先決の作品なので、見慣れてきてしまう(?)と、とくにこれといった新展開もなく、飽きがくるのはたしか。このあたり、もうすこし工夫の必要があったのでは?

 「Quarantine」は未見なのですが、ついでに、彼らがアメリカン・ホラーをしょって立つ、ということはたぶんないと思うのですが、すくなくともこの作品には彼らの若さや才気が感じられます。









冒頭、娼婦にお尻で
風船を割るように強要。
何プレイ?






犠牲者たちの遺体
発見記事が紙面を
賑わせています。








行方不明となったシェリル
の運命は?








犯人登場!!
不気味なお面
(ペスト流行時の鳥のお面?)
がお気にのようです。








ノイズだらけの歪んだ
世界に、女性の悲鳴が
響きわたる!!







    Wire in the Blood:
      The Mermaids Singing


(2002)イギリス
出演…ロブソン・グリーン
ハーマイオニー・ノリス
アラン・ストックス
監督…アンドリュー・グリーヴ
★★☆


〔ストーリー〕
 ロンドン郊外で、男性ばかりを標的にした連続殺人事件が発生。犯行は犠牲者を監禁してから拷問し、喉を掻き切って性器を切り取るという異常で残忍な手口だった。事件を担当する刑事のキャロルは、著名な心理学者・トニーに助言を求めることにする。こうして変わり者の教授トニーとキャロルの捜査がはじまるのだが…


 寛容な国・イギリスでも、その内容のあまりの過激さから大反響を呼んでしまったという、(そして皮肉なことに、それがこのドラマの知名度をあげてしまったという!)サイコ・サスペンスドラマ、「ワイヤー・イン・ザ・ブラッド」の登場です。

 ストーリーを簡単にいってしまいますと、見た目はクールなんですけど、じつは変わり者で(ちょっと変態?)な天才心理学者・トニー(ロブソン・グリーン)と、見た目も中身もクールな女刑事・キャロル(ハーマイオニー・ノリス)のコンビが繰りひろげる、猟奇サイコ・サスペンス。…なんですが、肝心のサイコの部分もありがちですし、ラストの逮捕劇にいたってはあっけにとられてしまうこと必至(!)、“放送禁止騒ぎ” が起こった猟奇的な部分というのも、ホラー慣れしているわたしたちからすると、「…えーと、どのへんがいけなかったんでしょうか…?」と、なってしまうんですが、これがけっこうおもしろいんです。はまります。ようは、脚本がうまいんですね。

 ロンドン郊外で、30代前後の健康な男性ばかりを狙った殺人事件が発生。被害者はおぞましい拷問をうけていて、殺害されたあとも遺体を傷つけられていました。キャロルはこれを同一犯の犯行と考えて、こうした事情にくわしいと思われる、ある有名な心理学者・トニーとコンタクトをとることにするのですが…

 イギリスの人気作家、ヴァル・マクダーミドの原作をもとに映像化されたこの作品。
主人公のふたりがステレオタイプなら、脇役も容易に想像がつくようなキャラクターばかり。トニーの出現をよく思わない上司、密通者もいるし、この密通者をたらしこんでいる記者がまた、絵に描いたようなビッチなので盛りあがります。やっぱりホラーにビッチは必要ですもんね!
 
 じっさいたいしたことのないお話ですが、主人公ふたりの魅力がラストまで引っぱります。トニー役のロブソン・グリーンが、「浮き世離れした天才心理学者」というキャラクターにぴったり。最初は「天才」、「変わり者」… というおなじみの特徴に、いまさら感が強かったんですけど、これはぜんぜん違和感がないです。おなじことがキャロル役のハーマイオニー・ノリスにもいえます。ふたりとも非常に説得力がある。そして、会話が知的でスムーズ。(← このへんがいかにもイギリスっぽい!)また、連続ドラマにありがちな冗長さが微塵もなくて、一話完結(45分×2)ですので、中身自体もタイトで飽きません。

 本国で放送禁止騒ぎが起こった理由は、猟奇さというよりも、同性愛やSMといった性の問題を扱ったからだと思うのですが、これはまだ一話目ですので、“試作運転” といった感触が強いです。が、このシリーズは回を重ねるごとに複雑さが増して、謎やホラー度も強まっていくもよう。この作品はつづきを観てみたいという気持ちになりました。









トニー役のロブソン・
グリーン。
彼が毎週木曜日に
会う相手とは…?








キャロルは、独断で
彼に捜査協力を依頼
しますが…






ふたりの微妙な距離間も
このシリーズの見どころ
のひとつです。








遺体に残された拷問跡から、
犯人の特徴を分析する
トニー!!







    Baby Blood



(1990)フランス
出演…エマニュエル・エスクルー
クリスチャン・シニジェ
ジャン・フランソワ・ガロッテ
監督…アラン・ロバック
★★☆


〔ストーリー〕
 サーカス団の一員のヤンカは、団長のローマンと恋仲。ある日、南米の奥地で捕えられた雌のジャガーがやってくるが、彼女の登場にほかの猛獣たちは興奮するばかり。そのジャガーには、いい知れない不気味な雰囲気があった。そして深夜、事件は起こった。ジャガーが正体不明の生物にバラバラに食い殺されてしまい、ちょうどそのころ、就寝中だったヤンカのトレイラーハウスに奇妙な触手が忍びよってきて…!!


 巷で続編製作のニュースが話題になっていますが、今回はじめて鑑賞させていただきました。「ベイビー・ブラッド」です。

 90年にフランスが、「血糊がすごいんですよ~、もう、うちはハンパないんですから!!」 …みたいなキャッチコピーで、ホラー・ファンにちょっと新鮮な驚きをくれた本作品。鑑賞するまえは、お約束の「血糊」、それから、「ストーリーはあんまりない」といったイメージしかなかったのですが、なんと、こてこてのコメディだったことが判明しました。けっこう笑えます。そして、ロードムービー的なけだるい雰囲気もいいです。あ、もちろん、視覚を楽しませてくれるロードムービーではなく、あくまで雰囲気的なものですので、あしからず!

 ヒロインのヤンカ(エマニュエル・エスクルー)は、猛獣使いのひとり。ある日、一匹のジャガーがサーカス団に運ばれてくるのですが、なかなか手強そうな相手です。団長のローマン(クリスチャン・シニジェ)も扱いに困って、手を焼いています。そして、ある深夜のこと、例のジャガーが無惨な姿で発見されます。なんと、バラバラに食い殺されてしまい、なにが彼女を襲ったのかも不明のまま。ローマンは団員たちと必死の捜索をしますが、ちょうどそのころ、トレイラーハウスで眠っていたヤンカに不気味な触手が侵入してきて…!!

 この触手の正体というのが、最後までナゾのままなんですが、ジャガーに寄生していた太古の生物? …もしくは、宇宙生物っぽい? のです。クトゥルーみたいなもんでしょうか。そして、ヤンカはその不気味な生物にそのまま襲われてしまい、翌日にはさっそく妊娠(早っっ!)してしまいます。

 ヤンカを演じるエマニュエル・エスクルー、ちょっと太めな体型の、けだるい、だらしなさげな長い髪や表情なんかが、この役にぴったり。妊娠を悟った彼女はサーカス団の金を奪って逃走、本能の赴くままに逃避行をつづけるのですが…

 たしかに、ストーリー的なものはないんですが、“怪物を妊娠した女性がお腹の赤
ちゃんのために、人を殺しまくる”、という人を食ったような設定と、やけにサバサバしたノリがこの作品の特徴です。正体不明の胎児はなんと、ヤンカと会話することも可能、最初は 「がほしいんだよー、うえん!」 的なかわいげのある駄々っ子なのですが、だんだん大人ぶってきて、「…いま、ムラッときたでしょ?」とか、「あの男なんかどうよ?」 といった、じつにほのぼのとした母子の対話が展開されます。

 ヤンカ自身も、なにを考えているのかわからない女性になっていて、その危ない雰囲気がクセになりますね。ヤンカが男を惨殺するたびに、「妊娠〇ヶ月」 といったテロップが出るんですが、最初はいやいやだった彼女も、お腹が大きくなっていくにつれてノリノリに。血糊の量は、いまでこそ見馴れた感がありますけど、たしかに殺害シーンはグロテスク。そして、エロチック。そして、なぜか観念的なものが漂う(← そうとうウソくさいんですけど!)という、不思議な映像です。

 殺害される男性がなぜだかみんなマヌケに撮られていて(ちょっとかわいそう)、ヤンカは 「魔女」 のような存在なんですけど、胎児を守るために孤立奮闘する姿は、観ているこちらもだんだん応援(?)したくなってきてしまいます。

 これはカルト・ファンには受ける映画ですよねー と、あらためて納得しました。
あ、それから、ナゾの生物はナゾのままだと書きましたが、ラストで衝撃の姿を見ることができます…!!











ヤンカ役のエマニュエル・
エスクルー。






ボテッとした身体が
だらしなて、非常に
よい感じです。







追いかけてきた恋人
を殺しちゃった!!







まんまとひっかかっ
ちゃうオジサン。







ぷはーっ
この一服!

  
                                                                                     





つぎの獲物を探す
ヤンカ。
母は強し~、ですね。







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自己紹介:

 独断と偏見で、ホラー関係(広い意味でのホラーですので、SFやファンタジーなんかもやってます)のレビューを書いてます。コメント大歓迎です。新情報や、こんなのもあるよ!って情報などなど、寄せてくれるとありがたいです。

〈好きかも♪〉
 おにぎり、猫たん、ジャック・ホワイト、ブクオフ、固いパン、高いところ、広いところ、すっげー大きな建造物、ダムとか工場とか、毛玉とり、いい匂い…

〈苦手かも…〉
 かます、説明書、道案内、カマドウマ、狭いところ、壁がすんごい目の前とか、渋滞、数字の暗記、人ごみを横切る、魚の三枚おろし…
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